- mineoニュース
- 58
- 13
- 76
1980~1990年代に隆盛を誇ったワードプロセッサー(ワープロ)。
その名の通り、主に「文字入力」に特化した電子機器で、原稿・レポート・チラシなどの作成や、表計算などの機能を担いました。
しかし、より多くの機能を扱えて拡張性もあるパソコンが普及すると衰退。2000年を最後に新機種は販売されなくなり、2003年で製造終了に。
そして各社のサポートも終了していき、長らく残っていたシャープも2014年に相談窓口を閉鎖。ワープロは過去の遺物になったように思えました。
しかし2022年、ワープロは今も多くの利用者を抱え、さらに需要が増えてきたとの話があります。ごく一部では「第二次ワープロブーム」到来とも語られているほど。
実はまだ日本にワープロショップは全国にいくつか点在しています。
そのうちの一つが、愛知県名古屋市に近い、あま市にある。かつて日立製作所でサポート業務にあたっていた服部進さん(75歳)が店主を務める、その名も「ハットリック」。ワープロ販売と修理を主に行っています。
なぜワープロはいまだに使われているのでしょうか? 気になるその話を聞きました。
——お店に入るやいなや、すごい! 何台あるんですか?
服部:500台の在庫がありますね。
——ワープロって今でも売れているってホントですか?
服部:売れています。ウチでは3000人のお客さんがいるからね。リピーターの方も多いよ。
——そんなに……! どんな客層が多いですか?
服部:一般のお客さんが8割で、法人が2割です。
——ワープロを使い続ける一般のお客さん、たくさんいますね。
服部:目立つのは、自治会や町内会の書類とか、挨拶状を作りたい人だね。
——日常づかいのアイテムだと。
服部:住所録に加えて、家系図を作る人もいるよ。これがワープロで書かれた、ある歴史的に有名な血筋の家系図ね。
——こんな記録もワープロで……?
服部:まだまだ、横にずーっと続いているよ。膨大な記録なので今さらパソコンに移植するのも大変だしね。
——いきなりワープロ界の深淵を見た気がします。法人さんはどうですか?
服部:弁護士、法律事務所、それから旅行社とか。
——なぜ使うのですか?
服部:情報を漏洩させないためにです。
——ええ?
服部:3台を同時に買っていた会社に聞いたら、「インターネットにつながらないからセキュリティ的にいい」んですって。
——なるほど、ハッカーには襲われないわけですね。
服部:さらに一番よく目立つのは、お寺です。
——お寺さんなんですか、なぜ?
服部:檀家の資料がすべて入っているから。
——そうか、パソコンに移植できない?
服部:最初から移植する考え方はないので。俺らならテキスト変換とか、何かできないかと考えるけど、多くのワープロユーザーにとってその考えはないんです。
——そのまま使い続けようと。
服部:ええ、今から新しくパソコンを覚えて書き直すのは大変ですから。
——ちなみに、小説家が愛用するイメージもあります。
服部:それは2~3件かな。
——じゃあレアですね。ちなみに有名な方でした……?
服部:世間で名前を知られている方もいたよ。
——お客さんの年齢層はどうですか。
服部:メインは70~90代のお客さん。「これじゃないとダメ」というお客さんがいるから。
——若い人はどうでしょう。
服部:たまにいるね、40代で会社にあるから使っているとか。個人のお客さんは少ない。
——そもそもワープロショップをはじめるきっかけは何でしたか。
服部:20年前まではパソコンの修理工場兼パソコン教室だったんだけど、「ワープロが壊れたからパソコンを教えて」っておじいさんが来て。
——じゃあ、パソコンを教えたんですか?
服部:いえ、その前にワープロを見たら、かんたんに直っちゃって。そこから新聞に三行広告を出してワープロ修理をはじめたら、たくさん人が来てね。さらに、インターネットショップもはじめたんだ。
——意外な鉱脈を見いだしたわけですね。
服部:パソコン修理より、ワープロのほうがもっと単純だしね。
——価格帯はいかがですか。
服部:3~7万円ぐらいまで。高いのは人気の機種とか新しい商品とかだね。最近は価格が上がっているよ。
——パソコンって10年経つと価格はがた落ちですけど、逆に上がっているんですね!
