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「スマホ依存」で人間関係や日常生活に支障も? 専門医師に原因と対策を聞いた
大阪府出身。日々エッジの効いたネタを探し続けるフリーライター。得意ジャンルはサブカル、テレビ、音楽、現代アートなど。デイリーポータルZ 新人賞2017で佳作。自称・無料イベントマニア。
「少しでも時間が空くとスマホに手を伸ばしてしまう」「仕事や作業の合間にSNSをチェックしたくなる」……そんな人は多いでしょう。筆者も同じです。日常生活に支障がないレベルであれば問題ありませんが、中には「スマホが使えない状況が続くとイライラする」「仕事や勉強、人間関係に悪影響が出る」など、いわゆる依存症の状態になることも。
そこで、「スマホ依存外来」の専門医師として治療にあたっている、東邦大学医療センター大森病院・精神神経科の舩渡川智之(ふなとがわ・ともゆき)先生に、スマホ依存になる人の傾向や原因、対策をお聞きしました。
内気な性格の人がなりやすい? スマホ依存になる原因
——僕も暇があるとついスマホをいじってしまうので、依存症に含まれるのかな?と不安になりました。どのレベルから「スマホ依存」に該当するのでしょうか?
一般的に「スマホ依存」「インターネット依存」と言われることが多いのですが、正式な医学用語ではありません。どちらの用語も、表現として不適切だという議論や批判があります。
——えっ、そうなんですか?
はい。「物質以外のものにのめりこんでいる状態は依存とは呼ばない」「スマートフォンのアプリもインターネットのサイトも内容はさまざまで、のめりこむコンテンツも多種多様なため表現として用いるのは不適切だ」といった声があります。
ただ、実際に困っている、心配されている方はこれらの用語を用いて相談や受診をされることが多いため、今回は便宜的に「スマホ依存」を用いて説明を続けます。
——よろしくお願いします。
まず、病的な状態かどうかは、「日常生活や社会生活に支障が出るかどうか」という基準で説明したほうが分かりやすいでしょう。具体的には下記のような例が挙げられます。
スマホ依存外来に来る患者さんは、スマホもパソコンもゲーム機も……と複合的な依存になっていることが多いですね。
——スマホ依存になりやすい人の傾向を教えてください。
代表的なのはゲームとSNSで、男性はゲーム、女性はSNSにハマってしまう傾向が強いですね。内気な性格の人がスマホ依存になりやすい、というのもあります。
——「スマホ依存=ゲームやSNSにハマる」というのはイメージ通りですが、もともとの性格が要因となっていることもある、と。
そうですね。自分に自信がない、自己制御ができない、感情のコントロールが難しい……そんな人がスマホ依存になりやすい傾向はあります。
——スマホ依存になると、どういう悪影響が出るのでしょうか?
身体的な面では、視力や運動機能の低下、頭痛、肩こり、腰痛などが多いですね。あとは食欲に影響が出るケースもあり、痩せと肥満の両方があります。
睡眠障害はほぼ必ず起こり、睡眠の質が低下して昼夜が逆転しやすくなります。その結果、衝動性が高くなったり、感情のコントロールが困難になったりするのです。うつ状態になると興味や関心の幅が狭まってしまい、スマホのことしか考えられなくなるケースもあります。
身体と精神の両方が重なると、次は社会的な面で悪影響が出ます。職場や学校での人間関係が悪化したり、睡眠障害によって仕事の生産性が下がったり、成績が落ちて留年や退学になってしまったり。ゲームへの課金によってお金を盗む、親のクレジットカードを勝手に使うなどの悪影響も出てきます。
勉強のプレッシャーや人間関係など、元の要因を探して解きほぐす
——スマホ依存外来に来る患者さんは、どういう属性の人が多いのでしょうか?
中高生が多く、大抵はお母さんが一緒に連れて来きます。本人も少し問題意識を感じており、「あんまり行きたくはなかったけど、しかたなく……」といった表情を浮かべているケースが多いですね。大人が1人で来られるケースはあまりありません。
男女比では、男性がやや多い傾向があります。あとは私立の中学生、高校生が多いですね。進級や進学などのプレッシャーがスマホ依存につながっていることもあります。
——患者さんに対して、どのような治療を行うのでしょうか?
なぜスマホ依存の状態になってしまったのか、対話しながら探っていきます。ただ本人にも羞恥心があるので、解きほぐすことは簡単ではありません。関係性を構築しつつ、質問を重ねていく必要があります。手がかりとして、知能検査や性格検査を行うこともあります。
結果としては「勉強の重圧やストレスから逃れるため」「学校の集団生活になじまない」「ADHD(注意欠如・多動症)の傾向がある」「現実の友だちを作るのに苦労し、スマホアプリの中でしかコミュニケーションが取れない」といったケースが多いですね。
——勉強のプレッシャーや本人の特性、コミュニケーション能力など、いろんな要因があるんですね。では、どのように改善していくのでしょうか?
