公開終了
いつか戻る、その時に
-
村の子どもたちは、風のいたずらかと笑った。
丘の上で「誰かの声が聞こえた」と言ったのは、アミだけだった。風が草を揺らす音か、小鳥のさえずりの聞き間違い。けれどアミは確かに感じた。「誰かが、話しかけてきた」と。
家に帰ると、祖父がいつものように囲炉裏の前に座っていた。アミが話すと、祖父は驚いた顔で口をつぐんだ。そして、古びた木箱を取り出してきた。中には、拳ほどの大きさの灰色の石。
「これは伝声石(でんせいせき)じゃ。昔、人と人が遠く離れていても声を届け合えたという、不思議な石だ」
アミは目を丸くした。「これが喋ったの?」
祖父は首を横に振る。「いや、もう何十年も沈黙しとる。この石が声を発したのなら、何かが始まる兆しかもしれんのう」
翌日、アミは丘へ向かった。風が強く、草が波のように揺れていた。その中に、また聞こえたのだ。「――たすけて」
かすれた、小さな声。確かに耳元に届く。
アミは石を取り出し、そっと問いかける。「誰? どこにいるの?」
しばらく沈黙が続き、そして、もう一度。「――封じられた。ここは…遠い、昔の…塔の底」
声はとぎれとぎれだったが、そこに確かに“誰か”がいた。しかも、助けを求めている。
アミは村に戻ると、祖父にそのことを話した。祖父は真剣な表情でうなずいた。
「封じ人(ふうじびと)じゃろうな。かつて世界を支配しようとした者たちを、言葉の力で封じたという古の戦いがあった。その記録はほとんど残っとらん。だが、伝声石はその時代の技。石がまた声を拾い始めたなら……」
「封じられた者が、動き始めたってこと?」
祖父はアミの頭に手を乗せ、静かに言った。
「忘れられた過去が、目を覚まそうとしておるんじゃ。お前の声が、それを呼び起こしたのかもしれん」
アミは石を見つめた。声がしたのは偶然だったのか、それとも――。
小さな村の小さな丘で、静かに世界は動き出していた。
| 難易度 | パケット獲得 | 1回 | |
|---|---|---|---|
| フロア | 5階 | 挑戦者数 | 55人 |
| クリア人数(率) | 15人(27.3%) |
|---|---|
| 平均クリア時間 | 00:05:10 |
| 公開日時 | 2025年08月13日(水) 00:00 |
|---|---|
| ランキング終了日時 | - |
| 公開終了日時 | 2025年08月18日(月) 00:00 |
クリア時の獲得パケット
| 初期設定 | 6,000 MB |
|---|---|
| 残りのパケット |
|
ランキング上位者の獲得パケット
1位 |
2位 |
3位 |
|---|---|---|
| -- | -- | -- |
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ランキング
2025/12/09 現在
| 順位 | メンバー | ターン数 | パケット数 |
|---|---|---|---|
|
1位 |
はげマンさん |
49ターン
(2025/08/17 18:29) |
0 MB |
|
2位 |
|
73ターン
(2025/08/17 02:55) |
1 MB |
|
3位 |
ちこ⭐️さん |
79ターン
(2025/08/13 19:06) |
0 MB |
| 4位 |
87ターン
(2025/08/13 13:12) |
1 MB | |
| 5位 |
|
91ターン
(2025/08/13 22:30) |
1 MB |
| 6位 |
|
93ターン
(2025/08/14 21:29) |
1 MB |
| 7位 |
|
103ターン
(2025/08/13 05:13) |
2 MB |
| 8位 |
103ターン
(2025/08/13 08:52) |
2 MB | |
| 9位 |
シュッチさん |
109ターン
(2025/08/15 14:38) |
0 MB |
| 10位 |
111ターン
(2025/08/13 02:28) |
3 MB | |
| 11位 |
むぃさん |
127ターン
(2025/08/16 13:01) |
5 MB |
| 12位 |
127ターン
(2025/08/17 17:45) |
5 MB | |
| 13位 |
spbnさん |
139ターン
(2025/08/13 10:24) |
5 MB |
| 14位 |
ぼんくりさん |
139ターン
(2025/08/15 14:54) |
5 MB |
| 15位 |
141ターン
(2025/08/17 08:48) |
5 MB |
これ以上ありません。
52件のコメント
火の手が上がったのは深夜だった。最初に叫び声を上げたのは東の番屋にいた警備の男だったが、次に目覚めたのはリオだった。
ユラの声が、強く彼女の耳に響いたからだ。
「逃げて、リオ。来た……封じ人が!」
目を開けた瞬間、部屋の窓が赤く染まっていた。炎の光だ。村の一角が燃えている。リオは慌てて石を布に包み、外に飛び出した。
外はすでに混乱していた。子どもを抱いた母親たちが走り回り、村人たちがバケツを手に井戸から水を汲んでいる。だが、炎は風に煽られ、止まる様子がなかった。
「ルカはどこ!?」
リオが叫んだそのとき、背後から声がした。
「こっちだ!」
ルカが、大鎚を肩に抱えて現れた。目は真剣で、顔にはすすがついている。彼の後ろには、数人の若者たちが並んでいた。彼らは村の鍛冶見習いや木工職人の仲間たちだった。
「火の手は東の倉庫からだ。誰かが油を撒いた痕跡があった。おそらく、これは“攻撃”だ」
リオは、ぎゅっとユラを包んだ布を握った。
「やっぱり、封じ人……」
「でもな、奴らの姿は見えなかった。火だけを残して、どこにもいない。まるで“気配”そのものが襲ってきたみたいだった」
その言葉に、ユラが震えるように囁いた。
「封じ人は姿を持たない。言葉を恐れ、記録を忌み、痕跡を残さない。“情報”の痕跡すら残したくないんだ……」
リオはその意味を理解した。
彼らは“声”を恐れるがゆえに、“声”の記録が残ることすらも拒んでいる。だからこそ、伝声石を消し、声を絶つ。
「つまり……狙いはユラ。この石を封じるために火を放ったんだ」
「その通りだと思う。けど、逆に言えば、ユラの存在はそれだけ価値があるってことだ。情報は、武器になる」
リオはうなずいた。「逃げるだけじゃだめ。ユラの声を守るだけじゃ、未来は変わらない」
そのとき、村の中央にいた長老が高らかに叫んだ。
「火は沈静化した! 被害は最小限だ! だがこれは“戦”の始まりだ!」
村は変わる。誰もがそう感じていた。
リオは立ち上がる。ユラを、情報を、未来を守るために。
ユラの声が、強く彼女の耳に響いたからだ。
「逃げて、リオ。来た……封じ人が!」
目を開けた瞬間、部屋の窓が赤く染まっていた。炎の光だ。村の一角が燃えている。リオは慌てて石を布に包み、外に飛び出した。
外はすでに混乱していた。子どもを抱いた母親たちが走り回り、村人たちがバケツを手に井戸から水を汲んでいる。だが、炎は風に煽られ、止まる様子がなかった。
「ルカはどこ!?」
リオが叫んだそのとき、背後から声がした。
「こっちだ!」
ルカが、大鎚を肩に抱えて現れた。目は真剣で、顔にはすすがついている。彼の後ろには、数人の若者たちが並んでいた。彼らは村の鍛冶見習いや木工職人の仲間たちだった。
「火の手は東の倉庫からだ。誰かが油を撒いた痕跡があった。おそらく、これは“攻撃”だ」
リオは、ぎゅっとユラを包んだ布を握った。
「やっぱり、封じ人……」
「でもな、奴らの姿は見えなかった。火だけを残して、どこにもいない。まるで“気配”そのものが襲ってきたみたいだった」
その言葉に、ユラが震えるように囁いた。
「封じ人は姿を持たない。言葉を恐れ、記録を忌み、痕跡を残さない。“情報”の痕跡すら残したくないんだ……」
リオはその意味を理解した。
彼らは“声”を恐れるがゆえに、“声”の記録が残ることすらも拒んでいる。だからこそ、伝声石を消し、声を絶つ。
「つまり……狙いはユラ。この石を封じるために火を放ったんだ」
「その通りだと思う。けど、逆に言えば、ユラの存在はそれだけ価値があるってことだ。情報は、武器になる」
リオはうなずいた。「逃げるだけじゃだめ。ユラの声を守るだけじゃ、未来は変わらない」
そのとき、村の中央にいた長老が高らかに叫んだ。
「火は沈静化した! 被害は最小限だ! だがこれは“戦”の始まりだ!」
村は変わる。誰もがそう感じていた。
リオは立ち上がる。ユラを、情報を、未来を守るために。
火事から三日後、村の復旧は一応の区切りを迎えた。焦げた倉庫の瓦礫は片づけられ、焼けた畑にも灰が撒かれた。けれど、村人たちの目には以前の安穏さはなかった。誰もが、目に見えぬ“敵”の存在を意識し始めていた。
「これ以上、村にいたらユラもみんなも危ない」
リオの決意は固まっていた。彼女は石を胸に抱えながら、ルカとともに長老ハルのもとを訪れた。
「……村を出たい。伝声石のことをもっと知りたい。ユラが何者なのか、封じ人が何を恐れているのか。外の世界で探してくる」
ハルは黙ってリオを見つめていた。だが、やがて重くうなずく。
「おぬしの中にある“知りたい”という想い。それが、封じ人の恐れる力じゃ。行け、リオ。だが気をつけよ。言葉は時に刃となる。真実もまた、争いを呼ぶ」
ルカもまた荷物をまとめていた。剣ではなく、工具を、火打石を、そして携帯用の鍛冶道具を。彼にとって“戦う”とは、叩いて形を生むことだった。
「お前を一人にすると思ったか? 旅の途中で道具が壊れたら誰が直すんだよ」
リオは小さく笑った。「ありがとう、ルカ」
そして、旅立ちの朝。村の皆が見送りに集まった。かつての静かな日常では考えられなかった光景だった。だが今、リオとルカに託されたのは、村の未来でもあった。
ユラの声が静かに響く。
「東の山脈を越えた先……“記憶の都”がある。かつて情報が交わされた場所。そこに行けば、わたしがどうしてここにいるのか、思い出せるかもしれない……」
「記憶の都……?」
「声が集まる場所。伝声石が、かつて保管されていた中央の塔がある。今は廃墟かもしれないけど……きっと何かが残ってる」
リオは石を胸元にしまい、まっすぐ前を向いた。
「行こう、ユラ。すべてを思い出して、取り戻そう。言葉の力を、世界をつなぐ声を」
「……ありがとう。忘れられていた“わたし”が、こうして誰かと歩けるなんて、思わなかった」
旅は始まった。
道は未だ不確かで、敵の影は遠く、そして近い。
だが、彼女たちには希望があった。
その名は——“声”。
世界を動かす、かつての力。
「これ以上、村にいたらユラもみんなも危ない」
リオの決意は固まっていた。彼女は石を胸に抱えながら、ルカとともに長老ハルのもとを訪れた。
「……村を出たい。伝声石のことをもっと知りたい。ユラが何者なのか、封じ人が何を恐れているのか。外の世界で探してくる」
ハルは黙ってリオを見つめていた。だが、やがて重くうなずく。
「おぬしの中にある“知りたい”という想い。それが、封じ人の恐れる力じゃ。行け、リオ。だが気をつけよ。言葉は時に刃となる。真実もまた、争いを呼ぶ」
ルカもまた荷物をまとめていた。剣ではなく、工具を、火打石を、そして携帯用の鍛冶道具を。彼にとって“戦う”とは、叩いて形を生むことだった。
「お前を一人にすると思ったか? 旅の途中で道具が壊れたら誰が直すんだよ」
リオは小さく笑った。「ありがとう、ルカ」