服部:そうそう。需要が高まっているのと、ワープロがだんだん減ってきたのもあって、3年で価格は倍くらいになりました。
——なぜそこまで急激に上がったんですか?
服部:人気があるからだよ。4~5万円くらいのものが一番売れるね。
——ちなみに、ご自身はワープロをどれくらい使っていましたか。
服部:5年ほど使いました。今は使わないけど、文字を打つだけならワープロのほうがいいと思う人も多くて。
——なぜですか?
服部:すぐ起動して、すぐに文字を打てて、すぐに印字した紙を出せるし。あと、ユーザーは操作に慣れているからね。
——パソコンだとちょっと起動で待たされますからね。かんたんにネットにつなげないからこそ、書くことに集中できそう。
——ワープロってデカくて重いイメージですが、こんな軽い機種もあるんですね。
服部:電池が内蔵されていないけど、コンセントさえあれば使えるわけ。でも電池内蔵型ワープロもあったんですよ。
——へえ!
服部:日立やリコーが出していて、電池は5時間くらい持ってくれた。ただしその代わりにプリンターは別だったよ。
——当時、Windowsを搭載しているワープロもあったそうですが……
服部:ビジネス用には多かったね。Windows3.1とか、95とかとセットになっていた。
——ビジネス用となれば、WordやExcelもつくんですか。
服部:昔は各社独自のワープロソフトや表計算ソフトが入っていたよ。
——互換性がないのでは?
服部:テキストに変換すればいいんだけど、面倒だからそこまでやる人はいなかったな。
——とすると……みんな同じ機種でそろえるとか?
服部:そうそう、それなら互換性の問題はクリアできるから。
——後期は先進的な機能を備えたワープロがいろいろ出てきました。
服部:インターネットもあるし、テレビのついたやつもあります。
——アンテナにつないで見られる?
服部:そう。だけど、いま多くの人は文字入力とかの基本機能ばかりを使うね。
——ふつうにPCを使っている方など、少しワープロに興味出てきた方にとってのオススメの一機はありますか。
服部:ハードディスクのついた東芝の一番新しいやつ、RUPO JW-9820だね。
——ちなみに、ゲームソフトもあったそうですね?
服部:いろいろあったよ。テトリスとか倉庫番とか、AI将棋とか、麻雀ゲームとか……。これはゲームのフロッピーディスクだよ。
——ちなみに、当時タッチタイピングできる人はどれだけいたんですか?
服部:今でもタッチタイピングしている人はあんまりいないと思うよ。
——意外です。
服部:ローマ字入力やる人は1割いなくて、ほとんど、かな入力。あいうえお順のキーボードもあったから。ただ、親指シフトを使っている人は速いよ。
——今でも使っている人がいると聞きますね。
服部:ただ、いわゆる“親指シフター”は全体の5%もいないね。でも機種が希少化していて、熱狂的に搭載機種を探し求めているよ。
——ワープロはみんな古い中古機種ですから、修理が欠かせませんよね。故障で多いケースベスト3はなんですか。
服部:液晶の故障が一番多くて、あとはフロッピーディスクドライブとプリンターがよく壊れるね。
——どれもよく使う機能で、困っちゃいますね。
服部:液晶の故障で一番ひどいのはこれです。「ビネガーシンドローム」って言って、これは修理が難しいんだ。
服部:この色が変わった画面も、なかなか直らなくて。透過率の高いパネルが不足しているとかの問題でね。ワープロの部品は今、なかなか入手が難しいのよ。
——部品、入手困難でしょうね……
服部:なかなか新品がないから、ジャンク品から外して使うしかないんです。中国でまだ製造しているパーツもあるが、それすらも減っていて。
——中国ではまだ生産している?
服部:フロッピーディスクやインクリボンもインクタンクも、みんなメイド・イン・チャイナです。
——修理、大変ですね……!
