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第二次ワープロブーム到来!? 3年で販売価格が倍になったワープロショップを直撃した

第二次ワープロブーム到来!? 3年で販売価格が倍になったワープロショップを直撃した

辰井裕紀
ライター: 辰井裕紀
ローカルネタ・ガジェット・卓球が好きなライター。過去に番組リサーチャーとして秘密のケンミンSHOWなどを担当。

1980~1990年代に隆盛を誇ったワードプロセッサー(ワープロ)

その名の通り、主に「文字入力」に特化した電子機器で、原稿・レポート・チラシなどの作成や、表計算などの機能を担いました。

しかし、より多くの機能を扱えて拡張性もあるパソコンが普及すると衰退。2000年を最後に新機種は販売されなくなり、2003年で製造終了に。

そして各社のサポートも終了していき、長らく残っていたシャープも2014年に相談窓口を閉鎖。ワープロは過去の遺物になったように思えました。

1997年発売のセリエ MR-2。発売元のシャープは後年までサポートを続けていた一社だった

しかし2022年、ワープロは今も多くの利用者を抱え、さらに需要が増えてきたとの話があります。ごく一部では「第二次ワープロブーム」到来とも語られているほど。

実はまだ日本にワープロショップは全国にいくつか点在しています。

そのうちの一つが、愛知県名古屋市に近い、あま市にある。かつて日立製作所でサポート業務にあたっていた服部進さん(75歳)が店主を務める、その名も「ハットリック」。ワープロ販売と修理を主に行っています。

なぜワープロはいまだに使われているのでしょうか? 気になるその話を聞きました。

情報漏洩対策で需要アップ?

——お店に入るやいなや、すごい! 何台あるんですか?

服部500台の在庫がありますね。

——ワープロって今でも売れているってホントですか?

服部:売れています。ウチでは3000人のお客さんがいるからね。リピーターの方も多いよ。

——そんなに……! どんな客層が多いですか?

服部:一般のお客さんが8割で、法人が2割です。

——ワープロを使い続ける一般のお客さん、たくさんいますね。

服部:目立つのは、自治会や町内会の書類とか、挨拶状を作りたい人だね。

——日常づかいのアイテムだと。

服部:住所録に加えて、家系図を作る人もいるよ。これがワープロで書かれた、ある歴史的に有名な血筋の家系図ね。

家系図の一部(モザイク処理済)

——こんな記録もワープロで……?

服部:まだまだ、横にずーっと続いているよ。膨大な記録なので今さらパソコンに移植するのも大変だしね。

——いきなりワープロ界の深淵を見た気がします。法人さんはどうですか?

服部:弁護士、法律事務所、それから旅行社とか。

——なぜ使うのですか?

服部情報を漏洩させないためにです。

——ええ?

服部:3台を同時に買っていた会社に聞いたら、「インターネットにつながらないからセキュリティ的にいい」んですって。

——なるほど、ハッカーには襲われないわけですね。

服部:さらに一番よく目立つのは、お寺です。

——お寺さんなんですか、なぜ? 

服部檀家の資料がすべて入っているから。

——そうか、パソコンに移植できない?

服部:最初から移植する考え方はないので。俺らならテキスト変換とか、何かできないかと考えるけど、多くのワープロユーザーにとってその考えはないんです。

1998年発売、富士通のOASYS LX-9500SD。すばやく入力できる「親指シフト」を搭載していて今でも一部に熱狂的な人気がある。ワープロソフトのOASYS V10は2021年まで販売が継続され、2024年までサポートが残る

——そのまま使い続けようと。

服部:ええ、今から新しくパソコンを覚えて書き直すのは大変ですから。

——ちなみに、小説家が愛用するイメージもあります。

服部:それは2~3件かな。

——じゃあレアですね。ちなみに有名な方でした……? 

服部:世間で名前を知られている方もいたよ。

——お客さんの年齢層はどうですか。

服部メインは70~90代のお客さん。「これじゃないとダメ」というお客さんがいるから。

——若い人はどうでしょう。

服部:たまにいるね、40代で会社にあるから使っているとか。個人のお客さんは少ない。

(撮影時のみマスクを外しています)

——そもそもワープロショップをはじめるきっかけは何でしたか。

服部:20年前まではパソコンの修理工場兼パソコン教室だったんだけど、「ワープロが壊れたからパソコンを教えて」っておじいさんが来て。

——じゃあ、パソコンを教えたんですか?