そして、旅立ちの朝。村の皆が見送りに集まった。かつての静かな日常では考えられなかった光景だった。だが今、リオとルカに託されたのは、村の未来でもあった。
ユラの声が静かに響く。
「東の山脈を越えた先……“記憶の都”がある。かつて情報が交わされた場所。そこに行けば、わたしがどうしてここにいるのか、思い出せるかもしれない……」
「記憶の都……?」
「声が集まる場所。伝声石が、かつて保管されていた中央の塔がある。今は廃墟かもしれないけど……きっと何かが残ってる」
リオは石を胸元にしまい、まっすぐ前を向いた。
「行こう、ユラ。すべてを思い出して、取り戻そう。言葉の力を、世界をつなぐ声を」
「……ありがとう。忘れられていた“わたし”が、こうして誰かと歩けるなんて、思わなかった」
旅は始まった。
道は未だ不確かで、敵の影は遠く、そして近い。
だが、彼女たちには希望があった。
その名は——“声”。
世界を動かす、かつての力。
旅に出て三日目、リオとルカは小高い丘の上から、はるか東にそびえる山脈を見つめていた。雲を割って突き出た岩の峰々。その向こうに、“記憶の都”があるという。
「本当にあんなの越えるのか……」
ルカが腰に手を当ててつぶやいた。鍛冶場で重い鉄を持ち上げていた彼でさえ、山の存在感には圧倒された。
「ユラは言ってた。あの山を越えれば、答えがあるって」
「それにしたって、山越えなんてしたことないぞ。登山用の道具もないし、野営も慣れてない」
「大丈夫。一歩ずつ行けば、どこだって行けるよ」
リオはそう言って笑った。少し無理をしていた。けれど、進まなければ何も得られないことも、彼女は知っていた。
夜、焚き火のそばでユラがまた語りかけてきた。
「少し、思い出したの。記憶の都は、“アウレル”と呼ばれていた。石の塔があって、たくさんの声がそこに集まっていたの」
「どうして声を集めてたの?」
「それは……まだ、わからない。でも、皆がそれを誇りにしていた。人が遠くにいても、心を通わせられる。それが文化で、希望だった」
「それを、封じ人が壊した?」
「うん。声は力を持つから。真実を伝える声は、都合の悪い者にとっては毒にもなる」
ルカが薪をくべながら口を開いた。
「つまり“情報”を持つことで、人は自由になる。でもそれは、支配しようとする者にとっては脅威になるんだな」
「そう。だから声を奪われたの。でもね、記憶の都には……封じられる前の記録が残っている可能性がある」
その言葉に、リオの胸が高鳴る。
「そこに行けば、ユラの記憶も取り戻せる?」
「きっと。わたしは“最後の声”だった。塔の中で、何かを伝えようとして、でも……」
声がふと震えるように弱まった。
「無理をしなくていいよ、ユラ。思い出すのは、少しずつでいいから」
リオの声に、ユラがそっと答える。
「ありがとう。わたし、リオと一緒にいてよかった」
遠く、山に向かって吹く風が夜を撫でた。
そこには記憶があり、失われた声が待っている。
少女と石と鍛冶職人の旅は、静かに続いていく。
「本当にあんなの越えるのか……」
ルカが腰に手を当ててつぶやいた。鍛冶場で重い鉄を持ち上げていた彼でさえ、山の存在感には圧倒された。
「ユラは言ってた。あの山を越えれば、答えがあるって」
「それにしたって、山越えなんてしたことないぞ。登山用の道具もないし、野営も慣れてない」
「大丈夫。一歩ずつ行けば、どこだって行けるよ」
リオはそう言って笑った。少し無理をしていた。けれど、進まなければ何も得られないことも、彼女は知っていた。
夜、焚き火のそばでユラがまた語りかけてきた。
「少し、思い出したの。記憶の都は、“アウレル”と呼ばれていた。石の塔があって、たくさんの声がそこに集まっていたの」
「どうして声を集めてたの?」
「それは……まだ、わからない。でも、皆がそれを誇りにしていた。人が遠くにいても、心を通わせられる。それが文化で、希望だった」
「それを、封じ人が壊した?」
「うん。声は力を持つから。真実を伝える声は、都合の悪い者にとっては毒にもなる」
ルカが薪をくべながら口を開いた。
「つまり“情報”を持つことで、人は自由になる。でもそれは、支配しようとする者にとっては脅威になるんだな」
「そう。だから声を奪われたの。でもね、記憶の都には……封じられる前の記録が残っている可能性がある」
その言葉に、リオの胸が高鳴る。
「そこに行けば、ユラの記憶も取り戻せる?」
「きっと。わたしは“最後の声”だった。塔の中で、何かを伝えようとして、でも……」
声がふと震えるように弱まった。
「無理をしなくていいよ、ユラ。思い出すのは、少しずつでいいから」
リオの声に、ユラがそっと答える。
「ありがとう。わたし、リオと一緒にいてよかった」
遠く、山に向かって吹く風が夜を撫でた。
そこには記憶があり、失われた声が待っている。
少女と石と鍛冶職人の旅は、静かに続いていく。
アウレルの外郭にたどり着いたのは、山を越えてさらに五日後のことだった。
かつての都の姿は失われ、崩れかけた門と苔むした石造りの建物が沈黙の中にあった。だが、リオには感じられた。ここに、かつて“声”があったと。
「ここが記憶の都……?」
ルカが息を呑む。中央にそびえるのは、高く傷んだ石の塔。
ユラがかすかに答えた。
「記憶の塔。伝声石が集められていた場所……わたしも、ここで“最後の声”を……」
リオは黙って、割れた石片を拾った。伝声石の残骸。もう声は宿っていないが、その静けさが声の痕跡を証明しているようだった。
「中に入ってみよう。何か、思い出せるかも」
塔の中は薄暗く、螺旋階段が上へと続いていた。壁にはかつての文字が、かすかに刻まれている。
「“記録の間”が最上階にあった。そこに……何かが……」
ユラの声が震えた。そのとき、塔がきしむような音を立てた。
「誰か……いる?」
リオとルカは身構えた。風ではない。確かな気配がある。
階段の上から黒い影が滑るように降りてきた。人とも獣ともつかぬ姿。その中心には、ぽっかりと空いた“空洞”があった。
「封じ人……!」
ユラが叫ぶ。「その中に、奪われた“声”が閉じ込められてる!」
リオは恐れず、伝声石を掲げた。
「これは、誰かの想い。誰かの叫び。黙らせるなんてさせない!」
黒い影がわずかにたじろいだ。その瞬間、ルカが閃光玉を投げつける。爆ぜた光と音に、影は悲鳴のような風を残して逃げていった。
「消えた……か?」
リオは胸に手を当てて息を整える。
「でも、まだ終わってない。塔の最上階に行かなきゃ」
「だったら、行こうぜ。全部取り戻すためにさ」
リオはうなずき、再び階段を登りはじめた。
かつての都の姿は失われ、崩れかけた門と苔むした石造りの建物が沈黙の中にあった。だが、リオには感じられた。ここに、かつて“声”があったと。
「ここが記憶の都……?」
ルカが息を呑む。中央にそびえるのは、高く傷んだ石の塔。
ユラがかすかに答えた。
「記憶の塔。伝声石が集められていた場所……わたしも、ここで“最後の声”を……」
リオは黙って、割れた石片を拾った。伝声石の残骸。もう声は宿っていないが、その静けさが声の痕跡を証明しているようだった。
「中に入ってみよう。何か、思い出せるかも」
塔の中は薄暗く、螺旋階段が上へと続いていた。壁にはかつての文字が、かすかに刻まれている。
「“記録の間”が最上階にあった。そこに……何かが……」
ユラの声が震えた。そのとき、塔がきしむような音を立てた。
「誰か……いる?」
リオとルカは身構えた。風ではない。確かな気配がある。
階段の上から黒い影が滑るように降りてきた。人とも獣ともつかぬ姿。その中心には、ぽっかりと空いた“空洞”があった。
「封じ人……!」
ユラが叫ぶ。「その中に、奪われた“声”が閉じ込められてる!」
リオは恐れず、伝声石を掲げた。
「これは、誰かの想い。誰かの叫び。黙らせるなんてさせない!」
黒い影がわずかにたじろいだ。その瞬間、ルカが閃光玉を投げつける。爆ぜた光と音に、影は悲鳴のような風を残して逃げていった。
「消えた……か?」
リオは胸に手を当てて息を整える。
「でも、まだ終わってない。塔の最上階に行かなきゃ」
「だったら、行こうぜ。全部取り戻すためにさ」
リオはうなずき、再び階段を登りはじめた。
塔の階段は、思った以上に崩れていた。石の隙間から光が漏れ、床板は幾度も抜けかけた。
それでもリオたちは慎重に、少しずつ上階へと進んだ。
「ここの最上階に“記録の間”があったんだよね?」
「うん……あのとき、私はこの場所で、最後の声を届けようとしていた」
ユラの声がどこか悲しげだった。
やがて、薄暗い通路を抜けた先に、開けた部屋が現れた。円形の大広間。天井は抜け、空が見える。風に舞うのは、劣化した紙片と割れた石の欠片。
「ここが……?」
「“記録の間”……でも、こんな……」
リオは、部屋の中央にある台座に近づいた。そこには、半ば埋もれるように、欠けた伝声石が残っていた。
そっと手を伸ばす。ユラの声が、石を通してかすかに震えた。
「……懐かしい……これは、私の“核”だった部分かも」
「記録って、どうやって残されていたの?」
「声を石に宿す方法は、古の技術だった。でももう……」
そのときだった。
台座の奥、床板がわずかに軋む。何かがいる。
リオとルカが身を引くと、壁の影から、一体の影が現れた。先ほどの封じ人とは異なる。布をまとい、人の形をしている。
「……来たのだな。“声”の継ぎ手よ」
低く響く声。封じ人の中でも、上位の存在のようだった。
「どうして、こんな場所を壊したの?」
リオが問うと、影は静かに答えた。
「言葉は力を与える。力は争いを生む。だから我らは、均衡を保つために声を封じた」
「それはただの支配だよ!」
ルカが叫ぶと、影の衣がゆらりと揺れる。
「お前たちが何を見つけようと、声の時代は戻らぬ。だが……試すがいい」
そう言うと、影はふっと消えた。空気だけが重く残る。
リオは再び、石の欠片に手を添えた。
「わたし、あきらめないよ。ここから始める。もう一度、“声”の力を取り戻す」
空が広がる廃墟の中心で、希望だけが確かに残っていた。
それでもリオたちは慎重に、少しずつ上階へと進んだ。
「ここの最上階に“記録の間”があったんだよね?」
「うん……あのとき、私はこの場所で、最後の声を届けようとしていた」
ユラの声がどこか悲しげだった。
やがて、薄暗い通路を抜けた先に、開けた部屋が現れた。円形の大広間。天井は抜け、空が見える。風に舞うのは、劣化した紙片と割れた石の欠片。
「ここが……?」
「“記録の間”……でも、こんな……」
リオは、部屋の中央にある台座に近づいた。そこには、半ば埋もれるように、欠けた伝声石が残っていた。
そっと手を伸ばす。ユラの声が、石を通してかすかに震えた。
「……懐かしい……これは、私の“核”だった部分かも」
「記録って、どうやって残されていたの?」
「声を石に宿す方法は、古の技術だった。でももう……」
そのときだった。
台座の奥、床板がわずかに軋む。何かがいる。
リオとルカが身を引くと、壁の影から、一体の影が現れた。先ほどの封じ人とは異なる。布をまとい、人の形をしている。
「……来たのだな。“声”の継ぎ手よ」
低く響く声。封じ人の中でも、上位の存在のようだった。
「どうして、こんな場所を壊したの?」
リオが問うと、影は静かに答えた。
「言葉は力を与える。力は争いを生む。だから我らは、均衡を保つために声を封じた」
「それはただの支配だよ!」
ルカが叫ぶと、影の衣がゆらりと揺れる。
「お前たちが何を見つけようと、声の時代は戻らぬ。だが……試すがいい」
そう言うと、影はふっと消えた。空気だけが重く残る。
リオは再び、石の欠片に手を添えた。
