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はみ写　～うっかり撮れてた無意味な写真を味わう会～　

2023.12.13 11:00

ライター: 百瀬ガンジィ
イラストレーター兼デザイナー。趣味で3DプリントやAR、レポ漫画などを使った変な工作なども手掛ける。

こんにちは。百瀬ガンジィと申します。

突然ですがスマホをお使いの皆さん、こういった場面ってありませんか？

こう……スマホで撮影してたらどうやら誤作動していて、後になってカメラロールを見返すと、

めちゃくちゃブレブレの使えない写真が撮れていた、といったこと……

で、こちらの写真って、

基本ブレブレだったり意味がわからないものが写っているので消してしまうのですが、

ある日ふと写真を見ていて気づきました。

どの写真も、

言葉にし切れない、

「良さ」があると。

え？？良いっ！！良さがすごい！！いい躍動感だ。

ぬいぐるみなのになんか野生の荒々しさを感じます！文明社会に飽きたのか？

うん！良い！！得体の知れない良さがある。

多分手の中でうっかり撮れたものなんだけど神々しさがこの写真には！ある！！！！

ということで私、百瀬はこれらの写真を「はみ写」と名づけて愛でると決めました。

味わい深いと言いますか……何かしらのアートと言われたら信じてしまうようなカッコ良さ！！じっと見つめることでだんだん何かわかってくる面白さ。

そしてこれらの写真って「撮影者が意図していない写真」なんですよね。
カメラの誤作動であれ本人の誤作動であれ、撮影したくて撮った写真ではなく、撮影者の意図からはみ出ちゃった写真。特に撮る意図がなかった写真。

あ、老子が目指す無為自然とかじゃないですか？？これは！！！

で、そのような無為自然な写真がスマホという最新の機械からうっかり作れてしまうというのも面白い。

……でも、

私のこの感性、この感覚は、

本当に、合っているのか……？

世界初の「はみ写」鑑賞会

ということで、今日は有識者の皆さんと一緒に「はみ写」を鑑賞していきます。

……有識者なんですか、我々は？ ……え、なんの？

とりあえず写真を一緒に見ようと集められましたが。

そんな知らない言葉の有識者である自覚はない。

・百瀬ガンジィ　
イラストレーター、デザイナー。日頃から変な工作や記事もよく作っている。今回「はみ写」を提唱した張本人。

・山根シボル
WEBデザイナー。よく変なコンテンツやイベントをデザインしたり考えたりしている。

・岡シャニカマ
プランナー。仕事で性格の悪い変な企画ばかり出すのでよく周囲の人をざわつかせている。

・関根デッカオ
ライター。街中にある変な看板や落とし物が好きで、見つけたら勝手に妄想を働かせて写真と文に収めている。

有識者ですよ有識者。みんな日頃から特に変なものに触れてるし、一度は撮ったことあるでしょ、はみ写を。ちなみにはみ写と書いて、

「ハミーシャ」と読んでいきますね。

……は？？

ハミーシャ……。

我々もハミーシャと呼ばないといけないのか……。

よし、じゃあいつもなら消してしまってスポットが当たらない「はみ写」だけを改めて見ていきましょう！！！

※編集部注意
この先、百瀬が思いつきで提唱した「はみ写」を見て、4人があーだこーだ言っているだけの記事です。ぜひ頭をボ〜ッとさせて、リラックスしてからこの記事をご覧ください。

No.１「鉄板焼き屋のはみ写」

色々はみ写を用意しましたが、まずはベタなこちらから見ていきましょうか。

……いいですね。鉄板系のご飯やさんのようですが本来なら箸で摘んだものがしっかり見えないといけないのに奥がよく見えてしまっている……のはみ写です。

……コレはみ写に入れていいかわからないですね。これ、ピントが外れた写真ですよね。

え、つまりはず写(ハズーシャ)ってこと？

（笑）

でも人間の意図からは外れてますからはみ写では？本当は手前にピントを合わせたかったんですよ、この写真は。

そうね……ピントが外れてる割に対象が大きくていいですね。

う〜ん、モネとかドガなどの印象派が目指した表現って、多分こういうことなのかなって俺は思いますね。

……いや、多分違うよ？？

はっきりではなくぼやっと描くからこそ、自分の中に残っている印象に近い絵になるのがこの写真なんですよ。今、もう一度撮影者がこの鉄板焼きを思い出したとして、脳内に描かれるイメージはきっとこれになるはずです。脳で思い出してもはっきり描けないでしょ。だからこそこのボヤッとした印象派の「はみ写」を見た時、その時の記憶とリンクして感動できるんです。

