美脚？

自分の身体があまり好きになれない。
てかコンプレックスだ。

まず、身長。
著名なバレーボール選手みたいに『背が高くて格好いい』じゃない。
文系一筋、運動なんかしたことないのに男子より背が高い。
顔。立体的造形と程遠い。国防総省がペンタゴンならアタイはペッタンコだ。古墳時代に出てくる土器？人形？みたいな平べったい容姿。どこにでもある感じの平凡な、いじめっ子に顔すら覚えてもらえなさそうな地味顔（但し、身長を除く）。
胸。ない。あらへん。
団塊世代の親父が『洗濯板』とか言って揶揄するような。
ウエスト。『くびれ』ってなんですか？
お尻。上司（女性）に
『お尻小さいからお洒落なパンツとか入りそうやんなぁ？羨ましいわぁ」とか言われる。
『ボン・キュッ・ボン』とかいうけど、こちとらキュッキュッキュで出っ張るところは何もない。ヒマワリみたいに細々と上に伸びるだけ。杉の木かススキみたいな縦だけ伸び放題。
で、手足は男子並みに長い。
変に身長があるもんで、ふつうの服が入らない。通販の『トールさん』でも無理。袖とパンツの丈が足りない。
こっそりメンズに手を出す乙女（うそ。おばさん）の苦労なんて誰にもわかりゃしない。

社内での何気ない会話。
たまたま今日（単に洗濯の都合だ）、アタイは所謂スキニー（細～い）パンツで稟議書類を持ってあたふたしていた。
「河嶋さん」
「へ？」
「今日は珍しく細身のパンツやん。河嶋さんってよく見ると脚は綺麗だよね～。ほら、美脚ってヤツ？」

脚は、って？
別に容姿を褒めて欲しいと思わないけど、『脚は』の意味はなんだ。他が（とか言いつつ脚も含めて、だけど）イケてないみたいなものの言い方はどう考えても異常だ。アタイが苛つきかけたその瞬間、後輩ちゃんが
『今の発言はセクハラです！』
『容姿を揶揄するのは人権侵害です！』
『河嶋さんはそんなこと言われて何も思わないんですかぁ？』
と喚きだした。

面倒臭い。確かにセクハラ発言云々は鬱陶しいけど、それを受け流してしまうと後輩ちゃんの為にならない。『言われてアタリマエ』の世界になるから。
私は逡巡した。

『後輩ちゃん、それはそれでエエんよ。じゃあ、アタイのやり方を教えてあげる♪』
『え…でも河嶋さん…』
私は意地悪な微笑みと共に、少し離れた席のオッサンに大声で話しかけた。
『部長！今の話、聞いてましたよね！確か部長、社内の『セクハラ相談窓口』になっていらっしゃいましたよね！！』

『河嶋さん……』
『さあ、明日が楽しみだ』