「わたし、あきらめないよ。ここから始める。もう一度、“声”の力を取り戻す」
空が広がる廃墟の中心で、希望だけが確かに残っていた。
リオは伝声石の欠片に耳を近づけた。
風の音とともに、かすかな囁きが聴こえる。言葉ではない。音の残滓のような、誰かの“記憶”。
「これ、再生できるのかな?」
「もしかしたら、私の力を通じて……」
ユラが静かに語りかけると、欠片が淡く光った。すると空気が震え、音が部屋全体に広がっていく。
《……この声が、誰かに届きますように……今、アウレルは……封じられようとしている……》
音声は断片的だった。けれど、そこに込められた想いは確かに生きていた。
「やっぱり……ここには記録が残ってる」
リオは目を見開いた。「この石たち、全部が誰かの声なんだ」
部屋の隅に、同じような石片が山のように積まれていた。どれも壊れてはいるが、微かな光を放っているものもあった。
「きっと、修復すれば……」
「でも技術は失われてる。おれたちにはできないだろ?」
ルカの言葉に、リオは首を振った。
「違う。たとえ昔と同じ方法が無理でも、今の私たちのやり方でできるはず。鍛冶職人だって、新しい道具を作るだろ?」
「……そうか、模倣から始めるってことか」
「伝声石を再現する。それが今、私たちにできること」
ユラが静かに言った。
「私が覚えている限りの知識を渡す。きっと、手がかりになる」
そのとき、塔の外からかすかな音が響いた。太鼓のような、地を叩く低い音。
「何か来る……?」
ルカが窓辺に近づくと、山の麓に煙が立っていた。
「封じ人か……もしくは、他の旅人?」
リオは立ち上がった。
「どっちにしても、ここに長くはいられない。でも……今、私たちは確かに“声”を拾った」
ルカは荷物を背負い直す。
「じゃあ、次はどうする?」
「記録の復元。私たちが使える“石”を作る。そしてもう一度、誰かとつながるために」
風が記録の間を吹き抜け、塔をくぐった声が空へと還っていった。
風の音とともに、かすかな囁きが聴こえる。言葉ではない。音の残滓のような、誰かの“記憶”。
「これ、再生できるのかな?」
「もしかしたら、私の力を通じて……」
ユラが静かに語りかけると、欠片が淡く光った。すると空気が震え、音が部屋全体に広がっていく。
《……この声が、誰かに届きますように……今、アウレルは……封じられようとしている……》
音声は断片的だった。けれど、そこに込められた想いは確かに生きていた。
「やっぱり……ここには記録が残ってる」
リオは目を見開いた。「この石たち、全部が誰かの声なんだ」
部屋の隅に、同じような石片が山のように積まれていた。どれも壊れてはいるが、微かな光を放っているものもあった。
「きっと、修復すれば……」
「でも技術は失われてる。おれたちにはできないだろ?」
ルカの言葉に、リオは首を振った。
「違う。たとえ昔と同じ方法が無理でも、今の私たちのやり方でできるはず。鍛冶職人だって、新しい道具を作るだろ?」
「……そうか、模倣から始めるってことか」
「伝声石を再現する。それが今、私たちにできること」
ユラが静かに言った。
「私が覚えている限りの知識を渡す。きっと、手がかりになる」
そのとき、塔の外からかすかな音が響いた。太鼓のような、地を叩く低い音。
「何か来る……?」
ルカが窓辺に近づくと、山の麓に煙が立っていた。
「封じ人か……もしくは、他の旅人?」
リオは立ち上がった。
「どっちにしても、ここに長くはいられない。でも……今、私たちは確かに“声”を拾った」
ルカは荷物を背負い直す。
「じゃあ、次はどうする?」
「記録の復元。私たちが使える“石”を作る。そしてもう一度、誰かとつながるために」
風が記録の間を吹き抜け、塔をくぐった声が空へと還っていった。
リオたちは記録の間を後にし、塔の裏手にある古い工房へと向かった。
ユラの記憶によれば、そこは伝声石の研究と整音を行っていた場所だったという。
「ここだ。まだ……形は残ってる」
崩れかけた扉を押し開けると、中には石粉と金属屑が散乱していた。中央の台には、錬成装置の名残が見える。半分は壊れ、動く気配もない。
「これ、使えるかな?」
ルカが道具袋から金属棒と火打石を取り出す。
「加工台としてはまだ使えそうだ。問題は……素材だな」
伝声石は、ただの宝石ではなかった。特殊な鉱石と古代の呪術的な技法を融合させて作られていた。
「完全な再現は無理。でも、“音を覚える石”を作れれば、そこから始められるはず」
リオが拾ってきた欠片を砕き、粉末状にする。ユラは記憶を手繰りながら、それに混ぜる薬品の調合を指示した。
「この比率で混ぜて、熱するの。すぐに色が変わるはず」
ルカが火を入れ、石粉を練り固めた皿を熱した。しばらくすると、淡い青光を放つ石の粒が現れた。
「……できた、のか?」
リオは試しに、自分の声を石に向かって話しかけた。
「私の声が、この中に残りますように」
そして耳を寄せる。何も聞こえない。だが、石の奥が微かに共鳴した。
「反応してる……!」
ユラが息をのむ。「まだ未熟だけど、確かに“声を捕える”構造が生まれてる」
ルカが腕を組んでうなる。
「これ……使い切りかもな。何度も録音できない」
「でも、最初の一歩だよ。私たちだけの“人工伝声石”」
リオは石をそっと手に包んだ。その重みは、希望だった。
「これをもっと洗練させて、もっと多くの人と使えるようにしよう」
「そのためには……村や街の人にも協力してもらわないとな」
ルカの言葉に、リオは力強くうなずいた。
「声を取り戻す旅は、ここからが本番だね」
塔の裏に差し込む夕日が、作り出したばかりの人工石に反射して、金色にきらめいた。
ユラの記憶によれば、そこは伝声石の研究と整音を行っていた場所だったという。
「ここだ。まだ……形は残ってる」
崩れかけた扉を押し開けると、中には石粉と金属屑が散乱していた。中央の台には、錬成装置の名残が見える。半分は壊れ、動く気配もない。
「これ、使えるかな?」
ルカが道具袋から金属棒と火打石を取り出す。
「加工台としてはまだ使えそうだ。問題は……素材だな」
伝声石は、ただの宝石ではなかった。特殊な鉱石と古代の呪術的な技法を融合させて作られていた。
「完全な再現は無理。でも、“音を覚える石”を作れれば、そこから始められるはず」
リオが拾ってきた欠片を砕き、粉末状にする。ユラは記憶を手繰りながら、それに混ぜる薬品の調合を指示した。
「この比率で混ぜて、熱するの。すぐに色が変わるはず」
ルカが火を入れ、石粉を練り固めた皿を熱した。しばらくすると、淡い青光を放つ石の粒が現れた。
「……できた、のか?」
リオは試しに、自分の声を石に向かって話しかけた。
「私の声が、この中に残りますように」
そして耳を寄せる。何も聞こえない。だが、石の奥が微かに共鳴した。
「反応してる……!」
ユラが息をのむ。「まだ未熟だけど、確かに“声を捕える”構造が生まれてる」
ルカが腕を組んでうなる。
「これ……使い切りかもな。何度も録音できない」
「でも、最初の一歩だよ。私たちだけの“人工伝声石”」
リオは石をそっと手に包んだ。その重みは、希望だった。
「これをもっと洗練させて、もっと多くの人と使えるようにしよう」
「そのためには……村や街の人にも協力してもらわないとな」
ルカの言葉に、リオは力強くうなずいた。
「声を取り戻す旅は、ここからが本番だね」
塔の裏に差し込む夕日が、作り出したばかりの人工石に反射して、金色にきらめいた。
リオたちは塔を離れ、かつて交易が盛んだったという平野の村へと向かった。
目的は一つ。人工伝声石を改良するため、知恵と手を貸してくれる仲間を探すことだった。
「この村……まだ人が住んでるかな」
「灯りが見える。生きてる場所だ」
ルカの言う通り、いくつかの家から煙が立っていた。風の中に、木を削る音や、人の話し声が交じっている。
「やっぱり……声って、いいね」
ユラの声は微笑んでいた。リオも思わず頷いた。
彼らが村に入ると、警戒したような視線が注がれた。武装している者もいる。
だが、リオが懐から人工伝声石を差し出し、言った。
「これを……試してほしいんです。声を記録できる石です」
村の年長者らしき男が出てきて、その石をまじまじと見た。
「昔、聞いたことがある。“話す石”と呼ばれてたものじゃな……だが、もうとっくに失われたと」
「本物じゃない。でも私たちが作った、最初の模倣です」
ルカが説明し、ユラが続ける。
「これを改良すれば、誰もが遠くの人と話せるようになる。戦わなくても、助けを求められるようになる」
しばらく沈黙があった後、年長者は小さく頷いた。
「……その石、試してみよう」
その夜、村の広場に人が集まり、人工伝声石が火の光に照らされた。
「では……」
リオは石に語りかけた。
「この声が、また誰かの助けになりますように」
そして年長者が耳を当てた。石から、先ほどの言葉が微かに、だが確かに響いた。
「……確かに、声が……」
ざわめきが広がる。村人の目が変わった。
リオは言った。
「これを改良するには、みんなの力が必要なんです」
「だったら協力しよう」
若い職人が手を挙げた。
「伝声石のことは知らなくても、加工や道具なら手伝える」
「石細工なら任せてくれ」
次々と声が上がった。
そして、その夜の終わりに、年長者は静かに言った。
「この村は、おぬしたちの拠点にしていい。ここから、“声”を広げるのじゃ」
希望の灯が、確かにともった瞬間だった。
目的は一つ。人工伝声石を改良するため、知恵と手を貸してくれる仲間を探すことだった。
「この村……まだ人が住んでるかな」
「灯りが見える。生きてる場所だ」
ルカの言う通り、いくつかの家から煙が立っていた。風の中に、木を削る音や、人の話し声が交じっている。
「やっぱり……声って、いいね」
ユラの声は微笑んでいた。リオも思わず頷いた。
彼らが村に入ると、警戒したような視線が注がれた。武装している者もいる。
だが、リオが懐から人工伝声石を差し出し、言った。
「これを……試してほしいんです。声を記録できる石です」
村の年長者らしき男が出てきて、その石をまじまじと見た。
「昔、聞いたことがある。“話す石”と呼ばれてたものじゃな……だが、もうとっくに失われたと」
「本物じゃない。でも私たちが作った、最初の模倣です」
ルカが説明し、ユラが続ける。
「これを改良すれば、誰もが遠くの人と話せるようになる。戦わなくても、助けを求められるようになる」
しばらく沈黙があった後、年長者は小さく頷いた。
「……その石、試してみよう」
その夜、村の広場に人が集まり、人工伝声石が火の光に照らされた。
「では……」
リオは石に語りかけた。
「この声が、また誰かの助けになりますように」
そして年長者が耳を当てた。石から、先ほどの言葉が微かに、だが確かに響いた。
「……確かに、声が……」
ざわめきが広がる。村人の目が変わった。
リオは言った。
「これを改良するには、みんなの力が必要なんです」
「だったら協力しよう」
若い職人が手を挙げた。
「伝声石のことは知らなくても、加工や道具なら手伝える」
「石細工なら任せてくれ」
次々と声が上がった。
そして、その夜の終わりに、年長者は静かに言った。
「この村は、おぬしたちの拠点にしていい。ここから、“声”を広げるのじゃ」
希望の灯が、確かにともった瞬間だった。
村の鍛冶場は、夜通し火が絶えなかった。
若い職人たちが集まり、リオたちの人工伝声石を手に取り、慎重に分解し、観察し、再構築していた。
「音を石に記憶させるってのは、まるで魔法だな」
「でも、これ……形じゃなくて“響き”で決まる気がする」
「内部の空洞の深さかもしれない。もっと削ってみよう」