つまり、撮影者はこの印象で食べてるってこと？「ぼやっとした味だな」って思いながら食べて、周りの方がはっきり見えていたと？

確かにこの奥の2人の服装がやたら目立つし、撮影者の印象としては本当にこんな感じになるかもしれない。

お酒を飲んでた可能性もありますしね。

だから周りの印象が強くてご飯を全然覚えてない、ということを伝えるのには最適な写真ですよね。

確かに酒を飲んでいる時のご飯の味、そんなに覚えてないですもんね。心象風景としては最適解なのかもしれない。

よし、そろそろ次の写真いきましょうか。

No.２「ジャージ2人のはみ写」

次はこちらです。こちらは学生っぽい2人が写ってますがよく見たら少しブレてるんですね。

うんうん、躍動感あるし色々見どころあるね。

色も鮮やかでいいし、偶然にも自然と合っているというか。

右上の腕にニコちゃんマークみたいなのがあるのも青春を感じさせますね。なおかつ左半分に文字を載せるスペースも確保されていて、広告写真として完成している。

なんかCDジャケットにもできそう。

そう！ ……ただ正方形だからちょっと懸念もあって。基本写真って正方形で撮らないじゃないですか。Instagramとかに投稿する用に加工してるのなら「人間の意図」が入っているのではみ写ではなくない？と思いまして……。この点については有識者の皆さんはどう思いますか？

俺ははみ写だと思います。Instagramとかにアップするために撮影設定とかをしていたと思うのですが、多分ちゃんと撮れたものと別でうっかり撮れちゃったものであって、これは人間の意図から離れた稀有な存在「はみ写」そのものではないでしょうか？

そもそもはみ写の普及はスマホなりインスタなりの登場で、安直に写真を撮れるようになってしまったから。だからこれもありではないでしょうか？

そうそう！あとこの上のニコちゃんマークなんですが、最初見た時はなぜか「介」という文字を反対から書いたように見えちゃいましたね。

違うメッセージが隠されてるってこと？

確かに左上からニコちゃんマークを描くのは難しいかも。……人に描かせた？

だから「介」っていう彼氏のタトゥーを入れている女子なのかなって。

（爆笑）

名前が「介」の彼氏！！「介」一文字って！！（笑）

このタトゥーを入れろって言った彼氏はヤバい（笑）

「介」は汎用性ありすぎる。でも、もはや「介」しばりの交際しかできない（笑）

No.３・No.４「犬のはみ写」

じゃあ次は……

なんでやろ、静止画なのになんだか目が回りそう……酔いそう。

こっちが地に足つかない感じ。

目が悪い人の裸眼の見え方のような……ギリギリ犬ってわかる。人間の認識能力ってすごいな。

なんかこのポメラニアンが生きているようにも見えないんですよね……

……霊魂ってこと？（笑）

霊魂というかね……過去にいた犬？

比較するものが限りなく少ないから犬だけにフォーカスしてる感ありますね。

そう、なのでかつてポメだったものが光に向かっている。

かつて……。

異様に影も長いし。……あ、コレもう一枚同じ時に撮った写真ですかね。

……よっぽど写真が下手？？ブレがすごすぎる。

さっきの写真はリードが確認できず大丈夫かなと思いましたが、コレはリードちゃんとつけてますし、ペットのトイレ用袋も持ってる。良かった、マナー違反じゃなくて！

つまりこれは２枚セットで初めてわかる画像なのか。

これ多分暗いからシャッタースピードがおそなってこうなってるんでしょうね。

夜ははみ写が出やすいってことか。

犬種はポメラニアンってすぐわかるのに、この人間の人が果たして若い方なのかおばさんなのか全然わからないのがすごいですね。人間の方が情報量が多いはずなのに。

オーバーサイズ全盛とあって、多くの人間は体型を隠せますしね。逆にポメラニアンは素っ裸だし。

確かにそうか。裸ならわかるか。

しかし、そんなに早く動いてないのになんでこんなにブレるんだろう。撮影者がスマホを動かして撮っていた？ 2枚もはみ写を作ってるんですよね、短時間で。

Googleとかで「ポメラニアン　写真」で検索してもこんな写真は出ないですよね。人がカメラを持つことでしか撮れない。人為的に撮ろうとせず、はみ出さなければ撮れない写真っていう意味で価値は高いのかなって思います。

この写真をもとにAIが鮮明な画像を生成する逆転現象も起こりうるかも知れませんね。で、この人もAIによっておばさんってことがわかったり。

なるほど……！（みんな、私一人では辿り着けなかったはみ写の楽しみ方をしているな）

No.5「駅のはみ写」

……すごい。これは本当にゴミ写真だ。

これ、多分国外。アジア圏の国ですかね。別れた友人を撮ろうとして？

……あ、手前って動いてる電車？これ、電車の車窓から撮ったものか！駅で別れた人とバイバイしようとしたら思い切りタイミングが悪く撮れてしまったって感じか。

ちゃんと連写できてたらいいけど。

俺としてはよくこういう写真撮ってしまうからこれが車内ってすぐわかったんですよ、窓ガラスも反射しているし、こうなるよねって共感できたというか。でも山根さんはわからなかった。

