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統計データ活用が容易に e-Statの課題を乗り越え、ジャパンダッシュボードが拓く未来

長らく、日本の政府統計データは、その量の豊富さとは裏腹に、私たち利用者に多くのフラストレーションを与えてきました。デジタル庁が近く公開するジャパンダッシュボードのニュースは、統計データ活用が容易になる朗報と言えるでしょう。

これまで、政府統計はe-Statというサイトに集約されてはいました。しかし、常に使いにくい問題がありました。

最も顕著な問題点は、データ形式のばらつきです。各省庁がそれぞれ独自の形式でデータを公開していたため、ダウンロードしてもPDF形式で二次利用が難しかったり、数表の形式が統計ごとにまちまちだったりする場面に多々遭遇しました。

例えば特定の地域の人口動態と、その地域の産業構造の変化を比較分析しようと試みた際、途方もない手間と時間を要した経験があります。

あるデータはExcelでダウンロードできるものの、別のデータはPDFでOCRが役立たず、手入力で数値を拾い直すしかありませんでした。

さらに、同じ統計でも過去のデータになると形式が変わることもありました。欲しいデータにたどり着くまでに何段階ものクリックを要し、ようやく見つけても、その形式が分析に適さないという現実に直面するたび、何度となくため息をついたものです。

これは、政府内で省庁をまたぐ政策立案を進める際にも同様の課題があったと聞きます。縦割りの弊害が、データの横串を刺すことを妨げていたと言えるでしょう。

しかし、この度、デジタル庁が月内に立ち上げるというジャパンダッシュボードは、まさにこうした長年の課題に対する明確な回答を示しています。

教育、社会保障、経済など約700もの行政データが統一された形式で公開されるというのです。これは、個々の統計データが持つ力を最大限に引き出す、画期的な一歩です。

さらに喜ばしいのは、複数の統計を比較・分析できる機能が実装される点です。一つの画面で相関係数を計算したり、地図やグラフで都道府県ごとの数字の推移を視覚的に捉えたりできるようになるというのは、夢のような話です。

例えば、これまで手間をかけていた都道府県ごとの大学進学率と子育てにかける金額の相関といった分析が、散布図で簡単に表示できるようになる、という具体例は、その利便性の高さを物語っています。

民間出身のデザイナーやデータエンジニアといった専門性の高いデジタル庁職員が、操作性の高さや欲しいデータにたどり着くまでの手間を重視して構築したという点も、利用者目線に立った真の改善を期待させます。

このジャパンダッシュボードの登場は、単に政府のウェブサイトが新しくなるという話に留まりません。

これまで断片的にしか利用できなかった膨大な統計データが、有機的に繋がり、比較・分析が可能になることで、政策立案の質が向上し、企業や研究者が新たな発見を生み出し、専門家以外でも社会の現状をより深く理解できるようになるでしょう。

もちろん、運用開始後に細かな課題が出てくる可能性はあります。しかし、データ形式の統一と、比較・分析機能の搭載は、かつてのe-Statが抱えていた根本的な問題を解決するものです。

日本の統計データ活用は、ようやく使いやすいという当たり前の段階に進み、それによって社会全体でデータに基づいた意思決定が進む、新たなフェーズへと移行する。その未来に大きな期待を寄せています。


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