服部:でも、いいこともあるよ。修理ができれば、ネットオークションでジャンク品を買って、直せば販売できるから。
——昔のものですから、壊れたワープロは多そうですね。利益率は高そう。
服部:ただ、それも故障したところがわかるからできる。わからない人は絶対わからんからね。
——ウン十年前の中古品を6ヶ月保証するのもすごいですよね。
服部:だからこそ、多くのお客さんがリピーターになってくれて。「俺が死ぬまではこれを使い続けたいから、頼むよ」とかも言われるよ。
——もはや頼みの綱ですね。
服部:お客さんにとってワープロは、命の次に大事だもん。
——そんなに?
服部:この前、黒のベンツがダーッと店に来て、何かと思ったら、点滴を引きずりながらやってきて。「これをずっと使い続けたい」と修理に預けてくれてね。
——「一生使い続けたい」という思いが伝わりますね。
服部:病院は暇だから、そんなときこそ文字を打ちたいんだろうな。
——なんか小説とかも書きたくなりそう。
服部:小説や自伝を書いたり、会社の社歴を書く人が多いよ。
——もしかしたら本を出版される方も……?
服部:うん、何冊か本を送ってくれた人もいるね。
——人生の総決算を記す道具と考えれば、重みが出てきましたね。
——ワープロの仕事で大変だったこと、うれしかったことはなんですか。
服部:その両方とも感じられるのが修理かな。骨が折れるけど、お客様の動かんやつを直したときは、喜んでくれるしね。2万円の修理でも、「5万円の領収書を切ってください」って言ってもらって。
——それだけの価値を感じていらっしゃるんですね……そんな日本のワープロは、どんな役割を狙ってきたと思いますか。
服部:まず、文字を書くのに漢字辞書がいらなくなりました。
——そうか、変換してくれるし。
服部:あとは、活字だと読みやすい。レポートとかも作りやすくなりますね。何十枚も印刷して配れるし。
——手書き時代からすれば、書く、印刷する行為を、3段跳びくらいに進化させたのがワープロだったんですね。
——服部さん、ホントにお元気ですよね。今のモチベーションは何ですか。
服部:おかげさまで、「おたくだけが頼りだ」っていう人がよくいるわけ。75歳だけど。周りには「大阪万博のある2025年で閉店する」とは言っているけどね。
——でもこの盛況ぶりじゃ、あと3年じゃすまなそうですね。
服部:実は東京オリンピックのあった2020年で終わる予定が、もうすでに延びているからね。
——今回も引退撤回の予感がします(笑)。
服部:わからんけどね、元気なうちはやるけどさ!
編集:ノオト
そのワープロ、タイピングが面白くて幼稚園児の時に玩具にして遊んでいた記憶が.....(¯―¯٥)
当初のワープロはとても大きくて持ち運びが出来ず、その改良型とてデスクトップ型が発売され、現場等での報告書作成に使用されていました。←本体にプリンターが直付けがされており、大変便利。
パソコンにも直付けプリンターがあればニーズがあるかも。
と思いながら読み進めると、現役メイドインチャイナが手に入るんですね。
残念ながらそういう事は日本ではできない芸当ですね。
うちはデスクトップ型のキャノワードを5年くらい使ってました。
当時すでに新製品がラップトップ型ばかりになっていて、新品だったけど投げ売りでかなり安く買えました。
CRTディスプレイが壊れて真っ白画面になってしまい、それっきり処分されてしまいました。
置いておいたら修理できたのかなぁ?
ワープロとは自分の書斎感覚といった所なのでしょうか。
僕のまわりにも幾人かいらっしゃいますが、本当に頭が上がりません。
ありがとうございました。
ワープロはインクじゃなくてテープタイプを使っていました。
セキュリティについては、ローテクな解決策で、なかなか良いですね。
私は会社で、8インチフロッピーを使っていました(持ち出すと大きくて目立ちますし、そもそも読み出せるドライブを持っている人ってまず居ませんから
(そして、使用禁止ワード「ブラインドタッチ」…
捨てる際はご注意を
セキュリティ完璧。((笑))
楽しく読ませていただきました。
(ノζ _ ^ ξ)
ニッチな分野なだけに極めた方は超プロフェッショナルですよね。これは楽しそうです♪
自分はワープロを使ってませんでしたが、懐かしい言葉が色々と、親指シフト、文豪、Lotus1-2-3などなど。
私の勤め先のワープロは富士通のオアシスだったのを思い出しました
ちなみに私は「かな入力」です
ワープロで、町内会の書類を作っていたところです。
ノートPCが壊れてしまい、まさかの半信半疑で納戸から書院を出してみると普通に動いたのですヾ(*’O’*)/
SHARP WD−Y300 書院processor
B5サイズの感熱紙も変色していなくて、本当にラッキーでした!!!
