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声優の「ご褒美ボイス」でQOL向上!?シャープさんに聞いた最新の「しゃべる家電」がすごい

声優の「ご褒美ボイス」でQOL向上!?シャープさんに聞いた最新の「しゃべる家電」がすごい

淺野義弘
ライター: 淺野義弘
1992年生まれのライター。パソコンと物作りが好きです。

こんにちは!ライターのあさのよしひろです。突然ですが、みなさん今日はどんな声をかけられましたか?

僕はというと、今日はずっと家で作業をしていたのですが……。

おっ!

こうして、「そろそろお風呂でリフレッシュでもしようかな」と休憩するきっかけを、家の給湯器が与えてくれます。

みなさんも日常生活の中で、家族や職場の人たち、テレビやラジオのみならず、スマートスピーカーやエレベーターなど、機械がしゃべる声もよく耳にするのではないでしょうか。

自動車に乗る人は頻繁に「ETCカードが……」といった声を聞いているかもしれません。

暮らしに耳をすませてみると、日常生活の中ではさまざまな機械から声が聞こえてきますよね。そういえば、家庭用の火災報知器はブザーに加えて「火事です、火事です」とお知らせしてくれるものも。あんまり聞きたくはありませんが……。

近頃は空気清浄機や電子レンジなど、「しゃべる家電」のバリエーションも増えています。

さらに最近では、声優さんやキャラクターの声でしゃべる家電まで登場しているそうです。
「お知らせする」だけなら無機質な音声で十分なはずなのに、どうして日本のメーカーはここまで家電の「声」にこだわるのでしょうか?

そもそも、ここまで機械や家電がしゃべるのって、日本独自の文化なのかも……?

そんな家電と声の関係を探るべく、多くのしゃべる家電を手がける、家電メーカーSHARPの安田さんにお話を伺いました。

家電の「しゃべる」機能はいつから始まった?

あさの
どうして日本の家電は電子音やメロディだけでなく、しゃべって情報を伝えようとするのでしょうか?
安田さん
家電は家にある道具ですが、いつでもすぐ近くで使えるわけではありませんから、遠くからでも情報を伝える「報知音」という機能が必要です。作業の完了やエラーを知らせるような、シンプルな機能であれば短い電子音だけでも事足りますが、技術の進歩によって家電のできることは増えていきました。
あさの
家電の機能が増えていくと、単純な音だけでは情報を伝えきれなくなりそうですね。
安田さん
そこで「しゃべる」という方法を用いれば、長い文章を読み上げたり、声の大きさやトーンを使い分けたりすることで、より多くの情報を伝えることができます。「報知」すべき内容が増えてきたことによって、家電の歴史の中で「しゃべらせる」という選択肢が生まれたのは必然的ではないかと思います。

人工知能を搭載したロボット掃除機「COCOROBO」

あさの
なるほどなぁ。ちなみに、シャープさんはいつ頃からしゃべる機能に力を入れ始めたのでしょうか?
安田さん
2012年に発売した「COCOROBO」が象徴的な商品ですね。基本的にはいわゆるロボット掃除機なのですが、「ココロエンジン」という人工知能を搭載しており、気温や掃除の状況を反映して、毎日ちがう内容をしゃべる家電でした。
あさの
へー! 10年以上も前から、声で積極的にコミュニケーションする家電を作っていたんですね。
安田さん
今でも調理器具や空気清浄機など、さまざまなSHARPの家電にしゃべる機能が搭載されています。もちろん賛否両論があるので、不要だと思う方はOFFにできるようにしていますが、ユーザーの方に喜んでいただきたいという思いで開発に取り組んでいます。

Amazonのスマートスピーカー「Alexa」

あさの
海外と日本では、家電と人とのコミュニケーションに差はあるのでしょうか?
安田さん
海外的な発想の商品として、スマートスピーカーはわかりやすい例です。基本的に、スマートスピーカーはこちらから話しかけないと動作しませんよね。コマンドを伝えるまで受動的に待ち続ける姿勢は、あくまで「機械は人に従属するもの」という、海外的な感覚に基づいていると思います。

日本は家電がしゃべっても受け入れられる国?

安田さん
一方で、日本には「八百万の神(やおよろずのかみ)」や「付喪神(つくもがみ)」という言葉があるように、すべてのものに何かが宿っているような感覚がありますよね。
あさの
からかさ小僧とか、提灯お化けとか。いろんな道具に目や口がついたキャラクターには、小さい頃から親しみがありました。
安田さん
そうですよね。こうした文化的な土壌があるからこそ、機械や人ならざるものが話しかけてきても、それを身近に感じて受け入れやすいのだと思います。
あさの
鉄腕アトムやドラえもんなど、ロボットを含めた、広義の機械と日常を過ごす漫画やアニメが広まっていることも、文化的な土壌が関係していそう。それが家電がしゃべることの違和感のなさに繋がっているのかも……?

