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スマホで月はキレイに撮影できる? フォトグラファーに教わった(iPhone・Androidそれぞれの撮り方を解説)

スマホで月はキレイに撮影できる? フォトグラファーに教わった(iPhone・Androidそれぞれの撮り方を解説)

たかや
ライター: たかや
1993年生まれ。ライター。記事の撮影はスマホのカメラを使うことが多いので、スマホがないと生きていけない。

こんにちは。ライターのたかやです。

夜空に輝く満月をスマホで撮ろうとしたけど、いざ写真を見返すとイメージと違う。多くの人に、そんな経験があるんじゃないでしょうか。

月の輪郭がボヤ〜っとなったり、ただの真っ白な光の球のようになったり…。本当はクレーターまで鮮明に写る美しい月の写真を撮りたいのに…!

もっと自分に写真の知識があれば、キレイに撮れたりするのか?

ということで今回は、フォトグラファー・栃久保さんに「スマホで月を綺麗に撮る方法」を教えていただきました。実際にスマホで月の撮影に挑戦します!

栃久保 誠(とちくぼ・まこと)
1982年生まれ。某アパレルメーカー店長を経て退職後、1年8カ月で38カ国を巡り、帰国後フリーランスの写真家として活動開始。現在はウェディングや家族写真の出張撮影、観光パンフレットや広告、企業案件など様々なジャンルで撮影を行う。

検証に使うスマホ

メインの検証に使うスマホはこちらの2台。

  • iPhone 13 Pro Max(光学3倍ズーム搭載)
    • Google Pixel 8 Pro(光学5倍ズーム、超解像ズーム搭載)

      光学ズームは、画質を落とすことなく倍率を上げることが可能。デジタルズームは一般的に倍率を上げると画質が落ちますが、「超解像ズーム」はAIを使ったデジタルズームのため、画質の低下を抑えて倍率を上げることが可能です。

      このほかに予備として、以下の2台でも検証してみました。

      • Galaxy S24 Ultra(光学ズームとAIを使ったデジタルズームを組み合わせ最大100倍の望遠が可能)
        • iPhone SE2(光学ズーム非搭載)

          さて、どんな写真が撮れるのか!?

          【前提知識1】スマホは「自動で明るくしようとする」

          たかや:そもそもですが、スマホでも月をキレイに撮れるんでしょうか? 一眼レフカメラで撮ったくらい鮮明な感じに…。

          栃久保:さすがに一眼レフカメラには敵いませんが、月をキレイに撮影するための基本的な考え方は、一眼レフもスマホも同じです。カメラの基礎的な知識を理解すれば、スマホでもクオリティーを上げることは可能です。

          たかや:おお…ぜひその方法を教えてください!

          たかや:ちなみに、これは前日に「Google Pixel 8 Pro」のオートモードで撮った月なんですが、なんでこんなにぼやけてしまうんですか?

          栃久保:これはカメラの仕様が原因ですね。スマホのカメラには、被写体が暗いと画面を自動で明るくする機能が備わっています。なので、夜空のような暗い被写体を撮影すると、スマホ側が「暗い写真になりそうだから、もっと明るくしよう」と調整してくれるんですよね。ただ、そうなると今度は「月の明るさ」が問題になってきます。

          たかや:え、月の明るさが?

          栃久保:月って、単体だとかなり明るいですよね。でも、夜空は暗い部分がほとんどなのでスマホはその暗さを検知して画面を明るくしようとする。すると、ただでさえ明るい月が、さらに明るくなってしまいます。結果、明るくなりすぎて真っ白くぼやけた月の写真が撮れてしまうわけです。

          たかや:あ~! だから、僕の撮った月は「白飛び」していたんですね。ちなみに機種によっては「夜景モード」もありますが、このモードなら白飛びしませんか?