服部:いえ、その前にワープロを見たら、かんたんに直っちゃって。そこから新聞に三行広告を出してワープロ修理をはじめたら、たくさん人が来てね。さらに、インターネットショップもはじめたんだ。

——意外な鉱脈を見いだしたわけですね。

服部:パソコン修理より、ワープロのほうがもっと単純だしね。

ワープロの価格は3年で倍に!?

——価格帯はいかがですか。

服部:3~7万円ぐらいまで。高いのは人気の機種とか新しい商品とかだね。最近は価格が上がっているよ。

——パソコンって10年経つと価格はがた落ちですけど、逆に上がっているんですね!

服部:そうそう。需要が高まっているのと、ワープロがだんだん減ってきたのもあって、3年で価格は倍くらいになりました。

——なぜそこまで急激に上がったんですか?

服部:人気があるからだよ。4~5万円くらいのものが一番売れるね。

——ちなみに、ご自身はワープロをどれくらい使っていましたか。

服部:5年ほど使いました。今は使わないけど、文字を打つだけならワープロのほうがいいと思う人も多くて。

——なぜですか?

服部すぐ起動して、すぐに文字を打てて、すぐに印字した紙を出せるし。あと、ユーザーは操作に慣れているからね。

——パソコンだとちょっと起動で待たされますからね。かんたんにネットにつなげないからこそ、書くことに集中できそう。

知られざるワープロの世界

——ワープロってデカくて重いイメージですが、こんな軽い機種もあるんですね。

文豪 MINI5UJ。同シリーズには充電式ニッカド電池や、単三電池で動くモデルもあった

服部:電池が内蔵されていないけど、コンセントさえあれば使えるわけ。でも電池内蔵型ワープロもあったんですよ。

——へえ! 

服部:日立やリコーが出していて、電池は5時間くらい持ってくれた。ただしその代わりにプリンターは別だったよ。

——当時、Windowsを搭載しているワープロもあったそうですが……

服部:ビジネス用には多かったね。Windows3.1とか、95とかとセットになっていた。

——ビジネス用となれば、WordやExcelもつくんですか。

服部:昔は各社独自のワープロソフトや表計算ソフトが入っていたよ。

——互換性がないのでは?

服部:テキストに変換すればいいんだけど、面倒だからそこまでやる人はいなかったな。

——とすると……みんな同じ機種でそろえるとか? 

服部:そうそう、それなら互換性の問題はクリアできるから。

当時全盛の表計算ソフトLotus 1-2-3を入れたワープロも多かった。これはPC-9800シリーズ用MS-DOS版

——後期は先進的な機能を備えたワープロがいろいろ出てきました。

服部インターネットもあるし、テレビのついたやつもあります。

——アンテナにつないで見られる?

服部:そう。だけど、いま多くの人は文字入力とかの基本機能ばかりを使うね。

——ふつうにPCを使っている方など、少しワープロに興味出てきた方にとってのオススメの一機はありますか。

服部:ハードディスクのついた東芝の一番新しいやつ、RUPO JW-9820だね。

1999年発売、RUPO JW-9820。LUPOの最上位機種にして、表計算ソフトLotus1-2-3を搭載。電話回線でインターネットもできる

——ちなみに、ゲームソフトもあったそうですね?

服部いろいろあったよ。テトリスとか倉庫番とか、AI将棋とか、麻雀ゲームとか……。これはゲームのフロッピーディスクだよ。

“移植されまくりゲーム”こと「ぷよぷよ」はワープロ版まで出ていた。「トランプワールド」は12種類のカードゲームが楽しめる

——ちなみに、当時タッチタイピングできる人はどれだけいたんですか?