たとえば不得意科目がストレスになってしまっている場合は、担任の先生に相談してもらって補習を受ける、とか。学校が合わない場合は、転校を考えていただくこともあります。
中には現実の友だちとトラブルになり、それをきっかけとしてスマホ依存になる人もいます。その場合は、友だちとの関係を修復すれば改善します。本当に多種多様なのですが、とくに中高生では「学業の困難」と「人間関係」が多いですね。
スマホ依存になった大元の要因を探して少しずつ解きほぐしていくと、自然と解消されていきます。ただ、一気に改善することは難しいので、「真夜中はスマホを使わない」「宿題だけはやる」など、身近な目標を立てて続けていくことが対処方法となります。
——ゲームやSNSにハマるのはあくまで表面的な事象で、その元となる要因を探って解決していく必要がある、と。
その通りです。頭ごなしに叱ったりスマホを取り上げたりしても、うまくいきません。話し合って問題を解決に導きつつ、スマホの使用時間を制限するなど取り決めを作っていくことが重要です。
本人だけでなく、親の考え方や姿勢を改める必要も
——中にはスマホ依存の治療で入院するケースもある、とお聞きしました。
「昼夜逆転してしまい、自分の力では戻せない」「スマホにのめりこみすぎて部屋から出られない」といった方には、入院を勧めることもあります。ただ、本人に自覚があるならいいのですが、親の意見だけで入院させると、うまくいかないことも多いですね。
——そもそも、本人が「このままではマズい」と思っているかどうかがポイントである、と。
基本的には、本人の中にある「変わりたい」という気持ちを支えていくことが重要です。その1つの手段として入院治療もあるよ、と伝えますが、実際に入院する患者さんはそれほど多くありません。
——治療を受けると、スマホ依存は治るのでしょうか?
入院した患者さんはかなり良くなります。ただ外来治療となると、根気が必要になりますね。本人のモチベーションが低い、あるいは親自身が関わり方を見直さないと、親子間で葛藤を抱える状態が続いてしまいます。お互いに「変えよう」というイメージが共有できないと、うまくいきません。
——本人だけでなく、親の問題もあるわけですね。
教育熱心な親が子どもに厳しく指導し、それが軋轢(あつれき)になってスマホ依存に繋がっていくケースも少なくありません。「良い高校、大学に行ってほしい」という親の気持ちも分かりますが、それが原因となっているのであれば、親が考え方や姿勢を改める必要があります。
旅行や買い物、料理など、スマホから離れる時間を意識的に作る
——自分がスマホ依存なのかどうか、チェックできるものはありますか?
久里浜医療センターのホームページに「スマートフォン依存スケール(短縮版)」が掲載されています。簡単にいうと、スマホ依存度のチェックリストですね。
「スマホ使用のため、予定していた仕事や勉強ができない」「スマホを手にしていないと、イライラしたり、怒りっぽくなる」といった項目が10個あり、回答して判定ボタンを押すと点数が出ます。合計が31点以上だとスマホ依存の疑いがあるので、1つの参考にしてください。
——スマホ依存にならないためには、どういう点に気をつければいいのでしょうか?
使用時間をしっかり把握することが大事です。スクリーンタイムなどの機能を使い、アプリごとの使用時間を知っておくと、「使いすぎかも」という気づきにつながります。
あとは、スマホから離れる趣味を意識的に持つといいでしょう。少し運動する、旅行に出かけて景色を見る、料理をするなど、スマホ以外に集中できるアクションを取り入れてみてください。
——では、子どもがスマホ依存にならないための対策は?
小学生など低年齢のころからスマホを与えると依存しやすいので、使用させるとしてもなるべく年齢が上がってからのほうがいいでしょう。ただ、連絡手段などさまざまな事情で、スマホを使わざるを得ないケースもあるかと思います。スマホを与える前に、使用する時間やアプリについて話し合っておくことが大事です。
よくあるのが、親もずっとスマホを見ていて親子の会話が少ないケース。キャンプや旅行、一緒に料理を作るなど、オフラインの活動を増やしていくといいでしょう。
もう1つ大事なのが、孤独を感じさせないようにすることです。孤立や寂しさがきっかけでスマホ依存になることもあるので、なるべく子どもとの関わりを増やしましょう。「スマホを充電するときは、必ずリビングで」といったルールを設けるのも1つの手です。
——親子のコミュニケーションも重要なポイントである、と。もし友人、知人など身近な人がスマホ依存になった場合、どう対処すればいいのでしょうか?
使いすぎで眠れないようであれば、「夜○時から○時まではオフラインの活動の時間にしよう」「寝ないと頭の働きも悪くなっちゃうよ」と伝えてみてください。能力を発揮するためには、しっかり睡眠時間を確保することが大事です。
本当にハマり込んでいる場合は外に連れ出すのも難しいので、まずは家の中でできることを頼んでみましょう。相手に何らかの役割を作り出せるいいですね。
外に連れ出せるようであれば、「運動不足になっちゃうから、一緒に買い物でも行こうよ」「スーパーまで歩こうよ」と誘ってみてください。いきなりスマホを絶つのは難しいので、スモールステップで進めることが大切です。
筆者もスマホを見る時間が長いので、依存度はどれくらいなのか心配になってしまいました。そこで、紹介してもらった「スマートフォン依存スケール」を試してみたところ、25点でした。31点以上が「スマホ依存の疑い」なので、今のところはセーフのようです。
必ずしもスマホが悪い影響を与えるとは限りません。中には「スマホのゲームで救われた」「落ち込んでいたけど、SNSによって元気になった」という人もいるでしょう。しかしスマホには興味・関心が刺激され続ける側面もあります。依存状態が長引くと深刻な引きこもりに至るケースもあるそうなので、自分自身はもちろん、とくに中高生のお子さんがいる方はご注意ください。
取材協力・画像提供:東邦大学医療センター大森病院 メンタルヘルスセンター(精神神経科)
編集:ノオト
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後、amazonで買い物して、
たまに電子書籍を見るくらいだし。
この記事を読んで、今後もスマホとの付き合いは、この程度でいいかなあと思ってしまいました。
参考になりました。
ありがとうございました。
スマホ依存気をつけます
今の若年者達はスマホがある世界で生まれ育っているから、スマホに依存ではなく、体の一部になっているのだと思う。