拡大するライブコマース市場と、その魅力への一考
近年、インターネット上での買い物体験は多様化の一途をたどっていますが、特にライブコマースの勢いは目覚ましいものがあります。
テレ東でそのライブコマース特集をしていました。
ライブコマースとは、ライブ配信を通じて商品を紹介し、視聴者がリアルタイムで質問したり購入したりできる販売手法ですね。
その市場規模は驚くべき速さで拡大しています。例えば、中国が発祥のようですが、そこでは2023年のライブコマース市場規模が約6.5兆元(約130兆円)に達したとされ、その成長は依然として続いています。
日本国内でも急速に市場が形成されつつあり、2023年には約4,000億円規模に達したと推計され、今後も数兆円規模への成長が見込まれています。
有名人やインフルエンサーが商品を紹介するだけでなく、ECサイトやブランド自身も積極的に導入し、消費者との新たな接点を作り出しています。
しかし、個人的には、このライブコマースの魅力に、やや首を傾げてしまう部分があるのも正直なところです。
ライブ配信では、魅力的な話し手によって商品の特徴が熱っぽく語られ、視聴者はコメントを通じて直接質問もできます。限定的な時間での割引や特典が提示されることも多く、リアルタイムな「お祭り感」が購買意欲を強く刺激するのでしょう。
ただ、冷静に考えてみると、そこで購入される商品の多くは、類似商品との比較検討が十分になされず、また、価格も他サイトや実店舗とじっくり比較されることなく、その場の勢いで購入されているように見受けられます。
画面の向こうの売り手の言葉を信じ、その場の雰囲気に流されるようにして決断を下すことは、消費者にとって本当に賢明な選択なのでしょうか。
私たちは普段、何か大きな買い物をするときはもちろんのこと、日用品一つ買うにしても、複数の店舗のチラシを見比べたり、ネットでレビューを読み込んだり、価格比較サイトで最安値を調べたりと、様々な情報を集めて検討するはずです。
それが、ライブコマースという形式になった途端、そのプロセスがごっそり抜け落ちてしまうのは、非常に不思議に感じられます。
「今だけ」「ここだけ」という限定感は、確かに購買の強力な動機付けになります。しかし、それが本当に自分に必要なものなのか、より良い選択肢はないのか、もっと安く手に入る場所はないのか、といった冷静な判断を阻害する要因にもなりかねません。
消費者が不利な条件で買い物をしてしまうリスクを考えると、ライブコマースで熱狂的に商品を購入する方々の心理には、いまだ納得できない部分があります。