リオは彼らの議論を静かに聞いていた。ユラが小さく囁く。
「これは……かつて私たちがしていたことに似てる。みんなで考えて、みんなで形にする……“協同”ってやつ」
「それが一番強い魔法なんだね、きっと」
リオはふっと笑った。彼女の手元には、試作された三つの人工伝声石があった。どれも形や大きさが違い、それぞれの加工職人の工夫が詰まっていた。
「これ……どれも綺麗だな」
ルカが見比べながら言うと、村の子どもたちが近寄ってきた。
「これ、触ってもいい?」
「しゃべってみてもいい?」
リオは頷き、一つの石を子どもに渡した。
「“おはよう”って言ってごらん」
「おはよう!」
子どもが叫ぶと、石がかすかに光った。数秒後、小さな“おはよう”が、少し照れたような声で返ってきた。
「わあ! しゃべった!」
子どもたちは笑い出した。石を回しながら、いろんな言葉を試し始める。
「これは……」
リオは胸の奥が熱くなるのを感じた。
「これが、“声”の力だよ」
ユラもそっと応えた。
「私たちが作っていた伝声石も、最初はただの実験だった。でも、こんなふうに笑ってくれる人がいた。それが嬉しくて……私たちは進んだの」
夜が明ける頃、ルカが一つの石を手に取った。
「この石、ちょっと重いけど……感度が高い。声だけじゃなくて……足音まで拾ったぞ」
「えっ、本当?」
リオが急いで耳を当てた。確かに、録音されたのは声だけじゃなかった。
「じゃあ……“音”そのものを伝えることができるってこと?」
ユラの声が高ぶる。
「それなら、もっと……! 音楽だって、環境音だって!」
「可能性は無限だよ!」
リオの目が輝く。音を伝える石は、単なる通信手段を越え、新たな文化を運ぶ媒体になりつつあった。
若い職人たちが集まり、リオたちの人工伝声石を手に取り、慎重に分解し、観察し、再構築していた。
「音を石に記憶させるってのは、まるで魔法だな」
「でも、これ……形じゃなくて“響き”で決まる気がする」
「内部の空洞の深さかもしれない。もっと削ってみよう」
リオは彼らの議論を静かに聞いていた。ユラが小さく囁く。
「これは……かつて私たちがしていたことに似てる。みんなで考えて、みんなで形にする……“協同”ってやつ」
「それが一番強い魔法なんだね、きっと」
リオはふっと笑った。彼女の手元には、試作された三つの人工伝声石があった。どれも形や大きさが違い、それぞれの加工職人の工夫が詰まっていた。
「これ……どれも綺麗だな」
ルカが見比べながら言うと、村の子どもたちが近寄ってきた。
「これ、触ってもいい?」
「しゃべってみてもいい?」
リオは頷き、一つの石を子どもに渡した。
「“おはよう”って言ってごらん」
「おはよう!」
子どもが叫ぶと、石がかすかに光った。数秒後、小さな“おはよう”が、少し照れたような声で返ってきた。
「わあ! しゃべった!」
子どもたちは笑い出した。石を回しながら、いろんな言葉を試し始める。
「これは……」
リオは胸の奥が熱くなるのを感じた。
「これが、“声”の力だよ」
ユラもそっと応えた。
「私たちが作っていた伝声石も、最初はただの実験だった。でも、こんなふうに笑ってくれる人がいた。それが嬉しくて……私たちは進んだの」
夜が明ける頃、ルカが一つの石を手に取った。
「この石、ちょっと重いけど……感度が高い。声だけじゃなくて……足音まで拾ったぞ」
「えっ、本当?」
リオが急いで耳を当てた。確かに、録音されたのは声だけじゃなかった。
「じゃあ……“音”そのものを伝えることができるってこと?」
ユラの声が高ぶる。
「それなら、もっと……! 音楽だって、環境音だって!」
「可能性は無限だよ!」
リオの目が輝く。音を伝える石は、単なる通信手段を越え、新たな文化を運ぶ媒体になりつつあった。
人工伝声石は、村の人々の暮らしにすぐに溶け込んだ。
市場では、仕入れた品の名前と産地を石に記録して渡す商人が現れ、薬師は調合の手順を石に語りかけて弟子に託すようになった。
「手紙より早くて、正確に伝わる……」
リオは、商人が使う伝声石を手に取りながら言った。
「声だけじゃなく、息づかいも残る。言葉以上の何かが伝わるんだね」
ルカはうなずきながらも、ふと眉をひそめた。
「でも、声がそのまま残るってことは、間違いや嘘も一緒に残る」
「それでも……本当の声って、伝わるから。信じてもらえるかどうかは、それぞれの心に委ねるしかないけど」
その言葉に、ユラが優しく微笑んだ。
「リオ、あなたは本当に“記録”の意味を知ってきたね。記録って、未来への贈り物なの」
その頃には、他の村や旅の一団も噂を聞きつけてやってきた。リオたちが持つ石に興味を持ち、使用法を学び、やがて改良に協力する者も増えていった。
「この道具、持っていけないか?」
「村にいる母に、どうしても声を届けたいんだ」
リオは頷いた。今の人工伝声石は一度きりの使用に限られていたが、それでも価値はあった。
「遠くの人ともつながれる。それが、最初の夢だったから」
やがて、人工伝声石は交易の一部となり、各地で使われるようになっていった。旅人が道中の危険を伝え、離れた町同士が“声”で連絡を取り合う。
「これが……文化の芽なんだね」
ユラの声が、風の中にふわりと溶ける。
「誰かの声が、遠くの誰かの希望になる。こんな未来、ずっと昔に夢見てた」
その夜、リオは一つの石に声を吹き込んだ。
「ありがとう。ここまで来れたのは、あなたたちがいたからです」
それは過去の記憶を讃える祈りでもあり、未来へ繋ぐ願いでもあった。
市場では、仕入れた品の名前と産地を石に記録して渡す商人が現れ、薬師は調合の手順を石に語りかけて弟子に託すようになった。
「手紙より早くて、正確に伝わる……」
リオは、商人が使う伝声石を手に取りながら言った。
「声だけじゃなく、息づかいも残る。言葉以上の何かが伝わるんだね」
ルカはうなずきながらも、ふと眉をひそめた。
「でも、声がそのまま残るってことは、間違いや嘘も一緒に残る」
「それでも……本当の声って、伝わるから。信じてもらえるかどうかは、それぞれの心に委ねるしかないけど」
その言葉に、ユラが優しく微笑んだ。
「リオ、あなたは本当に“記録”の意味を知ってきたね。記録って、未来への贈り物なの」
その頃には、他の村や旅の一団も噂を聞きつけてやってきた。リオたちが持つ石に興味を持ち、使用法を学び、やがて改良に協力する者も増えていった。
「この道具、持っていけないか?」
「村にいる母に、どうしても声を届けたいんだ」
リオは頷いた。今の人工伝声石は一度きりの使用に限られていたが、それでも価値はあった。
「遠くの人ともつながれる。それが、最初の夢だったから」
やがて、人工伝声石は交易の一部となり、各地で使われるようになっていった。旅人が道中の危険を伝え、離れた町同士が“声”で連絡を取り合う。
「これが……文化の芽なんだね」
ユラの声が、風の中にふわりと溶ける。
「誰かの声が、遠くの誰かの希望になる。こんな未来、ずっと昔に夢見てた」
その夜、リオは一つの石に声を吹き込んだ。
「ありがとう。ここまで来れたのは、あなたたちがいたからです」
それは過去の記憶を讃える祈りでもあり、未来へ繋ぐ願いでもあった。
人工伝声石が各地へ広がるにつれ、リオたちは旅を重ねることが多くなった。
石の製造技術を伝え、使い方を教え、場合によっては改良案を集める。まさに“声の種”を蒔く日々だった。
「次は西の谷に行くって話だったね」
ルカが荷をまとめながら言う。リオはうなずき、地図を広げた。
「そこには音楽の民がいるらしい。もし彼らの協力が得られたら、もっと繊細な“音”を記録できるはず」
「歌も……残せるかもしれないね」
ユラの声はどこか懐かしさを帯びていた。
西の谷にたどり着いたとき、彼らはすぐにその土地の違いを感じ取った。空気が澄み、山々にこだまする風が耳に優しく響く。
音楽の民――ラガノ族は、言葉よりも音で感情を伝えることを大切にしていた。彼らの挨拶は笛の音、感謝は太鼓のリズム、怒りは低い弦のうねりで示される。
リオは彼らの長に人工伝声石を見せた。笛吹きの男が石に息を吹き込むと、数瞬後にまったく同じ旋律が石から返ってきた。
「……これは“記録”じゃない。“魂”だ」
年老いた族長がそうつぶやいた。
ラガノ族は、すぐに石の可能性に魅了された。彼らは長年、伝承を口伝や演奏で継いできたが、風や病で“声”が失われるたび、歴史も消えていた。
「もしこの石で、祖先の歌を残せるなら……もう二度と忘れずに済む」
その言葉に、リオたちは深く頷いた。
ラガノ族の奏者たちは、石に音を封じる技術にすぐ慣れ、音の反響を活かした加工方法も提案した。
その中に、石の内側に小さな螺旋構造を刻み、音の反響時間を延ばす工夫があった。
「これで……一つの石に、もっと長い音が記録できるかも」
「物語や演奏、そして対話の記録も!」
夜、焚き火の周りに座ったリオは、遠くで石から流れる旋律を聞きながら目を閉じた。
声は風となり、山を越え、まだ見ぬ誰かへ届く。
それは、確かに世界を変え始めていた。
石の製造技術を伝え、使い方を教え、場合によっては改良案を集める。まさに“声の種”を蒔く日々だった。
「次は西の谷に行くって話だったね」
ルカが荷をまとめながら言う。リオはうなずき、地図を広げた。
「そこには音楽の民がいるらしい。もし彼らの協力が得られたら、もっと繊細な“音”を記録できるはず」
「歌も……残せるかもしれないね」
ユラの声はどこか懐かしさを帯びていた。
西の谷にたどり着いたとき、彼らはすぐにその土地の違いを感じ取った。空気が澄み、山々にこだまする風が耳に優しく響く。
音楽の民――ラガノ族は、言葉よりも音で感情を伝えることを大切にしていた。彼らの挨拶は笛の音、感謝は太鼓のリズム、怒りは低い弦のうねりで示される。
リオは彼らの長に人工伝声石を見せた。笛吹きの男が石に息を吹き込むと、数瞬後にまったく同じ旋律が石から返ってきた。
「……これは“記録”じゃない。“魂”だ」
年老いた族長がそうつぶやいた。
ラガノ族は、すぐに石の可能性に魅了された。彼らは長年、伝承を口伝や演奏で継いできたが、風や病で“声”が失われるたび、歴史も消えていた。
「もしこの石で、祖先の歌を残せるなら……もう二度と忘れずに済む」
その言葉に、リオたちは深く頷いた。
ラガノ族の奏者たちは、石に音を封じる技術にすぐ慣れ、音の反響を活かした加工方法も提案した。
その中に、石の内側に小さな螺旋構造を刻み、音の反響時間を延ばす工夫があった。
「これで……一つの石に、もっと長い音が記録できるかも」
「物語や演奏、そして対話の記録も!」
夜、焚き火の周りに座ったリオは、遠くで石から流れる旋律を聞きながら目を閉じた。
声は風となり、山を越え、まだ見ぬ誰かへ届く。
それは、確かに世界を変え始めていた。
人工伝声石が広がり始めた頃から、リオたちは“何か”の気配を感じ始めていた。
旅の途中、石を回収された痕跡。村で突然姿を消した伝声石の記録。
誰もが口を閉ざすが、恐れの色は隠せなかった。
「この記録……誰かが意図的に石を壊してる。しかも、回収した痕跡まである」
ルカが一つの破損した石を見ながら言った。
音の記憶は消えており、内部の螺旋構造が鋭く削り取られていた。
「ただの盗難じゃない。明らかに“音”を恐れてる」
ユラの表情が曇る。
「……もしかして、“封じ人”かもしれない」
リオはその名に反応し、静かに問い返した。
「それは……?」
「かつて、伝声石を封じた者たちよ。私たちが記録の限界に挑んでいた頃、彼らは“言葉が世界を壊す”と考えたの」
言葉は争いを呼ぶ。声は嘘を広める。
そう信じ、伝声石を“封じ”た者たちがいたのだという。