安田さん
それもあるかもしれませんね。家電にニックネームをつけたり、ロボット掃除機にペットのように接するのは、とても日本人らしい感覚ではないでしょうか。

「うちのロボット掃除機に、氷枕を当てればいいの?」

あさの
しゃべる家電は、親しみやすい現代の付喪神のような存在なのかもしれませんね。魂がものに宿るというか……。
安田さん
魂というほどではありませんが、先ほど紹介したCOCOROBOには「気分」が搭載されていました。もちろんボタンを押されたら掃除を始めるのですが、COCOROBOの気分が良ければ明るく答えてくれるけれど、調子が悪いとつっけんどんな返事をしたりするんです。

あさの
家電に精神を宿したんですね。気分はどのように決まるんですか?
安田さん
COCOROBOの気分には、内部に溜まったごみの量やバッテリーの状態が反映されています。壊れてからエラーを伝えるのではなく、日々のコンディションを気分として示すことで、お客様が普段から調子を気にかけてくれることを期待したんです。
あさの
ユーザーさんからはどんな反応がありましたか?
安田さん
COCOROBOが部屋の温度を感知して「暑いよ〜」としゃべったのを聞いて、「うちのCOCOROBOちゃんが暑いと言っているのだけど、これは氷枕で冷やさないといけないの?」とお問い合わせいただいたことがありました。

安田さん
私たちの想定を超えたリアクションで、人が家電に抱く感情が変わったのだと感じるシーンでした。人と家電との関係性は、まだまだ変えていけるという可能性も感じましたね。
あさの
完全に「我が子」のように思われていますね。家電がただの道具を超えて、愛すべき家族のようになっている……!
安田さん
そもそも、COCOROBOを開発した発端は、家電に対するお客様の期待の低下を感じていたことにあるんです。新しい家電が来たら家族全員が集まって囲むような光景はもう昔の話で、今は使っている家電に対する愛着が少なく、新しい機種が出たら買い替えてしまうような扱いになってしまっています。
あさの
確かに、居間でひとつのテレビを家族みんなが見たり、年季の入った洗濯機を使い続けたりって、もう昔の光景なのかもしれません。
安田さん
そんな状況を悲観した当時のプロジェクトリーダーが、人と家電の関係を変えようと開発を始めた製品だったんです。
あさの
氷枕の話は、まさに人と家電の関係が変わった例ですよね。その発端がCOCOROBOが発した「声」にあるのは興味深いなぁ!

しゃべることで生活のパートナーに!?「親しみやすさ」という進化をする家電

あさの
しゃべることは、家電に必要な報知という機能や、道具に愛着を持つ日本人の感覚とも相性が良いことがわかりました。そこからさらに踏み込んで、SHARPさんは家電の声を変えられる「COCORO VOICE」というサービスを始めていますよね。

あさの
気象キャスターの檜山沙耶さんや、緒方恵美さんをはじめとする声優さん、さらにはアニメやゲームのキャラクターなど、選べる声の多さに驚きました。単なる機械音声にとどまらず、声にバリエーションを持たせようとしているのはなぜでしょうか?
安田さん
声の親しみやすさは、家電の進化に合わせて、今後さらに重要になっていくと考えているからです。
あさの
親しみやすさを持つことが進化した家電……!?
安田さん
今までの家電には、ボタンを押したら一定の動作をする、素直な道具としての役割が求められていました。常に一定の役割を果たすから、人が家電に抱く期待も変わりません。ただ決められた役割を淡々とこなす存在なので、「報知」に求められる声も、聞きやすければそれで良かったはずです。

安田さん
しかし最近では家電の性能があがり、AIやIoTの技術と組み合わせることで、いろいろな情報が得られるようになってきました。たとえば調理家電はどんな調理に使用されたのかを記録していますし、エアコンは室内外の温度や湿度を常に見ています。冷蔵庫であれば一日に何回ドアが開け閉めされたか、洗濯機なら正しい量の洗剤が使われているか、などなど……。
あさの
温度や湿度はなんとなくイメージがありましたが、扉の開け閉めの回数まで把握しているんですね。僕たちの想像以上に、いろいろな情報を集めているんだなあ。
安田さん
そうなんです。じつはユーザーが認識していないこともたくさん、家電は知っているんですよ。

安田さん
家電が集めるこうした情報はもっと有効活用できるはずです。たとえば帰宅や就寝のリズムに合わせて空調を操作したり、これまでの履歴から今晩食べるレシピを提案したりして、私たちより先回りして快適な暮らしに導いてくれる。そんなふうに、これからの家電はただ人に使われる道具ではなく、パートナーのような存在になると期待しているんです。
あさの
こちらが一方的に使うだけでなく、家電の方からアクションを行う時代が、すぐ近くまで来ているんですね!