服部:今でもタッチタイピングしている人はあんまりいないと思うよ。

——意外です。

服部:ローマ字入力やる人は1割いなくて、ほとんど、かな入力。あいうえお順のキーボードもあったから。ただ、親指シフトを使っている人は速いよ。

これが親指シフトキーボード搭載機。下部に「親指左」「親指右」キーがあり、ほかのキー配列自体も違う。ハットリックでもほかの機種より5,000円ほど高い

——今でも使っている人がいると聞きますね。

服部:ただ、いわゆる“親指シフター”は全体の5%もいないね。でも機種が希少化していて、熱狂的に搭載機種を探し求めているよ。

部品の入手が難しく徐々に修理困難に

——ワープロはみんな古い中古機種ですから、修理が欠かせませんよね。故障で多いケースベスト3はなんですか。

服部液晶の故障が一番多くて、あとはフロッピーディスクドライブとプリンターがよく壊れるね。

——どれもよく使う機能で、困っちゃいますね。

服部:液晶の故障で一番ひどいのはこれです。「ビネガーシンドローム」って言って、これは修理が難しいんだ。

修理が難しい、「ビネガーシンドローム」という状態。液晶にダメージを受けていて、服部さんも「修理は成功しないかもしれない」とお客さんに伝える。ひどいと10~20%の修理成功率しかないことも

変色している液晶ディスプレイ

服部:この色が変わった画面も、なかなか直らなくて。透過率の高いパネルが不足しているとかの問題でね。ワープロの部品は今、なかなか入手が難しいのよ。

——部品、入手困難でしょうね……

服部:なかなか新品がないから、ジャンク品から外して使うしかないんです。中国でまだ製造しているパーツもあるが、それすらも減っていて。

——中国ではまだ生産している?

服部:フロッピーディスクやインクリボンもインクタンクも、みんなメイド・イン・チャイナです。

——修理、大変ですね……!

服部:でも、いいこともあるよ。修理ができれば、ネットオークションでジャンク品を買って、直せば販売できるから。

——昔のものですから、壊れたワープロは多そうですね。利益率は高そう。

服部:ただ、それも故障したところがわかるからできる。わからない人は絶対わからんからね。

人生の集大成をワープロで記す

北海道や沖縄まで出張サポートすることもある

——ウン十年前の中古品を6ヶ月保証するのもすごいですよね。

服部:だからこそ、多くのお客さんがリピーターになってくれて。「俺が死ぬまではこれを使い続けたいから、頼むよ」とかも言われるよ。

——もはや頼みの綱ですね。 

服部:お客さんにとってワープロは、命の次に大事だもん。

——そんなに?

服部この前、黒のベンツがダーッと店に来て、何かと思ったら、点滴を引きずりながらやってきて。「これをずっと使い続けたい」と修理に預けてくれてね。

——「一生使い続けたい」という思いが伝わりますね。

服部:病院は暇だから、そんなときこそ文字を打ちたいんだろうな。

——なんか小説とかも書きたくなりそう。

服部小説や自伝を書いたり、会社の社歴を書く人が多いよ。

——もしかしたら本を出版される方も……?

服部:うん、何冊か本を送ってくれた人もいるね。

——人生の総決算を記す道具と考えれば、重みが出てきましたね。

ハットリックが訴える「ワープロ使用時の注意」。連続使用は約2時間が限度など、気づきにくいことも

「あと3年で閉店」宣言は撤回の予感?

——ワープロの仕事で大変だったこと、うれしかったことはなんですか。 

服部:その両方とも感じられるのが修理かな。骨が折れるけど、お客様の動かんやつを直したときは、喜んでくれるしね。2万円の修理でも、「5万円の領収書を切ってください」って言ってもらって。

——それだけの価値を感じていらっしゃるんですね……そんな日本のワープロは、どんな役割を狙ってきたと思いますか。

服部:まず、文字を書くのに漢字辞書がいらなくなりました。

——そうか、変換してくれるし。

服部:あとは、活字だと読みやすい。レポートとかも作りやすくなりますね。何十枚も印刷して配れるし。

——手書き時代からすれば、書く、印刷する行為を、3段跳びくらいに進化させたのがワープロだったんですね。

最後に発売されたワープロと言われるWD-CP2(シャープ)。2000年2月発売、2003年9月に製造終了。コンパクトで今も愛用する人が多い

——服部さん、ホントにお元気ですよね。今のモチベーションは何ですか。

服部:おかげさまで、「おたくだけが頼りだ」っていう人がよくいるわけ。75歳だけど。周りには「大阪万博のある2025年で閉店する」とは言っているけどね。

——でもこの盛況ぶりじゃ、あと3年じゃすまなそうですね。

服部:実は東京オリンピックのあった2020年で終わる予定が、もうすでに延びているからね。

——今回も引退撤回の予感がします(笑)。

服部:わからんけどね、元気なうちはやるけどさ!

