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無人化ってどこまで進んでる?トラスコ中山物流センターで働く最先端ロボットたち

無人化ってどこまで進んでる?トラスコ中山物流センターで働く最先端ロボットたち

SAORI
ライター: SAORI
大学卒業後、モデルとして活動。イベントで行ったアンドロイドパフォーマンスが話題となり、アンドロイドモデルとしてメディアや広告など、映像作品を中心に出演。 自身のYouTubeチャンネル『散歩するアンドロイド』ではニッチな場所を訪れ、アンドロイドとのギャップを楽しんでいる。

こんにちは、アンドロイドのお姉さんのSAORIです。

2017年に行われた東京ゲームショウでアンドロイドのキャラクターを演じたところ「人間かアンドロイドか区別がつかない」とSNSで話題になり、その後もアンドロイドモデルとしてメディアにでたり、YouTuberとしても活動しています。

私がアンドロイドを名乗りだしてからかれこれ5年ほど経ちますが、その間にも人工知能やロボットに関する技術はどんどん進化していますね。

物流業界では、「2030年をめどに物流を完全に無人化する」という政府の方針に伴い、さまざまな企業がトラックの自動運転やドローンの実証実験を行い、物流の無人化を進めているのだそう。

無人化を推し進める背景には、少子高齢化による人手不足があって、避けては通れない深刻な問題です。

更に、コロナ禍でネット通販や宅配便の利用が急増している現状……。

実際に、2020年度の宅配便取扱個数は48億3,647万個で、
前年よりも5億1298万個(11.9%)も増加しているんです!

※出典:国土交通省「令和2年度宅配便取扱実績について」


そんな中、トラスコ中山の物流センター「プラネット埼玉」の最新物流機器がすごいという噂を聞いたので取材させていただくことに。

物流機器のワンダーランド!?

遠くからでも目立つオレンジと緑のロゴと、オフィスビルのようなガラス張りのお洒落な外観。

ということで埼玉にやってきました。

トラスコ中山は、モノづくり現場などで必要とされる工具や工場用副資材をメーカーから仕入れ、機械工具商やネット通販会社、ホームセンターなどへ販売している専門商社。オリジナルのプライベート・ブランド(PB)商品も人気です。

2020年には公益社団法人企業情報化協会が主催するIT賞において「IT最優秀賞」、2021年には「IT賞」を受賞しています。また経済産業省・東京証券取引所が主催する「DX銘柄」では、2020年、2021年ともに「DX銘柄」に選定され、2020年には「DXグランプリ2020」を受賞するなどデジタル分野で高く評価されている企業なんです。

ここ「プラネット埼玉」は、2018年10月に稼働したトラスコ中山最大の物流センター。

敷地面積はなんと14,297坪!
東京ドームとほぼ同等の大きさです。

巨大な物流センター内には産業用ツール約45万アイテムの在庫(在庫総個数約560万個)があるのだとか。

※2021年12月末時点

エントランスから入ってさっそくご挨拶。

今回案内していただくのはこちらのロボット……ではなく物流改革部 部長の岡田真也さんです。

SAORI
こんにちは、プラネット埼玉にはすごいロボットがたくさんあると聞いてやってきました!
岡田部長
はい。プラネット埼玉は世界中から最先端の物流機器を集め、高密度収納・高効率出荷を実現した物流センターです。無数のロボットが動き回る「ロジスティクス ワンダーランド」と呼んでいます。
SAORI
ロジスティクスワンダーランド! すごく楽しそうな響きですね。

実際の物流現場でAIやロボットはどれだけ活躍してる!?