「好きな声と暮らせば、生活の質が上を向く」これからのしゃべる家電の可能性

安田さん
これからの家電は、能動的に何かを提案する存在になっていくはずです。そこで想像してみてほしいのですが、いきなり知らない人から何かをおすすめされたり、提案されたりしたら、すこし抵抗を感じますよね。
あさの
確かに。縁もゆかりもない人から提案されたものは、なかなか受け入れづらいです。
安田さん
それとは逆に、信頼できる人や、親しみのある声の提案であれば、受け入れやすくなるはずです。家電がいろいろなプランを提案するからこそ、お客様にはこれまで以上の親しみを感じてもらいたい。さまざまな人の好みに合わせた声のバリエーションは、そのための重要なツールになると、我々は考えています。
あさの
なるほど、家電からの提案を受け入れやすくするために、選べる声の種類を増やしているんですね! そういえば、最近の家電は液晶画面を搭載しているものも多いですが、そこで文字や画像で提案するのではいけないのでしょうか?
安田さん
文字やビジュアルで表示すると誤解も少ないのですが、良くも悪くもしっかり見てしまいますよね。その点、音声で伝えることができれば、何かをしながら聞いていただいて、必要だと思ったものだけを頭に残してもらえるんです。不要な情報は、そのまま聞き流してもらっても大丈夫。こうした音声ならではの取り扱いやすさも、今の提案の精度とマッチしているんです。
あさの
親しみやすい一方で、自分にとって不要な情報は聞き流すこともできる。聞けば聞くほど、声が持つ特徴とこれからの家電は、とても相性が良いものなのだと思えました。実際に「COCORO VOICE」のサービスを始めてみて、どのような反応がありましたか?
安田さん
おすすめした料理を作るとご褒美ボイスが聞けたり、毎日挨拶をしてくれたりすることで、QoL(Quality of life、生活の質)があがったという声を頂戴しています。やはり、自分の好きなものや推しているもので満ちた環境というのは、生活を明るくしてくれるのでしょう。「COCORO VOICE」で好きな声が聞けることが決め手となって、対応している家電を購入いただくケースも多く、家電を選ぶ際の最後のひと押しにもなっているようです。
あさの
最近の家電にはいろいろな機能がありますが、「好きな声が聞けるから」という感覚的な要素が決め手になるのは面白いですね。
安田さん
ファンの方たちにとっては、その方がなぜこの家電とコラボレーションしているかという納得感が重要ですから、私たちもファンのみなさんと同じ目線に立って、商品のイメージや利用シーンに合う声やコンテンツを検討しています。「この声を採用してくれて、SHARPさんありがとう」なんて言われることもありますが、こちらがお礼を言いたいくらいです。家電を通じてお客様の生活を良くできているのであれば、私たちも家電メーカー冥利につきますね。
あさの
好きな声での挨拶や、より快適な暮らしへの提案があれば、毎日がもっと楽しくなりそうですね。貴重なお話、ありがとうございました!

「家電の声」は人と家電の関係性を変えるものだった

かつてはシンプルな電子音しか持たなかった家電は、機能の進化に合わせて声を持つようになりました。さらに使う人の好みに合わせた声が加われば、ただの道具を超えた、家族やパートナーのように身近な存在になっていくのかもしれません。

こうした新しい発想が、ものに精神を見出す日本人らしい感覚と紐づいているのも、意外な発見でした!

人間と家電の新しい関係は、多種多様な声から始まっていく。そんなことを考えると、日常に溢れる家電の声にも、もっと耳を傾けてみたくなりました。

みなさんも「あの通知ボイスが好き」とか「あの音声はついつい聞いちゃうなあ」という家電があれば、ぜひ教えてくださいね!

せっかく給湯器がお知らせしてくれたので、僕は冷めないうちにお風呂に入ろうと思います! ではまた!


