●涼しい夏の怪談話●

クロハナさん

マスター

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ここはどこかの鍾乳洞。
クロハナたち三匹は夏の保養のためここを訪れていた。
「あ〜涼しいわね〜。やっぱり夏はこういう所に限るわ」
ぽっちゃり白猫のコマが爽快な顔で言うと、クロハナと茶々丸がその言葉に頷いた。
「それにしてもこの鍾乳洞、やたら道が分かれてない？まるで迷路みたいだわ」
クロハナが言った。
「アタシも思った。誰かが人工的に作ったような感じよね」
と茶々丸。
「確かに変ね。これじゃ帰り道が分かったもんじゃないわ。しかも妙に暗すぎるし…」
コマが珍しく不安そうに腕を抱いた。
その時。どこからともなく声が聞こえた。

『もういいから…大の猫がやめてよ』

「あんたたち、いまなんか言った？」
コマが訊いたがクロハナと茶々丸はかぶりを振った。
『もういいから』
その囁くような声は徐々に強さを増していった。
『大の猫がやめてよ』『大の猫がやめてよ』『大の猫がやめてよ』『大の猫がやめてよ』

「も、戻るわよあんたたち！」

――
三匹は無事に元の入口に辿り着くことができたが、かつてその鍾乳洞で何があったのかは知る由もなかった。

（終）

これ以上ありません。