          栃久保:いえ、「夜景モード」は、暗い風景を明るく撮影するモードなんです。月の撮影には向いていません。

          【前提知識2】ズームと露出補正は必須

          栃久保:スマホで月を撮影するために大事なポイントは、大きく分けて2つです。

          1. ズーム機能の優れた機種を使う
            1. 露出補正をする

              栃久保:月は被写体としてはとても小さいので、なるべく高倍率で大きく撮るに越したことはありません。iPhone SE2など、光学ズーム非搭載でデジタルズームの倍率もあまり上げられないスマホだと、なかなか厳しいと思います。

              たかや:なるほど。ズーム機能にかなり左右されるんですね。

              栃久保:そして、ズーム機能よりも大事なのが「露出補正」。画面の明るさの調節です。月を上手に撮るコツは、夜空を自動で明るく撮ろうとするカメラの性質を理解した上でいかに暗く撮るか、ということです。露出は「写真を撮るときにカメラに取り込まれる光の量」のことで、「F値」「ISO感度」「シャッタースピード」この3つで光の量の調節を行います。

              F値……別名「絞り値」。値が大きくなるほどピントの合う範囲が広くなり、小さくなるほどピントの合う範囲が狭くなる。

              シャッタースピード……シャッターが開いている時間のこと。シャッタースピードを遅くすると、そのぶん光が入るため明るくなるが、ブレやすくなる。

              ISO感度……カメラがどれだけ光を感じやすいかの指標。ISO感度を上げると明るくなるが、画質が落ちる。

              栃久保:スマホで月を撮る場合は、「ISO感度」「シャッタースピード」の調整だけでも充分だと思います。この2つを手動で調整しながら、画面の明るさを抑えて撮ります。

              【準備1】カメラのレンズは必ず拭く

              栃久保:初歩的なことなんですが、レンズはしっかり拭きましょう。

              たかや:初歩的だけど意外と見落としがちですね。

              栃久保:指紋などがついていると全体的にぼやけた写真になってしまいます。特に光っているものがその影響を受けやすいので、月を撮るときは要注意です。

              【準備2】スマホ用の三脚があれば使う

              栃久保:カメラの倍率を上げれば上げるほど、手元が少し動いただけでも被写体がフレームアウトしたりしてしまうんですよね。もしスマホ用の三脚などがあれば構図を決めやすいので便利です。

              たかや:たしかに手持ちだと、画面上で月があちこち移動して撮りにくいですね。

              Google Pixel 8 Proで月を撮影してみよう

              さて、前提知識と準備について教わったところで、ここから実際に撮影していきましょう。

              まずは、Androidの「Google Pixel 8 Pro」から。

              【ステップ1】プロモードを選択

              まずは画面の左端にある歯車アイコンをタップ→設定画面を開きます。

              写真の設定で「プロモード」を選びます。これにより、手動で細かく設定が可能になります。解像度を「50MP」、ファイル形式を「RAW+JPEG」に選択しました。

              MP(メガピクセル)……カメラの画素数を表す値。1メガピクセルが100万画素なので、12MPは1200万画素。50MPは5000万画素。画素数が高いほど、繊細な写真を撮影できる。

              RAW……JPEG画像を生成する「生」データ。画質の劣化を最低限に抑えながら写真の調整が可能。

              たかや:普段の写真も、50MPかつRAW形式で撮ったほうがいいんですか?

              栃久保:今回はあくまで「遠く離れた月を、できる限り拡大した状態で撮る」ことが目的なのでこの設定にしました。日常的な写真だったら、12MP・JPEG形式でも問題はありません。RAWは「画像1枚あたりのデータ量が大きくなる」などのデメリットもあります。


              【ステップ2】ズーム

              画像

              そして月を画面の中央に捉えながら、ゆっくりと画面を拡大していきます。グリッド線を表示させておくと、月の配置をコントロールしやすいです。

              【ステップ3】露出補正(ISO感度とシャッタースピードの設定)

              続いて、画面右端の調整マークをタップ。

              ISOのアイコンをタップし「50」に設定。

              シャッタースピードのアイコンをタップし、「1/500s」に設定。

              栃久保:これらの数値は一旦適当に決めてみました。ISO感度は値の小さいほうがノイズが出づらいので、基本的には一番小さくしておきます。ここからシャッタースピードを調節してベストな数値を決めていきます。画面上の月が明るすぎると思ったらシャッタースピードを速く、暗すぎると思ったら遅く、少しずつ動かして自分がベストだと思う値を見つけます。