うん、やっぱデザイナーを長くやってるし、普通画角の真ん中にあの窓枠入れないよ、とは思ってしまいました。

山根さんってデザイナーで美意識高いし、窓ガラスに反射させたりせずに写真撮ると思うんでこういうミスに見慣れてないのかと。そういう意味で撮影技術・知識のレベルを判定する試験に使えるなって思いました。

なるほどね。……私はデザイナーとして技術がまだまだだし、共感できてしまう。よく窓ガラス反射させちゃうし。

美的センスが低いから窓枠で人が被るってこと？

これ、デザイン事務所の面接とかで使えるんじゃないですか？ 5秒だけ見せるからこれなんの写真か当てて、って言ったりして。正直美的センスはないけど考察力がすごいから、君はプランナー向きかもね、とか。

う〜ん、大画面で見ているからだと思うのですが、僕、主役はここの笑顔の女性だと。

……え？

……ほんまや！

窓に撮影者が映り込んでる！！

これ、うまいこと外の手を振る人と撮影者が映るようにしたかった写真、とか？

テレビのワイプ的な使い方ってこと？

この2人のアリバイはこの写真一枚で成立してますね。

これ、事件が起きたら鑑識がいらない写真として扱っていたところから主人公が拾ってきて……刑事ドラマとかでよく見るやつ。

この後この車両で殺人事件が起きても2人はこの駅にいたと言えちゃう。

「HERO」みたいにキムタクが最後までこの写真を気にしていて「なんか、おかしいんだよな〜〜」って言いながらこの写真をマウスでカチカチ拡大していって「あ、この人この時車内にいるじゃん！」ってなる展開……！

これはある種、画素数の勝利ともいえますね。

確かに、昔の携帯とかでは確かにここまで見えなかった。現代のスマホで撮れちゃった「はみ写」だからわかったと。

うわ、想像以上に高度な写真だったんだ……。

まとめ

という訳で今回の鑑賞会はこの辺で終了。タイムアップです。

本当はもう少し色々なはみ写を見ていますが、記事の文量的にはみ出ちゃいそうなのでこれで終了です！ ……はみ写だけに。

今回の鑑賞会の参加者にどうだったか聞いてみたところ、

想像力が試されるだけに情操教育とかにもよさそうだし、飲みながらやったらめちゃくちゃ楽しいやつですね。

2、3歳の子供が雲を見て「〇〇に似ている〜」っていうやつに近くて面白い。

本来消すような写真でコレだけ楽しめるのがすごいことですね。エコですね。

楽しかった〜。自分が言い出しっぺなんだけどみんな想像以上に盛り上がってたからびっくりしてる。

と百瀬の暴走で始まったにもかかわらず、みんな肯定的かつ楽しめたようです。良かった〜！

写真の構図に人の意図がなく、どの写真も極端なぼけかたをしていますし、想像で補完する余地があるから、見ている人それぞれの視点で話が盛り上がります。大喜利のような、ルールがとっても緩いボードゲームのような楽しさでしょうか。写真によっては時々謎解きのような方向に舵を切ることも。

これをご覧の企業の人事担当の方、グループディスカッション研修とかで使っていただいても一向に構いませんので！多分盛り上がるから！あとタダですし！

とはいえ、我々の「はみ写道」も今始まったばかりですし、解釈や気づきもまだまだ浅いものです。
もし、今回の写真で私たちが気づけなかった視点や考察などございましたら教えてくださいね！

いや、もっと色々なはみ写を見たいし、いっそ皆さんも偶然はみ写が撮れてましたらぜひお送りください！もし一定数集まったら次回記事に使わせてもらうかもしれません。

そんな、普段だったら消去してしまうような写真ばかりを集めたはみ写の鑑賞会でした。
それでは！！

……すみません。まだちょっと終わってませんでした。

上の4人の写真とアイコンはわざわざカメラマンにブラしてもらって撮ったもので正式にははみ写ではありません。
なんか、つい、はみ写みたいな写真が撮りたくなって撮っただけです。

はみ写鑑賞をする際は「うっかり撮れてしまったはみ写」が撮れるのを待つ。
もしくは友人にはみ写はないか声をかけて集めて遊んでくださいね！

それが今回提唱しました「はみ写」なので……！

では。
今度こそ、さようなら！

編集：人間編集部
写真：納谷ロマン