スキヤキ・ウォー！

『ただいま～』


アタイが高校から帰ってきて勝手口のドアを開けると、廊下の向こうからドタドタと走ってくる音がする。
「お帰り、桃姉っ！お腹すいた！今日のご飯はナニ？！」
『も～っ！桜（妹。仮名）も蓮（弟。仮名）も静かに！すぐ支度するからテレビでも見て待ってて！』

ウチは父ちゃんと母ちゃんがずっとお店（町中華）に出ていたから、二人が店を閉めるのを待っていたら晩ご飯がいつになるかわからない。
（営業時間は決まっているものの、ウダウダだべる酔客が帰るのを待っていたら遅くなるのはいつものこと）
まあ、そういうワケでアタイが晩ご飯を作るのがいつもの流れ。
主婦（もしくは主夫）がご飯を作るなら冷蔵庫の中身はわかってるから買うべきモノは決まっているんだろうけど、ウチはちょっと違った。
お店で使い切れなかった食材なんかを母ちゃんがポイッと冷蔵庫に放り込んでたりするもんだから、まずはそれを見なきゃ晩ご飯のおかずが決まらない。当時ケータイやスマフォなんて無いから、事前に連絡なんて出来ないんだもん。

『ん～』

冷蔵庫の中身をひと通り眺め回した後、地元の自転車屋（小型バイクも販売している）で取り寄せてもらったヘルメット（特殊サイズゆえ、納期が一番早いという理由だけで納品された「元祖どっきりカメラ」の野呂圭介みたいな真っ赤なヤツ）を被り、バイク（50cc。ベルーガという名の原チャリ。タケちゃんマンが乗ってた、らしい。よう知らんけど）に飛び乗ってお買い物に行く毎日。

よく考えたら、野呂圭介ヘルメットに学生服、リュック（原付にカゴ付けたって積載量は知れているから。まさか股ぐらに荷物挟んで走るわけにもいかないし）なんてどう考えてもおかしいよね。
田舎じゃそれが普通なんだけど(^_^)

妹弟は支度をしている間に宿題して…
ご飯を食べている間にお風呂沸かして…

妹弟がお風呂に入ったあと、アタイがお風呂入ってる間に下の子達がお皿洗って…
何やかんやしてると店が終わって父ちゃん母ちゃん降臨。
二人が晩ご飯食べてる間にアタイが宿題したり…


そんな戦争みたいな日々にも休戦、ってもんはある。
それは何か。

定休日だ！
月に二回ほどしかない貴重な日。
みんなでおうちと店の掃除をしたら、豪華ディナーがアタイ達家族を待っている。
鍋料理とか大皿もの、焼き肉が多かったなぁ。
父ちゃん曰く「折角家族全員で飯喰うんやから、皆で同じモンつつけへんけ？」ということらしい。

で、一家そろって
『いただきます(*´人｀*)』
そのメニューの中で、たまに出てくるのが『すき焼き』。やたらとデカいすき焼き鍋に次々と投入される具材。飢えたライオンのようにガツガツ食べるアタイ達。飢えたライオンがどんな喰い方するのか知ってるか？知らねえよ。比喩だ。

ガツガツ喰ってる子供達を、ビールや焼酎飲みながら満足げに眺める父ちゃん母ちゃん。

『ごちそうさま(´∇｀艸)』
みんなで食器洗ったりお片付け。
さて、河嶋家の場合。
鍋はそのまま置いといて、中に残った具材の一部と割り下のなれの果てをどうするか？
そのまま一晩放置。
次の日に若干具材を投下したら、溶き卵を流し入れて丼ご飯に。
これがまた美味なのだ。ハイソサエティな皆さまには想像も出来ないだろうけど。北大路魯山人がやってる姿は想像しにくい。

そんな平和な河嶋家にある日、事件が起こる。

『んじゃそろそろ終わりにして、残りは明日、丼ご飯にしようか』とアタイ。
「ちがうっ！」
蓮が突然騒ぎ出した。
よくよく話を聞いてみると近所の子で保育所も一緒のサオリちゃん（仮名）の家では水炊きの〆にご飯を入れて雑炊やおじやにするみたいに、お腹を少し空けておいて〆に『うどん』を入れて食べるんだ、と。
『んじゃ、やってみる？』みたいなノリでたまたまストックしていたうどん玉を投入。

『……』

うん、なかなかいける。これはこれで美味い。
でも、うどんを入れちゃうと…
明日の晩ご飯を作る方からすると、一品何か考えねばならぬ。安易に丼にして一品浮かせる選択肢が消滅する…むむむ🤔

数日後。
アタイが帰宅すると、桜が廊下を走ってくる。
「桃姉！すき焼きのナゾ、調べたで！」
嬉しそうにノートを差し出す桜。
・丼ご飯（河嶋家と一緒）
・うどん（サオリちゃん家と一緒）
・たまご焼きの具（これはちょっと驚いた）
各家庭で色々あるみたいね。

で、桜ちゃん。
・熱意のベクトルをもう少しお勉強に向けよう
・これ、数学のノートやろ(ﾟДﾟ)ｺﾞﾙｧ!!

我が家の食卓は置いといて、
皆さまのご家庭ではアフターすき焼き、どうされてます？
・実践している
・知り合いから聞いた
・やってみたい
お一人さま生活が長いので、すき焼きをやる機会は少ないんだけど
(^^)