              たかや:ゲージをスクロールするだけだし、思ったよりも簡単ですね。こういう調整をやりながら撮影するの、プロっぽい感じで楽しい。

              微調整を繰り返し、最終的にシャッタースピードを「1/997」に、ISO感度を「98」に設定しました。

              【ステップ4】シャッターマークを押す

              月が画角からフレームアウトしないようにカメラをしっかり固定しながら、シャッターマークを押します。

              撮影した写真(トリミング前)

              トリミング後

              クレーターまで見える鮮明な写真が撮れました!

              iPhone 13 Pro Maxで月を撮影してみよう

              次は「iPhone 13 Pro Max」で撮っていきましょう。

              【ステップ1】カメラアプリ「MuseCam」をインストール

              iPhoneのデフォルトのカメラアプリは「オートモード」でしか撮れないため、カメラの細かい設定が可能なアプリ「MuseCam」をインストールします。



              【ステップ2】ズーム

              MusuCamアプリ上で、画面をピンチアウトして拡大します。拡大しすぎると画質の低下が目立つため、画面を見ながらちょうどいい大きさに調整します。

              【ステップ3】露出補正(ISO感度とシャッタースピードの設定)

              左から3番目の「ISO感度」アイコンをタップ。こちらも暗めの設定(低い値)に調整します。今回は「102」に設定しました。

              続いて左から2番目の「シャッタースピード」アイコンをタップ。スライダーをスワイプしながら調整していきます。今回は「1/865」に設定。

              左から1番目のアイコンは「焦点距離」。今回は一番ピントが合った「0.8」に手動で設定しました。こちらは「AUTO」を選択しても自動でうまく調整してくれそうです。

              【ステップ4】シャッターマークを押す

              月を画角におさめて、画面下の赤いシャッターマークを押します。

              撮影した写真(トリミング前)

              トリミング後

              優秀なAI補正がついているGoogle Pixel 8 Proには劣りますが、iPhone 13 Pro Maxでもクレーター込みの月が撮影できました!

              【裏ワザ】標準カメラアプリのオートモードでキレイに撮る方法

              栃久保:スマホのカメラは「暗いものを自動で明るく撮ろうとする」と言いましたが、逆にいえば「明るいものは自動で暗く撮ろうとする」んですよね。月は夜空をいかに暗く撮るかがポイントなので、この特性を利用すれば、標準カメラアプリのオートモードでもいいところまでいけると思います。

              たかや:そんな裏ワザが!? どうやって撮るんですか?

              栃久保:まず、電灯などなるべく明るくて大きな光を周りで探してください。今回は光っている看板にしましょう。

              栃久保:倍率を最大まで上げてなるべく画面に大きく看板が写るようにして、看板の明るいところをタップします。

              栃久保:画面に表示された太陽マークのゲージを、一番下までスライドします。これで、「暗いものを自動で明るくするスマホの特性」を避けたまま最大限暗くなりました。次に、すばやく月にカメラを向けてシャッターマークを押します。

              撮影した写真(トリミング後)

              たかや:えっ!? なんならMuseCamよりもキレイに撮れてますね。裏ワザやばい…。

              栃久保:「はじめから月にカメラを向けて太陽マークを調節すればいいのでは?」と思うかもしれませんが、夜空にカメラを向けた時点ですでに明るめに調整された状態なので、そこから太陽マークで暗くしようとしても暗くなりきらないんですよね。周りに明るいものがあれば、この方法を試してみてください!

              超望遠スマホ、望遠なしスマホではどうなる?

              Galaxy S24 Ultra

              100倍ズームが可能なGalaxy S24 Ultraでは、月はどのように撮れるでしょう。

              Google Pixel 8 Proと同様、プロモードに切り替えると「シャッタースピード」や「ISO感度」が手動で設定できるようになります。が、オートモードでも大きくてキレイな写真が簡単に撮れてしまいます。

              オートモードで撮影

              栃久保:AI補正がめちゃくちゃ優秀ですね。手動で設定して撮っても明らかな差は見られなかったので、オートモードに任せちゃってもいいと思います。

              iPhone SE2

              最後に、光学ズーム非搭載、デジタルズームもあまり期待できないiPhone SE2です。MuseCamアプリを使っても、標準カメラアプリで普通に撮ってもイマイチ。ただの白い球のようになってしまいます。

              標準カメラアプリで撮影

              では、さきほど教わった裏ワザを使うと…?