「でも私たちは信じてた。言葉は、希望にもなれるって」
「だけど……彼らがまだ生きていたなら?」
リオの声が震えた。ユラは静かに首を振った。
「彼らはもう、この世にはいないはず。でも――」
「“思想”は残る。誰かがそれを受け継いでる」
ルカが言い切った。
その夜、谷の外れで一人の男が捕らえられた。
黒い外套をまとい、石を手にしていた。
石は破壊されていたが、その中にはかすかに音が残っていた。
リオは修復した石に耳を当てる。微かに、ささやくような声が響いた。
「沈黙こそが、真の平和をもたらす」
封じ人の言葉だった。
「……本当に、そう思ってるのか」
リオは夜空を見上げた。
声が広がる世界を望まない者も、確かに存在していた。
だが、それでも彼女は――
「伝えることを、私はやめない」
旅の途中、石を回収された痕跡。村で突然姿を消した伝声石の記録。
誰もが口を閉ざすが、恐れの色は隠せなかった。
「この記録……誰かが意図的に石を壊してる。しかも、回収した痕跡まである」
ルカが一つの破損した石を見ながら言った。
音の記憶は消えており、内部の螺旋構造が鋭く削り取られていた。
「ただの盗難じゃない。明らかに“音”を恐れてる」
ユラの表情が曇る。
「……もしかして、“封じ人”かもしれない」
リオはその名に反応し、静かに問い返した。
「それは……?」
「かつて、伝声石を封じた者たちよ。私たちが記録の限界に挑んでいた頃、彼らは“言葉が世界を壊す”と考えたの」
言葉は争いを呼ぶ。声は嘘を広める。
そう信じ、伝声石を“封じ”た者たちがいたのだという。
「でも私たちは信じてた。言葉は、希望にもなれるって」
「だけど……彼らがまだ生きていたなら?」
リオの声が震えた。ユラは静かに首を振った。
「彼らはもう、この世にはいないはず。でも――」
「“思想”は残る。誰かがそれを受け継いでる」
ルカが言い切った。
その夜、谷の外れで一人の男が捕らえられた。
黒い外套をまとい、石を手にしていた。
石は破壊されていたが、その中にはかすかに音が残っていた。
リオは修復した石に耳を当てる。微かに、ささやくような声が響いた。
「沈黙こそが、真の平和をもたらす」
封じ人の言葉だった。
「……本当に、そう思ってるのか」
リオは夜空を見上げた。
声が広がる世界を望まない者も、確かに存在していた。
だが、それでも彼女は――
「伝えることを、私はやめない」
谷を出たリオたちは、“音のない村”と呼ばれる場所を訪れた。
そこでは、誰一人として言葉を交わさず、会話はすべて手振りと目線で行われていた。
村に流れる空気は奇妙なほど穏やかで、まるで時間が止まっているかのようだった。
「……まるで、音を恐れてるみたい」
ルカが囁く。だがその声に、近くの老人が素早く反応し、口元に指を当てた。
“静かに”。
その仕草に、場の空気が一層張りつめる。
村の中央には、割れた伝声石が並んでいた。すべての石に、裂けるような傷がある。
その中の一つに、リオは見覚えがあった。
「これ……私たちが数ヶ月前に渡した石だ。ここまで届いてたんだ……」
ユラが静かに言う。
「この村には、かつて“封じ人”がいたのかもしれない。あるいは、その思想が強く根づいている」
リオたちは村の長老に会い、人工伝声石の意味を語った。
だが、長老は何も言わず、机の上に古びた石版を置いた。そこにはこう記されていた。
“音は争いを招き、言葉は心を壊す”
“沈黙こそが、唯一の調和である”
「……封じ人の教義だ」
リオは言葉を失う。だが、村の片隅で遊ぶ子どもたちが、壊れた伝声石を手にし、無邪気に笑っていた。
「おーい! これ、光った!」
子どもたちは、残ったわずかな力で光る石に夢中だった。
その光景に、リオはふと気づく。
「言葉は怖いものじゃない。誰かを笑顔にできるものだよ」
翌朝、リオたちは村を去ることになった。
出発のとき、あの長老が一つの包みを手渡してきた。中には、修復されかけた伝声石があった。
「……少し、考えてみる」
短く、かすれた声。それがこの村で初めて聞いた言葉だった。
リオはそっと微笑む。
「それだけで、充分です」
静寂の村にも、小さな音が灯り始めていた。
そこでは、誰一人として言葉を交わさず、会話はすべて手振りと目線で行われていた。
村に流れる空気は奇妙なほど穏やかで、まるで時間が止まっているかのようだった。
「……まるで、音を恐れてるみたい」
ルカが囁く。だがその声に、近くの老人が素早く反応し、口元に指を当てた。
“静かに”。
その仕草に、場の空気が一層張りつめる。
村の中央には、割れた伝声石が並んでいた。すべての石に、裂けるような傷がある。
その中の一つに、リオは見覚えがあった。
「これ……私たちが数ヶ月前に渡した石だ。ここまで届いてたんだ……」
ユラが静かに言う。
「この村には、かつて“封じ人”がいたのかもしれない。あるいは、その思想が強く根づいている」
リオたちは村の長老に会い、人工伝声石の意味を語った。
だが、長老は何も言わず、机の上に古びた石版を置いた。そこにはこう記されていた。
“音は争いを招き、言葉は心を壊す”
“沈黙こそが、唯一の調和である”
「……封じ人の教義だ」
リオは言葉を失う。だが、村の片隅で遊ぶ子どもたちが、壊れた伝声石を手にし、無邪気に笑っていた。
「おーい! これ、光った!」
子どもたちは、残ったわずかな力で光る石に夢中だった。
その光景に、リオはふと気づく。
「言葉は怖いものじゃない。誰かを笑顔にできるものだよ」
翌朝、リオたちは村を去ることになった。
出発のとき、あの長老が一つの包みを手渡してきた。中には、修復されかけた伝声石があった。
「……少し、考えてみる」
短く、かすれた声。それがこの村で初めて聞いた言葉だった。
リオはそっと微笑む。
「それだけで、充分です」
静寂の村にも、小さな音が灯り始めていた。
静寂の村を後にしたリオたちは、広大な草原を越えて旅を続けていた。
だが、道中で出会った旅商人の一言が、彼らを緊張させた。
「最近、南の村で“声狩り”があったらしい」
「……声狩り?」
ルカが聞き返すと、商人は真剣な表情でうなずいた。
「人工伝声石を持っていた家々が襲撃され、中の記録も全て破壊されたそうだ。“声を持つ者”を狙った犯行らしい」
その言葉に、リオは胸を締めつけられる思いだった。
「また……封じ人の残党……?」
だが今回はただの思想ではなかった。
証拠も痕跡も一切残さず、まるで“記録されること”自体を否定するような手口だった。
リオたちは急ぎ南の村へ向かった。
村は不気味なほど静かで、家々の扉は固く閉ざされていた。
唯一開いていた広場には、割れた伝声石が並んでいた。まるで“見せしめ”のように。
「記録が……全部、壊されてる」
ルカが膝をつく。いくつかの石を拾い、再生を試みたが、すべて沈黙していた。
まるで“言葉そのもの”が奪われたかのように。
「この村で……何があったの?」
そこへ、一人の少女が現れた。
腰には布にくるまれた小さな石。
その表面は焦げていたが、まだ微かに力を感じた。
「これ、壊されたけど……お母さんの声が残ってるの」
少女は震える手で石を差し出す。リオは慎重に受け取り、修復を試みた。
数分後、かすれた女性の声が、石の中から静かに流れ出した。
「……あなたが泣かないように、何度でも話すからね……」
少女の目に涙が浮かぶ。
「ありがとう……ありがとう……」
リオはその手を包み込み、静かに語りかけた。
「言葉は、奪われても残る。心に届いていれば、消えたりしない」
その夜、村の人々は少しずつ家から出てきた。
誰も語らなかったが、彼らの目は語っていた――“伝えること”を、諦めてはいないと。
だが、道中で出会った旅商人の一言が、彼らを緊張させた。
「最近、南の村で“声狩り”があったらしい」
「……声狩り?」
ルカが聞き返すと、商人は真剣な表情でうなずいた。
「人工伝声石を持っていた家々が襲撃され、中の記録も全て破壊されたそうだ。“声を持つ者”を狙った犯行らしい」
その言葉に、リオは胸を締めつけられる思いだった。
「また……封じ人の残党……?」
だが今回はただの思想ではなかった。
証拠も痕跡も一切残さず、まるで“記録されること”自体を否定するような手口だった。
リオたちは急ぎ南の村へ向かった。
村は不気味なほど静かで、家々の扉は固く閉ざされていた。
唯一開いていた広場には、割れた伝声石が並んでいた。まるで“見せしめ”のように。
「記録が……全部、壊されてる」
ルカが膝をつく。いくつかの石を拾い、再生を試みたが、すべて沈黙していた。
まるで“言葉そのもの”が奪われたかのように。
「この村で……何があったの?」
そこへ、一人の少女が現れた。
腰には布にくるまれた小さな石。
その表面は焦げていたが、まだ微かに力を感じた。
「これ、壊されたけど……お母さんの声が残ってるの」
少女は震える手で石を差し出す。リオは慎重に受け取り、修復を試みた。
数分後、かすれた女性の声が、石の中から静かに流れ出した。
「……あなたが泣かないように、何度でも話すからね……」
少女の目に涙が浮かぶ。
「ありがとう……ありがとう……」
リオはその手を包み込み、静かに語りかけた。
「言葉は、奪われても残る。心に届いていれば、消えたりしない」
その夜、村の人々は少しずつ家から出てきた。
誰も語らなかったが、彼らの目は語っていた――“伝えること”を、諦めてはいないと。
南の村での出来事から数日後、リオたちは王都近くの大広原に足を運んだ。
そこでは、各地から旅人や技術者、伝え手たちが集まり、“声の市”と呼ばれる交流の場が開かれていた。
人工伝声石を手にした者たちは、録音された歌やメッセージ、詩、さらには物語まで披露し合い、それを複製して交換していた。
声が通貨のように扱われ、人と人とを繋いでいた。
「見て、リオ! この石、鳥の鳴き声を再現してる!」
ルカが子どものように目を輝かせる。
「それだけじゃないわ。これなんて、夜空の音を録ったって……ほら」
ユラが差し出した石から、風と虫の声、遠くで揺れる草のざわめきが流れる。
「……まるで、その場にいるみたいだ」
リオは目を閉じ、耳を澄ませた。
音はただの情報ではない。感情であり、記憶であり、存在の証だった。
そんな中、王都から派遣された記録士が彼女たちに声をかけてきた。
「人工伝声石の技術を、王都の記録局で正式に採用したい。すべての出来事を保存する国家の記録として」
思いがけぬ申し出に、リオは驚く。
「国家が……“声”を保管するの?」
「はい。王都が声を守る“拠点”になります」
その提案は魅力的だった。しかし同時に、危うさもあった。
“記録”が力となる世界。
それを管理する手が、正しくあってくれる保証はどこにもない。
リオは一晩考え、翌朝、こう答えた。
「私たちが広めたのは、“声を奪われない世界”です。保管ではなく、共有してください。誰もが等しく、記録に触れられるように」
記録士は少し黙ったのち、うなずいた。
「……わかりました。そうしましょう。あなたたちの意志に敬意を表します」
その日、声の市に集まった多くの人が、手と手を取り合った。
伝声石の技術は人々を繋ぎ、記録を希望に変えつつあった。
そして、リオは強く思った。
「声が繋がる限り、この世界は変えられる」
そこでは、各地から旅人や技術者、伝え手たちが集まり、“声の市”と呼ばれる交流の場が開かれていた。
人工伝声石を手にした者たちは、録音された歌やメッセージ、詩、さらには物語まで披露し合い、それを複製して交換していた。
声が通貨のように扱われ、人と人とを繋いでいた。
「見て、リオ! この石、鳥の鳴き声を再現してる!」