編集:ノオト


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238 件のコメント
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退会済みメンバー
退会済みメンバーさん
ビギナー
すごい、ブームなのですね。
すでに処分してますが、😅
なるほど、面白いですね!
30年ぐらい前、シャープの書院購入しました。 結構便利でしたよ。
 t
カクカクした印刷の文字を思い出して懐かしくなりました。
vou
vouさん
レギュラー
情報をありがとうございます。懐かしい
デスクトップ型(!)の日立ワードパルを親に借りて、講義のレポートを書いたりしたことが懐かしいです。まだWithMeに代わる前で、小さなモノクロのブラウン管が電子ペーパーのような優しい色あいだったような。
すぐにパソコンを購入したので短期間でしたが、思い出に残っています。
 拘る人は万年筆と原稿用紙じゃないと魂がこもらない、なんていう方もいそうですが。
ワープロ!懐かしいです!
大阪万博の時に町のワープロ修理屋さんが店じまいするのも、趣きがありますね。
そうは言っても、続けてもらわないとお客さんも病院からまた修理屋さん探さなくちゃならないけれど。
自分は触ったことないですが
この記事はおもしろかったです
機会があれば触ってみたいですね
ありがとうございました
ワープロ、、、!懐かしいですね
懐かしいー!って声に出してしまいました。
懐かしいですね!
ワープロ大好きです。
レトロな雰囲気でいいですね!
昔ノートタイプのワープロを仕事で使っていましたが、一太郎と花子に淘汰されてしまいましたね。
懐かしく記事をみました。ありがとうございました。
昔は年賀状印刷に良く使ってました。
ニュースなどでワープロの需要が高まっているのは知っていましたが、この記事で詳しい事情がわかりました。PCよりも先にワープロを触っていた世代なのでとても懐かしかったです。ワープロユーザーさん達がこの先もワープロを愛用できる環境が続きますように。
三洋のワープロとSHARPの書院を使っていました。
印刷の位置合わせとか意外と精密な調整ができたので、今のWord使うよりも思った通りに印刷できた気がします。
懐かしいー。専門学校生時代ワープロの授業があったなぁ。当時10万ぐらいしたかな〜、全て親負担。裕福家庭ではなかったけど今役に立ってると思う。親に感謝。
三十年前のノートタイプは重かったなあ
ワープロがインターネットに繋がらないから、情報漏洩の心配がない。・・納得しました。
退会済みメンバー
退会済みメンバーさん
ビギナー
わーぷろ!?使った事がないなぁー
懐かしいー。昔から実家にあったなぁ。捨てなきゃ良かった物がたーくさん。
先日もワープロが壊れたの探して貰えないかと頼まれました
。修理業者があると助かります
また、読み返しました。いろんな事情があるとは言え、今使っているものを修理して使うっていうことをあらためて考えさせられました。昔は、それがあたり前だった気がします。物を大切にするを思い出します。お歳75歳で、世の中の役に立って、尊敬しかありません。とても良い記事でした。ありがとうございました。
ワープロなんて触ったことないなぁ
うちの古いワープロ使ってみようかな
各メーカー、タレントを使ってテレビCMながしていた頃が懐かしい!
ワープロ!懐かしい
昔持ってました。まだ売ってるんですね。
大切にしているものを修理して使い続けられるようにしてくれるのはありがたいですね~!
セキュリティ面がクリアならデータ移行代行サービスも需要ありそう。
フロッピーディスクという懐かしい名前。
ありがとうございます!
ありがとうございます!
ありがとうございます!
ありがとうございます!
まさかのワープロがこんなことになっているなんて驚きです
ワープロに今も需要があるなんて。。
ガラケー派の理由にも通ずるものがありますね。
実家の書院まだ動くかな?8年くらい前は動いたけど。
昔々、欲しかったけど結局買わなかった。
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