慈しむ

雨音がリアルに聴こえ
目覚めた朝
外を見るまでもなく
雨が降ってる
其れでも嵐ではない
静かな雨音
1週間前の土曜の夕方
叔父夫婦が育てている仔ネコが
死んでしまった
去年の５月
叔父夫婦の知人が突然
育ててくれと持ち込んだ
野良猫
其の赤ちゃんネコは叔父夫婦に
可愛がられて暮らしていた
叔父夫婦の家に来て1年3ヶ月になる
其の仔ネコが急逝したのが
1週間前の土曜
叔父夫婦は其の赤ちゃんネコを
引き受けるのに
躊躇いがあった
80歳と70歳代の叔父夫婦だから
ネコを育てる責任と自分の年齢を
深く思案して悩まれたのだ
其れでも目の前に突然現れた
小さな小さな赤ちゃんネコを
見捨てれなくて叔父夫婦は
理屈を抜きにして育て始めた
思えばむしろ仔ネコから元気を
貰っている様な毎日を送って
幸せ一杯の叔父夫婦だった
それなのに
其の仔ネコが1年3ヶ月で
死んでしまった
叔母は泣くのも忘れて茫然とし
叔父は身体中で泣いていた
何故、何故
死んでしまったの？
叔母は其の想いが強く
死んだと理解はしても
其の子ネコの死を受け入れられない
泣くことさえも忘れた様にしていた
私は叔父の泣きたい想いと
叔母の茫然とする想いの双方を
痛いほど分かり
私は何故？どうしたの？と
その仔ネコの亡骸に
言葉を何回も何回もかけて
茫然と受け止められず
でも叔父の姿を見ると辛く
泣けて、泣けて、泣いた
姿はネコ
だけど命
人から見ると姿はネコだと
言われなくとも分かる
でも其の仔猫は
叔父夫婦の家族になっていたんだ
いつのまにか
ネコの存在を超えて
”命の存在”として
家族の1人になっていたんだ
私は其の仔ネコが逝ってしまった
1週間前の天候を記憶している
弔いに出向いた夕刻は
空は青空と紅の色が美しかった
叔父夫婦の家のベルを鳴らす前に
見上げた空が
とても美しかった事を
悲しく感じていたのを
忘れは出来ない
あれから1週間
雨の音で目覚めた私は
すぐさま
叔父夫婦のもとから逝ってしまった
其の仔ネコの事を憶った
1週間前のこの朝には
生きていてくれた其の仔ネコ
そんなふうに私の心は
叔父夫婦の今日１日が
悲しみ深い事を想う
大切な命が突然に途絶えるという
絶望
雨音で目覚めた途端に
私の心に重くのしかかり
儚い想いがしている
叔父夫婦もそうに違いない
故に
悲しい
〝命”
永遠ではないから
慈しもう
自分の命を慈しもう
そして
他者の命も
慈しもう
　　　　　一慈しみを感じる朝一