その存在すら忘れていましたが、これからも大切に使っていこうと思っています。
ただ、配列は親指シフトではなく今とおなじJIS規格のタイプを使っていました。
大抵がモノクロ液晶でカラー液晶のものは90年代半ばまでは高級機のみで珍しかった印象です。
30年くらい前には、ジャスコ(現イオン)あたりに沢山展示機が置いてあったのを覚えています。
現在では外部との通信が出来ず、セキュリティ面で優れているという点はなるほどなと思いました。(^^)
ジャンク品が部品取りに使えるのは分かるのですが一部少しでも動いているとほとんど使わない場合でも手放せないです。
リサイクルやリユースにはよろしくないのでしょうが。
コンバート出来るようになって引退。
でも文書作成だけでPC起動は面倒なので
最近はポメラを愛用してます。
もじゃお氏「ワープロの価格が倍に!?」
「今すぐこいつをマイネオの通信回路に取り付けるんだ!マイネオの通信力は数倍に跳ね上がる!」
*なぜ、もじゃおさんかというと、頭もじゃもじゃの人がでてくる有名アニメの名台詞だからです。
店主さんも優しいお人柄で、お仕事も誠実。
お元気で、長くお店を続けて欲しいです。
病院が、なんか乗っ取られて患者さんのデータを人質に取られてって話しを聞いたニュースを思い出した。
ネット怖いけど、複雑管理な業態では、やっぱりワープロには荷が重いのもまた事実なのね。
しかし立ち上がりが遅い私のパソコンは、つい待ってる間にゲームを触ってしまうので困る。あるあるだよね?
でも今はローマ字入力、カナ入力で、親指シフトはすっかり忘れてしまいました。OASYSも当時使わなくなってからは、ネットで希望者をつのって差し上げてしまったので。
昔それでワードみたいに文面、年賀状も作ってましたー
データをパソコンに移すサービスもわりといい商売になりそうですね。
それもあいうえお50音順キーボード!
画面がデカくて重かったですが結構高機能でしたね。
ガキの頃ワープロのおかけで、バソコン違和感なく使えました。
裏で他のプログラムが動いていない分、いい機種を選べば、パソコンより入力速かったです。
うちに山ほどあるフロッピー、高く売れるかな?(笑)
念のため、FDドライブも保管してました。
20うん年前、書院を持っていました。
雑誌への投稿ハガキや
授業の実験レポートを書いていました。
その頃、私以外みんな手書きで提出していたので、ワープロ出力のレポートっていうだけで教授たちの印象はよかったです。
後で文章を大幅に変えたりするのが楽なので、なんでみんなワープロにしないんだろうと思ったら翌年からはパソコン派が増えてきましたw
タイピングゲームも入ってたなぁ。
まだまだ動いてたけど、乾電池の所が液漏れしてて捨てちゃいました。
もったいないことした?
本人存命なら、こちらのお店にお世話になる可能性もあったのですね。
父の残した紙は捨てるにしのびなく取ってはあり、私が最晩年に読むかと思うものの感熱紙なのでいつまで読めることやら。いや、その前にこちらの寿命が来るかも。
自分もワープロを使っていましたが、Windows95時代最後にパソコンに切り替えました。確かMeくらいまでは東芝のフロッピー互換の無償ソフトがありましたので、残したいものをパソコンに取り込みました。
現役のワープロユーザーさんには救世主のようなお店ですね。いつまでもあって欲しい存在だと思います。