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減税の方が乗数効果が高いのか?

最新研究における乗数効果の比較について

「公共投資などの政府支出より、減税の方が乗数効果が高いことが知られている」というある政党の主張は、一部の「最新の実証研究」によって示唆されている傾向であり、別の政党が言うように完全に事実無根ではありません。

伝統的なケインズ経済学の教科書では、政府支出(特に公共投資)が減税よりも景気刺激効果が高い(乗数が大きい)とされてきました。

これは、政府支出は全額が需要として経済に投入されるのに対し、減税された資金の一部は貯蓄に回るため、直接的な経済効果が小さくなると考えられていたためです。

しかし、近年では、以下のような研究結果も報告されています。

「減税の乗数効果が政府支出を上回る」という主張:

一部の研究では、政府支出乗数が0.6〜1程度であるのに対し、租税(減税)乗数が2〜3にも達するという結果が示されています。

この理由として、減税が需要サイドだけでなく、労働供給の増加や企業の投資意欲向上といった供給サイドへの好影響をもたらす点が挙げられることがあります。

例えば、税負担の軽減が人々の働く意欲を高めたり、企業の生産活動を活発にしたりすることで、経済全体の生産能力が向上し、より大きな波及効果を生むという考え方です。

日本における特定の減税の効果:

内閣府の短期日本経済マクロ計量モデル(2018年版)の乗数分析では、所得減税(給付金)よりも消費減税の乗数の方が高いという結果も出ています(1年目で2.4倍大きいとの報告)。

これは、所得減税分の一部が貯蓄に回るのに対し、消費減税は直接的に消費を刺激するためと考えられます。

乗数効果の不安定性:

一方で、日本銀行の報告書などでは、日本の財政政策乗数は、政府支出・減税ともに統計的に極めて不安定であり、統計的に意味のある推計値が得られにくい、あるいは1を下回る可能性が高いという分析も存在します。

これは、将来の増税懸念など、民間が財政政策の効果を打ち消すような行動をとる「非ケインズ効果(リカーディアン等価の定理など)」が存在する可能性を示唆しています。

したがって、「政府支出より減税の方が乗数効果が高い」という主張は、「一部の最新の実証研究でそのような結果が示されている」という意味では事実です。

しかし、これが経済学界全体の定説となっているわけではなく、研究によって結果は様々であり、またその前提条件や分析手法によって大きく異なる可能性がある点に注意が必要です。


6 件のコメント
1 - 6 / 6
政府与党や立民の一部は将来の増税を政策として予定していますから、現金給付は貯蓄に回る可能性が大きい。

ここは、赤字国債を財源としても(消費税減税とガソリン制の減税をした方が景気刺激につながると思う。

参院選は政党間の争いではなく、減税が政策の争点となることを期待します。
普通に考えたら、無駄な事務コストかけずに済むというところに尽きるでしょう。
中抜業者が肥え太っても、それが消費につながってないことは、オリンピック万博等々のイベントで証明済み。
と、一番大きいのが、大きな塊の資金は国を跨いで移動しやすく、小さな塊に細切れになっている資金はその場で消費されやすい、というところ。
公共事業で大きな塊の資金を企業に握らせたら、日本見限って外国に投資するんだから、円をドルに換えようとしてますます円安になるだけ。
消費税の減税は細切れの財布の中身の金をちょっとだけ増やすものだから、そりゃ、国内で消費に向かうでしょう。
消費税の税率が変わったからと言って、消費意欲を刺激するものでしょうか。
個人的には消費税を理由に諦める買い物をした事がないので、実感が湧きません。
消費税廃止で、10%がゼロとなることよりも、物価上昇がそれを上回れば、同じ対価(例えば飴1個)に対する私の支出は増えることになります。
収入が物価上昇よりも多く増えれば、飴1個に対する支出が増えても、手元に残るお金は増えるので、貯蓄なら、もう1個飴を買って経済を回すことも可能になります。
どうも消費税減税については、共感できません。

>> marumaru218 さん

>>貯蓄なら、もう1個飴を買って経済を回すことも可能になります。

貯蓄がもう一個飴を買うためでなく、将来の増税に備えるために為されれば経済を回す方向に向かないのでは?

過去2回の現金給付で景気が良くなったでしょうか?

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「近年の乗数の低下をもたらした要因は,①消費性向の低下(貯蓄率の上昇),②税・社会保険料負担率の上昇,③投資性向の低下,④期待成長率の低下,⑤輸入性向の上昇である。」

 所得税減税は、②税・社会保険料負担率を低下させることにより、乗数を上昇させる。間接的には①消費性向の上昇により、乗数を上昇させる可能性がある

 (①)③④⑤は、所得税減税で直接的に解決される問題ではない(乗数が上昇するとは限らない)

(画像)
乗数効果の低下の要因について(2021年)
https://www.mof.go.jp/pri/publication/financial_review/fr_list8/r144/r144_07.pdf


限界消費性向と乗数効果(話がうますぎる?)
https://note.com/hhamada_20c/n/n6437f4597f52

 「乗数効果の低下の要因について」の解説を含む内容となっています


高い税収弾性値は是か非か
https://note.com/hhamada_20c/n/ncf563c5b39bf

 税収弾性値 3.23 の検討

result02.png

>> _カブ さん

第1回税収弾性値予測コンテスト2023【結果発表】
https://hpe-rg.jp/contest/2023/index.html
『今年度の予測においては、2022年度のGDPが改訂されたこと(「建設総合統計(令和6年4月分)の公表を受けた 四半期別GDP速報(2024年1-3月期2次速報(改定値))の公表について」内閣府、令和6年6月25日)と税収弾性値が0.249と予想外の低さになった』

 受賞者の中に イ ン サ イ ダ ー っぽい人が いるんじゃね?🤔


第2回税収弾性値予測コンテスト2024(募集終了)
https://hpe-rg.jp/contest/2024/index.html
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