              裏ワザ使用(トリミング前)

              裏ワザ使用(トリミング後)

              裏ワザの使用で、なんとかクレーターの陰影が写し出されました。

              栃久保:iPhone SE2など望遠レンズに期待できないスマホの場合、スマホ用の外付け望遠レンズを取り付ける方法もあります。Amazonなどで数千円から買えるので、試してみてもいいかもしれません。

              スマホで月の撮影にチャレンジしてみよう

              フォトグラファー・栃久保さんのアドバイスを受けた結果、見違えるようにキレイな満月の写真が撮れました。

              レクチャー前後(Google pixel 8 Pro)

              月とスッポンとはこのこと…。

              最後に、満月についての豆知識を1つ。毎月一度は見られる満月ですが、月ごとに異なる名称があるのをご存じですか?

              1月:ウルフムーン
              2月:スノームーン
              3月:ワームムーン
              4月:ピンクムーン
              5月:フラワームーン
              6月:ストロベリームーン
              7月:バックムーン
              8月:スタジェンムーン
              9月:ハーベストムーン
              10月:ハンターズムーン
              11月:ビーバームーン
              12月:コールドムーン

              それぞれの満月の出没日は、「満月カレンダー」などのサイトで確認可能です。今回も満月カレンダーを参考に、中秋の名月を狙って撮りに行きました。

              みなさんもぜひ、今回紹介した内容を参考にしながら、スマホで月の撮影に挑戦してみてくださいね!

              図版制作:サンノ
              編集:ノオト


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              69 件のコメント
              1 - 19 / 69
              夜景観るのが好きで、写真を撮影したことありますが、いつも真っ暗で、高性能なカメラでないと、撮影できないとあきらめていました。この記事の手順に沿って、月を撮影してみたいです。うまくいかなくても、真っ暗の写真は回避できそうに感じました。非常にためになる記事、ありがとうございました。

              20240324_181110.jpg

              Galaxy S23 Ultra
              ƒ/4.9 1/127 27.2 mm
              ISO 50
              で撮った月をトリミング
              月の出始めで 一寸赤めですが
              ありがとうございます😊
              以前撮影したのですが小さくてピンぼけだったのを記憶してます😅
              iPhone seのレンズでもある程度綺麗に撮影できることに感激ですありがとうございました😊
              ありがとうございます😊
              スマホでは無理なのかと思っていました
              夜空を見るのが好きなので今度試してみます
              綺麗に撮れたら嬉しいなぁ〜😆
              Pixel 8 Proを使っていますので、たいへん参考になりました😊

              Proモードをこなせるようになりたいです。
              分かったような、分からないような…。
              とりあえず「簡単ではなさそう」なのは分かりました。

              IMG_20241116_205543.jpg

              11/16 Mate60proにて撮影したものです。
              光学5倍+デジタルズーム、合計30倍
              きれいに撮れるんですね(^o^)/

              でも、わたしは月単体の写真より、風景写真にぽっかり月が映っている って感じの写真が好きです(^^;
              なるほどー
              なんとなくテキトーだった露出補正でしたがこれでコツがつかめるかも、学びになる記事でした🤗
              ありがとうございました🤗

              月の写真.jpg

              一度でもよいので、こんなお月さんの写真が撮りたいです~~!!!

              たぶん、不可能だと思いますが~~?!

              今回の記事を参考にして、是非がんばって挑戦したいと思います!!!
              とても面白く拝読しました。
              一眼レフで無いと駄目と思っていたのです。
              スマホカメラの特性が、良く理解出来ました。
              Aquos sense8で、挑戦します。
              有難う御座居ました。
              有効な情報を提供ありがとう‼️
              スマホでは、メモ代わりの撮影しかしないことにしているのですが、あらためて適材適所なんだと思いましたね。
              やはり、メモ代わりにとどめます😆

              IMG20240917201859.jpg

              私の写した月は幻想的ですよ😁
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