ルカが子どものように目を輝かせる。
「それだけじゃないわ。これなんて、夜空の音を録ったって……ほら」
ユラが差し出した石から、風と虫の声、遠くで揺れる草のざわめきが流れる。
「……まるで、その場にいるみたいだ」
リオは目を閉じ、耳を澄ませた。
音はただの情報ではない。感情であり、記憶であり、存在の証だった。
そんな中、王都から派遣された記録士が彼女たちに声をかけてきた。
「人工伝声石の技術を、王都の記録局で正式に採用したい。すべての出来事を保存する国家の記録として」
思いがけぬ申し出に、リオは驚く。
「国家が……“声”を保管するの?」
「はい。王都が声を守る“拠点”になります」
その提案は魅力的だった。しかし同時に、危うさもあった。
“記録”が力となる世界。
それを管理する手が、正しくあってくれる保証はどこにもない。
リオは一晩考え、翌朝、こう答えた。
「私たちが広めたのは、“声を奪われない世界”です。保管ではなく、共有してください。誰もが等しく、記録に触れられるように」
記録士は少し黙ったのち、うなずいた。
「……わかりました。そうしましょう。あなたたちの意志に敬意を表します」
その日、声の市に集まった多くの人が、手と手を取り合った。
伝声石の技術は人々を繋ぎ、記録を希望に変えつつあった。
そして、リオは強く思った。
「声が繋がる限り、この世界は変えられる」
それは、何の前触れもなく起きた。
王都から南に広がる三つの村で、すべての人工伝声石が一斉に“沈黙”した。
光を放つはずの石は色を失い、音の再生も停止した。
「……石が、壊れてる?」
ルカが唖然とつぶやいた。
だが、目に見える損傷はどこにもない。ただ、記録された“音”だけが完全に消え去っていた。
リオは唇を噛んだ。
「誰かが……意図的にやった」
ユラは静かにうなずいた。
「記録回路に干渉した痕がある。これは、“技術”を持つ者の手だわ。素人の破壊じゃない」
石が“壊された”のではない。“消された”のだ。
しかも、正確に、効率的に。
王都の記録局は即座に調査団を派遣した。だが、真相は掴めなかった。
犯人も、方法も、動機も不明――ただ、記録だけが消えていた。
「これって……封じ人の新しいやり方じゃないのか?」
ルカが不安げに言うと、ユラがふと低く答えた。
「あるいは……もっと近い存在かもしれない」
リオはその言葉に、胸の奥に重く沈んだ予感を覚えた。
王都では、この事件を“技術的故障”として処理した。
だが現場を知る者は、皆、それが故障などではないと理解していた。
数日後、リオたちは密かに一つの事実を掴んだ。
「人工伝声石を開発した初期の設計図が、王都の記録局から消えてる」
「まさか……内通者?」
「あるいは、最初から“誰か”に見られてたのかも」
そして、もう一つの噂が流れてきた。
――“原初の伝声石”が、王都地下に封印されているというものだ。
リオは目を見開いた。
「まさか……あの“伝説”は本当だったの?」
音を宿し、声を運び、記憶を残す“最初の石”。
すべての技術の源にして、最も深く封印された宝石。
それが、本当に存在するのなら――
なぜ今、その影が浮上してきたのか?
答えは、まだ沈黙の中にあった。
王都から南に広がる三つの村で、すべての人工伝声石が一斉に“沈黙”した。
光を放つはずの石は色を失い、音の再生も停止した。
「……石が、壊れてる?」
ルカが唖然とつぶやいた。
だが、目に見える損傷はどこにもない。ただ、記録された“音”だけが完全に消え去っていた。
リオは唇を噛んだ。
「誰かが……意図的にやった」
ユラは静かにうなずいた。
「記録回路に干渉した痕がある。これは、“技術”を持つ者の手だわ。素人の破壊じゃない」
石が“壊された”のではない。“消された”のだ。
しかも、正確に、効率的に。
王都の記録局は即座に調査団を派遣した。だが、真相は掴めなかった。
犯人も、方法も、動機も不明――ただ、記録だけが消えていた。
「これって……封じ人の新しいやり方じゃないのか?」
ルカが不安げに言うと、ユラがふと低く答えた。
「あるいは……もっと近い存在かもしれない」
リオはその言葉に、胸の奥に重く沈んだ予感を覚えた。
王都では、この事件を“技術的故障”として処理した。
だが現場を知る者は、皆、それが故障などではないと理解していた。
数日後、リオたちは密かに一つの事実を掴んだ。
「人工伝声石を開発した初期の設計図が、王都の記録局から消えてる」
「まさか……内通者?」
「あるいは、最初から“誰か”に見られてたのかも」
そして、もう一つの噂が流れてきた。
――“原初の伝声石”が、王都地下に封印されているというものだ。
リオは目を見開いた。
「まさか……あの“伝説”は本当だったの?」
音を宿し、声を運び、記憶を残す“最初の石”。
すべての技術の源にして、最も深く封印された宝石。
それが、本当に存在するのなら――
なぜ今、その影が浮上してきたのか?
答えは、まだ沈黙の中にあった。
原初の伝声石――。
その噂が真実なら、今この時代に使われている人工伝声石は、その模倣品に過ぎない。
だが、模倣は模倣なりの進化を遂げていた。
ユラは王都に残り、研究者たちと共に新たな試みに取りかかっていた。
「記録容量の増加」「安定性の向上」「視覚データの付加」。
そう、今や人工伝声石は――画像までも“記録”できる段階に突入していた。
「これが……写像記録。音だけじゃない、光と影、色と動きが残せる」
石の表面に投影されたのは、風に揺れる木々、笑い合う家族、そして遠くを見つめる旅人の姿。
まるで、その瞬間に立ち会っているかのようだった。
ルカがぽつりと漏らす。
「記録がここまで来ると……もう、命に近いな」
リオはうなずいた。
「うん。だからこそ、消された“声”は、ただのデータじゃない。“誰かの人生”なんだ」
それがわかっているからこそ、奪われたことへの怒りが消えない。
誰が、なぜ、どんな意図で記録を消したのか――。
そんな中、王都で極秘に開発されていた“特製人工伝声石”が完成する。
消耗品ではあるが、かつてない容量と伝達速度、さらには複数人の声を同時に記録できる性能を持つ。
ただし、リスクもあった。
「寿命が短い。使うたびに力を失っていくわ」
ユラは目を伏せる。
「記録するたびに、命を削る石」――そう表現する者もいた。
けれど、リオはそれでも良いと思った。
「記録は消えても、受け取った誰かが“覚えてる”。それでいい。たとえ石が失われても」
人工伝声石はもはや技術ではない。
それは、人が人であるための“意志のかたち”だった。
やがて、王都はそれを王家の宝として扱うようになる。
“記録”が、“力”と見なされる日が近づいていた。
その噂が真実なら、今この時代に使われている人工伝声石は、その模倣品に過ぎない。
だが、模倣は模倣なりの進化を遂げていた。
ユラは王都に残り、研究者たちと共に新たな試みに取りかかっていた。
「記録容量の増加」「安定性の向上」「視覚データの付加」。
そう、今や人工伝声石は――画像までも“記録”できる段階に突入していた。
「これが……写像記録。音だけじゃない、光と影、色と動きが残せる」
石の表面に投影されたのは、風に揺れる木々、笑い合う家族、そして遠くを見つめる旅人の姿。
まるで、その瞬間に立ち会っているかのようだった。
ルカがぽつりと漏らす。
「記録がここまで来ると……もう、命に近いな」
リオはうなずいた。
「うん。だからこそ、消された“声”は、ただのデータじゃない。“誰かの人生”なんだ」
それがわかっているからこそ、奪われたことへの怒りが消えない。
誰が、なぜ、どんな意図で記録を消したのか――。
そんな中、王都で極秘に開発されていた“特製人工伝声石”が完成する。
消耗品ではあるが、かつてない容量と伝達速度、さらには複数人の声を同時に記録できる性能を持つ。
ただし、リスクもあった。
「寿命が短い。使うたびに力を失っていくわ」
ユラは目を伏せる。
「記録するたびに、命を削る石」――そう表現する者もいた。
けれど、リオはそれでも良いと思った。
「記録は消えても、受け取った誰かが“覚えてる”。それでいい。たとえ石が失われても」
人工伝声石はもはや技術ではない。
それは、人が人であるための“意志のかたち”だった。
やがて、王都はそれを王家の宝として扱うようになる。
“記録”が、“力”と見なされる日が近づいていた。
人工伝声石が文化の中心に据えられたことで、各地に散らばっていた村々や街は、情報を共有し始めた。
「遠くの声」がすぐに届くようになった今、交易や政策、学術までもが加速する。
言葉と映像による“知の網”が、大陸全土を覆い始めていた。
王都はその流れをまとめ、やがて一つの旗のもとに宣言を出す。
「記録と声の力により、王国を築く」
――〈記録王国エルデナ〉の誕生だった。
王国は“声の塔”と呼ばれる高台に巨大な記録施設を建て、人工伝声石の中枢として機能させた。
そこには各地から送られる石が集まり、王家直属の“記録官”によって管理されるようになった。
リオたちはその塔の一室を訪れた。
「……静かね」
「でも、ここに何千、何万の“声”があるんだよな」
石棚の間を歩くたび、かすかに漏れる音。
泣き声、笑い声、叫び、歌――それらはすべて誰かの“人生の断片”だった。
王は演説でこう述べた。
「記録は力であり、未来である。私たちは、決して声を忘れない国を作る」
その言葉に人々は沸き立ち、伝声石は神聖視されるようになっていった。
しかし、リオの表情はどこか曇っていた。
「……ちがう。私たちは、“力”のために伝え始めたんじゃない」
ユラもうつむく。
「声を守るために始めたのに、今はそれが……城の礎になってる」
かつて、石を抱えて森を駆けた日々。
消された声に涙した少女。
奪われた記録の哀しみ――それらは、どこに置き去りにされたのか。
王国ができた今、リオたちにできることは、何だったのだろう?
「私たちの記録も、いつか……誰かに見られる時が来るのかな」
ルカの言葉に、リオは小さくうなずいた。
「そのとき、誰かが“何か”を感じてくれれば、それでいい。伝えるって、そういうことだから」
そして、彼女たちは新たな決意を胸に、再び旅へ出ることを決めた。
「遠くの声」がすぐに届くようになった今、交易や政策、学術までもが加速する。
言葉と映像による“知の網”が、大陸全土を覆い始めていた。
王都はその流れをまとめ、やがて一つの旗のもとに宣言を出す。
「記録と声の力により、王国を築く」
――〈記録王国エルデナ〉の誕生だった。
王国は“声の塔”と呼ばれる高台に巨大な記録施設を建て、人工伝声石の中枢として機能させた。
そこには各地から送られる石が集まり、王家直属の“記録官”によって管理されるようになった。
リオたちはその塔の一室を訪れた。
「……静かね」
「でも、ここに何千、何万の“声”があるんだよな」
石棚の間を歩くたび、かすかに漏れる音。
泣き声、笑い声、叫び、歌――それらはすべて誰かの“人生の断片”だった。
王は演説でこう述べた。
「記録は力であり、未来である。私たちは、決して声を忘れない国を作る」
その言葉に人々は沸き立ち、伝声石は神聖視されるようになっていった。
しかし、リオの表情はどこか曇っていた。
「……ちがう。私たちは、“力”のために伝え始めたんじゃない」
ユラもうつむく。
「声を守るために始めたのに、今はそれが……城の礎になってる」
かつて、石を抱えて森を駆けた日々。
消された声に涙した少女。
奪われた記録の哀しみ――それらは、どこに置き去りにされたのか。
王国ができた今、リオたちにできることは、何だったのだろう?