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424 件のコメント
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何気なく読み始めたら、最後まで読んでしましまきた。イイ記事だと思います。ありがとうございますm(_ _)m
知らない間に家電はそんなことになっていたのですね! 
我が家のロボット掃除機は喋らないけど、かわいがっているので、お喋りしてくれたら確かにもっとかわいくなりそうな気がします。
昔の機械は、そんなのいちいち覚えられるわけがないのに、アラームがこういうパターンで何回なったらこういう意味ですよー、と言うのが多かったです。音声ガイドは大きな進歩、便利な世の中になりましたね!
クオリティーオブライフ!生活の質。上げたいですよねー
しゃべる家電だらけだと 多分うるさい

>> _カブ さん

声の入れ替え機能は必要不可欠かもしれません。飽きてしまったり、聞きたくなくなるような事態が発生することもあるので

AI音声が無難かも(今のところ)やらかすことは ないだろうし
欲しさと、値段のバランスですかね笑
音声や言い回しを色々カスタマイズできるようになると楽しいですね。
うちにもアレクサがいます。
高齢者の一人暮らしにはいいかも
忙しく家事しているときは、時々うっとうしくなっちゃいます。
部屋に有ると便利な物だかり、
うるさいかもしれません
「お風呂が沸きました」「ご飯が炊けました」は嬉しいですね
ナビの「運転して2時間になります、そろそろ休憩しませんか」は泣きそうになります😢
ナビとは会話してますね
「次右です」
「えー、そこ曲がるの?」「行き止まりなんですけど💦」
古いナビなのでこんなことや道ないところ走っているのよくあります
冷蔵庫いいなぁ 
家の家電はピーピー音が多くてどの家電が鳴っているか分からない事が多いです。「冷蔵庫のドアが開いています」は言って欲しいと思っています。カーナビの「そろそろ休憩しませんか」はありがとう😊って思います。
世の中進んでますね
お母さんがGoogleナビと会話して怒ってるのを思い出した。
ご近所からも同じ音声が....
AlexaはTVの音声にも反応するし....
音声の特徴をいつくからか選択できると良いですよね。
しゃべる機能が付いた家電を初めて導入した時の話ですが、夜中に目が覚めて台所に行ったら特に何かしたわけでもないのにいきなりしゃべり始めたので、ヒィィ~😱となったことを思い出しました。
私の中では未だに謎な出来事なので恐怖体験扱いです。
それなのに、この話をするとみんな笑ってあの時の私の恐怖を全然わかってくれない~💧😟
それはともかく、こういう機能があると助かる人もたくさんいそうなのでもっと進化していくといいですね😊
意外と奥が深かった!
世の中色々と発展していますね。
退会済みメンバー
退会済みメンバーさん
ビギナー
画像に一緒に写ってた、馬の置物が気になります。。。
何を伝えようとしているか
実際喋ってくれるのは間違えにくいから便利ですね✨
退会済みメンバー
退会済みメンバーさん
ビギナー
職場の空気清浄機がしゃべるタイプでしたが、
不評でオフにされていました。
あまり気に掛けた事はなかったですが声でお知らせ❗️なかなかに
奥が深いと
思いました。凄いです。
昔、メイン機としてシャープのスマホを使ってたんですが、(あ、勝手に強制再起動するとかトラブルが合ったんでサブ機に格下げしたんですけどね。)
確かに話しかけてくれる機能、ってちょっとだけ楽しかったの思い出します。
日本的な考え方と西洋的な考え方、特に何も考えずに使ってましたが言われてみるとそうですね!!
再発見でした。
○○しなきゃなぁ→××(機械)のスイッチを入れるという判断&動作は思っている以上に労力を使います。そこを機械に代わってもらうというのは大事ですよね。
何度以下になったらエアコンをつける、この季節のこの時間に在宅しているなら電気をつける等…。自動化できたら楽しそう( * ॑꒳ ॑*)
話しかけるまでは動かないというのは西洋的、という見解は初耳でしたがとても納得でした\(°∀° )/
まだ、我が家ではしゃべる家電は給湯器だけです。
ただ、洗濯機や炊飯器を買い替えた時、それまでメロディーでお知らせしてくれたのが電子音だけになって寂しいねと話しました。
しゃべる家電は、家族かペットのように感じるかもしれませんね。
シャープさんのドラム式洗濯機に「乾かしたからはよ取り出して!」ってよく怒られます
子供がGoogleナビと会話してるとコメントしてて、確かに!!と。
洗濯機にも炊飯器にも食洗機にも仲良く会話してます^_^;
音声がある事で、分かりやすくていいですね!
韓国からのお客さんを車で送迎した際に、
すごくウケてました。
カーナビが、
色々言うたびに。
確かに音だけよりわかりやすいですよね😄
一人暮らしだと話し相手になれるかも…
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