"喫茶もふもふダンジョン"⑨

クロハナさん

マスター

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「なんとか当座の治療費だけでも払おうとして、コマさん自分の持ってる物をニャルカリとかで売ったらしいの。宝石とか、バッグとか金もプラチナも全部。それで支払いはなんとか凌いだけど…やっぱり気の毒よね、大事にしていた物が無くなったんだから」
それからコマは、社長のノラボスに頼み込み、シフトの数を増やしてお金を工面しようとしたらしい。
クロハナはカップを手に取ると同時に、目頭が少し熱くなった。
コマさんにそんな事情があったなんて。知らなかったわ。いつも傲慢な態度だけど、皆に悟られまいと気丈に振る舞っていたのねきっと。旦那さんも、さぞかし辛い気持ちだったでしょうね。コマさんだけに働かせるような思いをさせて。
クロハナは覗き込む珈琲に涙が落ちたような気さえした。
そんな事を考えていると、ちょうどコマがトイレから戻ってきた。椅子に座るなり、おしぼりで前足を丁寧に拭くと、咄嗟に目の前のパフェの異変に気が付いた。
「あら？ あたしのウエハースがない」
コマは、クロハナと茶々丸を丸い目で交互に見た。
（続く）

これ以上ありません。