「私たちの記録も、いつか……誰かに見られる時が来るのかな」
ルカの言葉に、リオは小さくうなずいた。
「そのとき、誰かが“何か”を感じてくれれば、それでいい。伝えるって、そういうことだから」
そして、彼女たちは新たな決意を胸に、再び旅へ出ることを決めた。
王国が形成され、人工伝声石の技術は頂点を迎えた。
だが、あまりに強大な“記録の力”は、やがて不安を呼んだ。
「このままでは、声が監視の道具になってしまう」
そう語ったのは、初代記録官の一人。
情報が“共有”ではなく“統制”に向かい始めたことに、敏感な者たちは気づいていた。
リオたちもまた、王都に戻り、声の塔で“ある計画”の存在を知る。
――人工伝声石の封印計画。
「王家の命により、最も強力な伝声石群は、王の宝箱へ移される。以後、地下迷宮にて封印とする」
その文書には、淡々とした筆致で、まるで日用品をしまうかのように記されていた。
「宝箱に……?」
ルカが眉をひそめる。
「“声”を、しまいこむってことか」
「使い方を間違えれば、人を縛る鎖になる。だからって……封じるだけでいいの?」
リオの問いに、誰も答えられなかった。
封印当日、王家の大広間には、選ばれた十数個の人工伝声石が並べられた。
それぞれが、かつて人々を救い、感動を呼び、涙を誘った記録を宿している。
ユラがそっとひとつの石を撫でた。
「……この石、南の村の子どもたちの歌が入ってる」
「それも、もう聴けなくなるんだな」
儀式は淡々と進み、石たちは黒い絹布に包まれ、銀細工の宝箱に納められた。
それを運ぶ護衛兵の足音が、広間にこだました。
宝箱は王都地下の古迷宮へと運ばれ、鉄の扉の奥、誰も入れない封印室に格納された。
「これでよかったの?」
リオの胸に重く響く疑問。
けれど、王はただ一言、静かに答えた。
「記録は力だ。だからこそ、いつでも取り出せる場所に置いておくべきではないのだ」
リオはその背中を見つめ、黙ってうなずいた。
“いつか”のために残す。
“忘れた頃”に、また必要になる日が来る。
それが、本当の記録の意味だと、彼女は少しだけ理解し始めていた。
だが、あまりに強大な“記録の力”は、やがて不安を呼んだ。
「このままでは、声が監視の道具になってしまう」
そう語ったのは、初代記録官の一人。
情報が“共有”ではなく“統制”に向かい始めたことに、敏感な者たちは気づいていた。
リオたちもまた、王都に戻り、声の塔で“ある計画”の存在を知る。
――人工伝声石の封印計画。
「王家の命により、最も強力な伝声石群は、王の宝箱へ移される。以後、地下迷宮にて封印とする」
その文書には、淡々とした筆致で、まるで日用品をしまうかのように記されていた。
「宝箱に……?」
ルカが眉をひそめる。
「“声”を、しまいこむってことか」
「使い方を間違えれば、人を縛る鎖になる。だからって……封じるだけでいいの?」
リオの問いに、誰も答えられなかった。
封印当日、王家の大広間には、選ばれた十数個の人工伝声石が並べられた。
それぞれが、かつて人々を救い、感動を呼び、涙を誘った記録を宿している。
ユラがそっとひとつの石を撫でた。
「……この石、南の村の子どもたちの歌が入ってる」
「それも、もう聴けなくなるんだな」
儀式は淡々と進み、石たちは黒い絹布に包まれ、銀細工の宝箱に納められた。
それを運ぶ護衛兵の足音が、広間にこだました。
宝箱は王都地下の古迷宮へと運ばれ、鉄の扉の奥、誰も入れない封印室に格納された。
「これでよかったの?」
リオの胸に重く響く疑問。
けれど、王はただ一言、静かに答えた。
「記録は力だ。だからこそ、いつでも取り出せる場所に置いておくべきではないのだ」
リオはその背中を見つめ、黙ってうなずいた。
“いつか”のために残す。
“忘れた頃”に、また必要になる日が来る。
それが、本当の記録の意味だと、彼女は少しだけ理解し始めていた。
封印から数年が経ち、王国は安定と繁栄を謳っていた。
情報は制限され、人工伝声石の使用は王家と特定機関のみに限定された。
人々の記憶から、あの宝石の存在は徐々に薄れ始めていた。
だが、リオの胸には今も、宝箱の重みが残っていた。
「声はどこへ行くのだろうね。聞く者がいなければ、それはただの沈黙?」
かつての旅仲間ルカが言った言葉が、ふと頭をよぎる。
リオは迷っていた。
封印は“正義”だったのか。あるいは、“忘却”という名の処刑だったのか。
ある夜、王宮の地下で異変が起きる。
封印室に通じる回廊のひとつに、不正な開錠の痕跡が発見されたのだ。
誰かが、伝声石を狙っている――。
ユラは王の命で調査隊を編成し、リオと共に再び迷宮へ足を踏み入れた。
地下の空気は冷たく、かつて宝箱を運んだときの感触が蘇る。
ひんやりとした石の壁、低く響く足音、そして静寂の圧力。
「足跡が……」
ユラが指さす先に、微かに砂を踏みつけた跡が残っていた。
それは明らかに、最近のものだった。
「侵入者がいた……?」
封印室の前に立つと、扉にはまだ王家の紋章が輝いていた。だが――
「鍵が、違う……」
鍵穴の周囲には、何度も開け閉めされた形跡。
公式記録には、一度も開封されたとはなかった。
ならば、これは王家の中の“誰か”の仕業なのか?
リオは思い出す。
石を封じたあの日、王が言った言葉を――
「記録は力だ。だが、誰もが使えるとは限らない」
この場所に隠された“記録”は、まだ誰にも語られていない秘密を抱えている。
それは、王国の根幹に関わる、禁忌の記録かもしれなかった。
リオたちは、扉の前に立ち尽くしていた。
すべてを開いてしまえば、戻れなくなる。
だが、開かなければ、何も進まない。
選ぶべきは、沈黙か、声か。
その答えは、もう間もなく迫っていた。
情報は制限され、人工伝声石の使用は王家と特定機関のみに限定された。
人々の記憶から、あの宝石の存在は徐々に薄れ始めていた。
だが、リオの胸には今も、宝箱の重みが残っていた。
「声はどこへ行くのだろうね。聞く者がいなければ、それはただの沈黙?」
かつての旅仲間ルカが言った言葉が、ふと頭をよぎる。
リオは迷っていた。
封印は“正義”だったのか。あるいは、“忘却”という名の処刑だったのか。
ある夜、王宮の地下で異変が起きる。
封印室に通じる回廊のひとつに、不正な開錠の痕跡が発見されたのだ。
誰かが、伝声石を狙っている――。
ユラは王の命で調査隊を編成し、リオと共に再び迷宮へ足を踏み入れた。
地下の空気は冷たく、かつて宝箱を運んだときの感触が蘇る。
ひんやりとした石の壁、低く響く足音、そして静寂の圧力。
「足跡が……」
ユラが指さす先に、微かに砂を踏みつけた跡が残っていた。
それは明らかに、最近のものだった。
「侵入者がいた……?」
封印室の前に立つと、扉にはまだ王家の紋章が輝いていた。だが――
「鍵が、違う……」
鍵穴の周囲には、何度も開け閉めされた形跡。
公式記録には、一度も開封されたとはなかった。
ならば、これは王家の中の“誰か”の仕業なのか?
リオは思い出す。
石を封じたあの日、王が言った言葉を――
「記録は力だ。だが、誰もが使えるとは限らない」
この場所に隠された“記録”は、まだ誰にも語られていない秘密を抱えている。
それは、王国の根幹に関わる、禁忌の記録かもしれなかった。
リオたちは、扉の前に立ち尽くしていた。
すべてを開いてしまえば、戻れなくなる。
だが、開かなければ、何も進まない。
選ぶべきは、沈黙か、声か。
その答えは、もう間もなく迫っていた。
迷宮最深部――封印室の扉が、軋んだ音を立てて開いた。
リオとユラは、慎重に足を踏み入れる。
中には、あのときと同じように、王家の宝箱が静かに鎮座していた。
だが、何かが違う。
「……蓋が、開いてる」
ルカの声が震える。
宝箱の中には、本来十数個あったはずの人工伝声石が――三つしか残っていなかった。
「盗まれた……?」
そう口にした瞬間、室内に低く響く音。
それはどこからともなく流れ出た、記録の断片だった。
「……記録……は、声だけでは足りない。真実を、見せろ……」
誰かの声。だが歪み、変質している。
それはまるで、怒りや憎しみが混ざったような、呪いにも似た響きだった。
「これは……人工伝声石の記録じゃない」
ユラが青ざめる。
「違う……これは、**改造された石の“声”**よ」
誰かが、封じられた人工伝声石を使い、記録を“武器”として変質させたのだ。
記録は力――だが、制御されない力は、災いになる。
そのとき、空中に揺らめく像が現れた。
それは封印されていた記録のひとつ――“戦争の光景”だった。
燃え上がる村、崩れゆく塔、叫び声とともに倒れる人々。
リオたちはその凄惨さに息を呑んだ。
「誰かがこれを……復元し、広めようとしているのか……?」
そう、声は記録。
記録は情報。
情報は、人を動かす力になる。
だからこそ、王は封印を選んだのだ。
けれど、真実は押し込められても、消え去ることはなかった。
ユラが震える手で、残された三つの石のひとつを取り上げた。
「まだ……残ってる。これだけは……守らなきゃ」
「遅いかもしれないけど、それでも――もう一度、“声”を正しく届けよう」
リオの瞳に、かつての火が戻る。
沈黙の時代は終わる。
再び、“記録”が世界を巡るときが来た。
リオとユラは、慎重に足を踏み入れる。
中には、あのときと同じように、王家の宝箱が静かに鎮座していた。
だが、何かが違う。
「……蓋が、開いてる」
ルカの声が震える。
宝箱の中には、本来十数個あったはずの人工伝声石が――三つしか残っていなかった。
「盗まれた……?」
そう口にした瞬間、室内に低く響く音。
それはどこからともなく流れ出た、記録の断片だった。
「……記録……は、声だけでは足りない。真実を、見せろ……」
誰かの声。だが歪み、変質している。
それはまるで、怒りや憎しみが混ざったような、呪いにも似た響きだった。
「これは……人工伝声石の記録じゃない」
ユラが青ざめる。
「違う……これは、**改造された石の“声”**よ」
誰かが、封じられた人工伝声石を使い、記録を“武器”として変質させたのだ。
記録は力――だが、制御されない力は、災いになる。
そのとき、空中に揺らめく像が現れた。
それは封印されていた記録のひとつ――“戦争の光景”だった。
燃え上がる村、崩れゆく塔、叫び声とともに倒れる人々。
リオたちはその凄惨さに息を呑んだ。
「誰かがこれを……復元し、広めようとしているのか……?」
そう、声は記録。
記録は情報。
情報は、人を動かす力になる。
だからこそ、王は封印を選んだのだ。
けれど、真実は押し込められても、消え去ることはなかった。
ユラが震える手で、残された三つの石のひとつを取り上げた。
「まだ……残ってる。これだけは……守らなきゃ」
「遅いかもしれないけど、それでも――もう一度、“声”を正しく届けよう」
リオの瞳に、かつての火が戻る。
沈黙の時代は終わる。
再び、“記録”が世界を巡るときが来た。
王都に戻ったリオたちは、最後の三つの人工伝声石を手に、声の塔の頂へ向かった。
塔の最上階にはかつて使われていた古の伝送台が残されていた。
それは、王国成立前に各地へ記録を届けるため使われていた、原始的だが確かな装置。
「これで、もう一度送れるはず」
ユラは祈るような手つきで、石を台座に置いた。
ルカが静かに動力水晶を調整し、リオが最後の操作を行う。
「この記録が、誰かに届くことを信じて――」
送信開始の灯がともる。
途端に石が淡い光を放ち、記録が空へ解き放たれた。
映像、声、想い、歌、泣き声、笑い声。
さまざまな「生きた記録」が、王国の空を駆けてゆく。
それはただの技術ではなかった。
人の心が、過去を、未来を、結び直すための手段だった。
数日後、辺境の村で、老人が空から落ちてきた微細な石片を拾った。
それを火にかざすと、かつて若き日に聞いた声が蘇る。
「……ああ、懐かしいな……まだ、あの時の声が、生きていたとは……」
別の地では、孤児院の子どもたちが、空に映った歌に目を輝かせる。
「この歌、誰が歌ってるの?」
「昔の人だって! でも、まるで目の前で歌ってるみたい!」
記録は、再び人々の間を流れはじめた。
けれど――その数日後、塔の送信装置は静かに崩れ落ちた。
長年眠っていた装置は、最後の役目を終えて、静かに息を引き取ったのだった。
それでも、リオたちは悔いなかった。
「これでよかったんだよ。声は、また旅立った」
「きっと……どこかで誰かが、それを必要とする」
記録は、もう王の宝ではない。
人々の手の届く場所に戻ったのだ。
リオは空を見上げた。
そこに浮かぶのは、かすかに瞬く光。かつて自分たちが送った記録のかけら。
「忘れた頃に、誰かが見つけてくれる。きっと、いつか」
そして彼女は微笑んだ。
信じている――声は、消えないと。
いつかやって来ることを信じて。
塔の最上階にはかつて使われていた古の伝送台が残されていた。
それは、王国成立前に各地へ記録を届けるため使われていた、原始的だが確かな装置。
「これで、もう一度送れるはず」
ユラは祈るような手つきで、石を台座に置いた。
ルカが静かに動力水晶を調整し、リオが最後の操作を行う。
「この記録が、誰かに届くことを信じて――」
送信開始の灯がともる。
途端に石が淡い光を放ち、記録が空へ解き放たれた。
映像、声、想い、歌、泣き声、笑い声。
さまざまな「生きた記録」が、王国の空を駆けてゆく。
それはただの技術ではなかった。
人の心が、過去を、未来を、結び直すための手段だった。
数日後、辺境の村で、老人が空から落ちてきた微細な石片を拾った。
それを火にかざすと、かつて若き日に聞いた声が蘇る。
「……ああ、懐かしいな……まだ、あの時の声が、生きていたとは……」
別の地では、孤児院の子どもたちが、空に映った歌に目を輝かせる。
「この歌、誰が歌ってるの?」
「昔の人だって! でも、まるで目の前で歌ってるみたい!」
記録は、再び人々の間を流れはじめた。
けれど――その数日後、塔の送信装置は静かに崩れ落ちた。
長年眠っていた装置は、最後の役目を終えて、静かに息を引き取ったのだった。
それでも、リオたちは悔いなかった。
「これでよかったんだよ。声は、また旅立った」
「きっと……どこかで誰かが、それを必要とする」
記録は、もう王の宝ではない。
人々の手の届く場所に戻ったのだ。
リオは空を見上げた。
そこに浮かぶのは、かすかに瞬く光。かつて自分たちが送った記録のかけら。
「忘れた頃に、誰かが見つけてくれる。きっと、いつか」
そして彼女は微笑んだ。
信じている――声は、消えないと。
いつかやって来ることを信じて。
エピローグ 記録王国エルデナの伝承
これが、この国の前にあったと言われる――記録王国エルデナのお話だよ。
今の子どもたちは信じないかもしれない。
空に声が浮かび、石が記憶を宿すなんて、まるでおとぎ話のようだって。
でもね、今でも残っているんだ。
この王国の地下には、かつての迷宮の名残があって、そこにはまだ“何か”が眠っていると。
人工伝声石も、時おり発掘される。
けれど中に記録された声や映像は、すっかり抜け落ちていて、もう何も聞こえはしない。
それでも、わかったことがある。
その石たちは、新しい情報を記録し、遠くへ送信する力を今も秘めているんだ。
研究者たちは言うよ。
「情報は消えても、器は残る」って。
まるで、心を失くしたけど体は動くように。
伝声石には、今では白い石しか残っていない。
けれど記録には、特別な五つの白い石が、迷宮のさらに深くに封印されているとある。
それをすべて集めた者だけが、真の“記録の鍵”を手に入れるんだって。
そして、こんな言い伝えもある。
「五つの白き石を集め、それぞれに心を宿すとき。
石に向かって「未来に託す」と呟けば、忘れた頃にその力は百倍以上に膨らみ帰って来るだろう、言葉は時を超えて生きる」
その“未来に託す”という言葉こそ、王国エルデナが残した最後の魔法だと。
どうしてこんな話をするのかって?
そうだね、君がもし、これから世界を旅するのなら――
もし白い石を見つけて5つ揃えたとき、それをただの宝石と思わないでおくれ。
もしかしたら、それは千年前の声が眠る、記録の器かもしれないのだから。
そして、願いが本物なら、そっとささやいてみるといい。
**「未来に託す」**と――。
これが、この国の前にあったと言われる――記録王国エルデナのお話だよ。
今の子どもたちは信じないかもしれない。
空に声が浮かび、石が記憶を宿すなんて、まるでおとぎ話のようだって。
でもね、今でも残っているんだ。
この王国の地下には、かつての迷宮の名残があって、そこにはまだ“何か”が眠っていると。
人工伝声石も、時おり発掘される。
けれど中に記録された声や映像は、すっかり抜け落ちていて、もう何も聞こえはしない。
それでも、わかったことがある。
その石たちは、新しい情報を記録し、遠くへ送信する力を今も秘めているんだ。
研究者たちは言うよ。
「情報は消えても、器は残る」って。
まるで、心を失くしたけど体は動くように。
伝声石には、今では白い石しか残っていない。
けれど記録には、特別な五つの白い石が、迷宮のさらに深くに封印されているとある。
それをすべて集めた者だけが、真の“記録の鍵”を手に入れるんだって。
そして、こんな言い伝えもある。
「五つの白き石を集め、それぞれに心を宿すとき。
石に向かって「未来に託す」と呟けば、忘れた頃にその力は百倍以上に膨らみ帰って来るだろう、言葉は時を超えて生きる」
その“未来に託す”という言葉こそ、王国エルデナが残した最後の魔法だと。
どうしてこんな話をするのかって?
そうだね、君がもし、これから世界を旅するのなら――
もし白い石を見つけて5つ揃えたとき、それをただの宝石と思わないでおくれ。
もしかしたら、それは千年前の声が眠る、記録の器かもしれないのだから。
そして、願いが本物なら、そっとささやいてみるといい。
**「未来に託す」**と――。
>> spbn さん
spbnさんのこれに返事をすると、コメント欄を読んでいる方にヒントを与える形に
なるので、すぐに返事をしませんでしたが
時間を空けて改めて😉
ミッションクリアおめでとうございます☺️
ミッションクリア報酬は、チップでの投入か
パケットギフトかは決めていませんが
ちゃんと、忘れた頃に贈る予定です😉
意外ですね🤔
このダンジョンのミッションにspbnさん意外は
気がついていない感じなんでしょうかね〜🤔
まぁ、ラノベ風文章を長くし過ぎましたかね😅
ちょこっと読んで、とりあえずエピローグを
見るなどをする方もいるかなって、感じで
作成しましたが
これまで作成して来たダンジョンの様に
長文の何処かに暗号が隠れているタイプと
予測して、何かがあると勘付いたけれど
長過ぎるから読み取るのを敬遠したのかも
知れませんね😅
あとは題名から、数日後にダンジョンに
ワープが加わるとか、マッピングして置くと
原石の種類がバージョンアップされた
ダンジョンが忘れた頃の別日に再公開
されると読み取った方もいるのかも
知れませんね🤔
様子見で挑戦をせずに居た方には、是非挑戦して
欲しいですね☺️
原石全てを集めるのは、難易度がちょっと
高めですが、マッピングすれば簡単な部類です☺️
このダンジョンのミッションにspbnさん意外は
気がついていない感じなんでしょうかね〜🤔
まぁ、ラノベ風文章を長くし過ぎましたかね😅
ちょこっと読んで、とりあえずエピローグを
見るなどをする方もいるかなって、感じで
作成しましたが
これまで作成して来たダンジョンの様に
長文の何処かに暗号が隠れているタイプと
予測して、何かがあると勘付いたけれど
長過ぎるから読み取るのを敬遠したのかも
知れませんね😅
あとは題名から、数日後にダンジョンに
ワープが加わるとか、マッピングして置くと
原石の種類がバージョンアップされた
ダンジョンが忘れた頃の別日に再公開
されると読み取った方もいるのかも
知れませんね🤔
様子見で挑戦をせずに居た方には、是非挑戦して
欲しいですね☺️
原石全てを集めるのは、難易度がちょっと
高めですが、マッピングすれば簡単な部類です☺️
さて、このダンジョンのミッション内の
100倍以上という表記ですが、仮に100倍
ぴったりだとするとホワイト原石5つの
100倍なので500MBですが、実は
お盆前の特別だダンジョンのパケットを
山分けで考えています☺️
明日から、お盆前の特別ダンジョンで
余ったパケットを更に消費するために
月末までミッションを合わせて1人当たり
1500MB取得出来るダンジョンを公開します☺️
https://king.mineo.jp/game/dungeons/324178
このダンジョンに設定してあるパケット
97500MBはお盆前の特別ダンジョン用の
ミッション報酬やダンジョン内の原石用に
用意した300GBの残りです。
このダンジョンのミッションを含めて
消費したパケットの残り。
更にこのダンジョンに誘導するための
告知ダンジョン作成で10GB強使いましたので
それも合わせて引いたパケットを
今回のミッションクリアの方で山分けを
企画していましたが😅
現在でミッションクリアが10名満たないために
1人当たりが13GB程度になってしまう可能性が
出て来ました😅
流石にお盆前の特別ダンジョンより報酬が
多いのは違うと思いますので、
とりあえずミッションクリアの事を忘れた頃に
チップを適量投入したいと思います☺️
100倍以上という表記ですが、仮に100倍
ぴったりだとするとホワイト原石5つの
100倍なので500MBですが、実は
お盆前の特別だダンジョンのパケットを
山分けで考えています☺️
明日から、お盆前の特別ダンジョンで
余ったパケットを更に消費するために
月末までミッションを合わせて1人当たり
1500MB取得出来るダンジョンを公開します☺️
https://king.mineo.jp/game/dungeons/324178
このダンジョンに設定してあるパケット
97500MBはお盆前の特別ダンジョン用の
ミッション報酬やダンジョン内の原石用に
用意した300GBの残りです。
このダンジョンのミッションを含めて
消費したパケットの残り。
更にこのダンジョンに誘導するための
告知ダンジョン作成で10GB強使いましたので
それも合わせて引いたパケットを
今回のミッションクリアの方で山分けを
企画していましたが😅
現在でミッションクリアが10名満たないために
1人当たりが13GB程度になってしまう可能性が
出て来ました😅
流石にお盆前の特別ダンジョンより報酬が
多いのは違うと思いますので、
とりあえずミッションクリアの事を忘れた頃に
チップを適量投入したいと思います☺️
チップは200チップにすることにしました。
まだ、忘れた頃ではないでしょうから、来月の何処かで
チップを贈ります😊
まぁ、このダンジョンについての説明ダンジョンを
設定していますので、そのダンジョン公開の
前後になるかと思います😉
まだ、忘れた頃ではないでしょうから、来月の何処かで
チップを贈ります😊
まぁ、このダンジョンについての説明ダンジョンを
設定していますので、そのダンジョン公開の
前後になるかと思います😉
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