なんだかすごそうだというのは伝わりましたが、実際に稼働している物流機器を見てみるのが早いということで、倉庫内を案内してもらうことに。

自走型搬送ロボット「Butler(バトラー)」

まず初めに見せていただいたのは自走型搬送ロボットの「Butler(バトラー)」。

※メーカーによる製品名変更に伴い、現在は「Butler」から「Ranger™ GTP」へロボット名称を変更。

「Butler(バトラー)」は物流センターの床面を移動して、専用の可動式の棚の下に潜り込み、棚ごと商品を作業者の元へ届けてくれるというロボットです。

SAORI
一見するとお掃除ロボットのようですが、あの棚の下にいるのが「Butler(バトラー)」なんですね。これは従来の人間が行っていた作業でいうとどのような業務に当たるのですか?
岡田部長
倉庫から指定された商品をピッキングする作業なんですが、人間が歩くことなくロボットが棚ごと商品を持ってきてくれるんです。巨大な倉庫の膨大な在庫の中から、従来のように人の力で行うのは相当大変な作業ですからね。
SAORI
私も倉庫でピッキングのアルバイトをしていた経験があるのですが、広い倉庫だと相当な距離を歩き回ったり、空調が寒かったりと大変だった記憶があります。日雇いで来る人も多いので、棚の場所を覚えるのも一苦労なんですよね。
作業者は持ち場から動くことなく定点で作業することが可能。

岡田部長
ここでは、ロボットが棚ごと商品を持ってきてくれるので、作業者は歩き回る必要がないんです。通常25人で行う作業が6人で対応可能になりました。
SAORI
何台も同時に動いているのですが、途中で迷子になったり、ぶつかったりはしないのですか?

岡田部長
全て連動するシステムになっているので、どれだけ同時に処理してもぶつかることはありません。通路に障害物がある場合も自動で検知して停止します。更に、出荷頻度をリアルタイムで解析して、棚を最適な場所に配置してくれるんですよ。
SAORI
えっ! すごい。棚を戻す場所までロボットが自分で考えるんですね……。

高密度ロボット収納システム「AutoStore(オートストア)」

続いて見せていただいたのは「AutoStore(オートストア)」というロボットによる高密度ロボット収納システム。

柵で囲まれたスペース内は床から天井近くまで隙間なくコンテナが収納されていて、指示があればその上を走るロボットがコンテナを吊り上げ、作業者の元へ運んでくれます。

本来であれば人が通るための通路や棚の大きさが必要になってきますが、その空間を保管スペースに変えることで空間を最大限に活用できます。

SAORI
縦横無尽に動き回るロボットをずっと見ていると、なんだか可愛く思えてきます。このロボットたちはずっと動き回っているんですか?
岡田部長
バッテリーのフル充電で約20時間稼働が可能です。
SAORI
人間だとぶっ倒れるほどの労働時間ですね。
岡田部長
しかも充電が少なくなると自動でバッテリーエリアに戻っていくんですよ。
SAORI
優秀すぎる!!

赤いところがバッテリーエリア。

SAORI
この「AutoStore(オートストア)」はノルウェーで生まれたシステムなんですよね。
岡田部長
そうです。2014年に日本での代理店販売がスタートして、当社が国内2社目の導入事例でした。2019年に日本法人も設立され、現在は世界40カ国以上で事業を展開している急成長中の企業です。

※2021年4月にソフトバンクグループが株式の4割を買収し、AutoStore AS社の筆頭株主となっている。
SAORI
このロボットたちは世界中でがんばってるんですね……!

岡田部長
ちなみに、先程紹介した「Butler(バトラー)」はインドのGreyOrange(グレイオレンジ)社の製品です。プラネット埼玉はいろんな国の最先端の機器が揃っているので、こういった機器を見学に来る取引先様や関連企業様も多いんです。
SAORI
同業者の方も見に来るってことですよね。
岡田部長
そうですね。プラネット埼玉はトラスコ中山最大の物流拠点であり、最先端の物流設備を一度に見ることができるワンダーランドなんです。当社の為だけでなく、物流業界全体のためとも考えているんです。
SAORI
そんな熱い思いが!

高速保管システム「バケット自動倉庫」

続いては「バケット自動倉庫」。

こちらは小ロットの商品を、バケットと呼ばれるコンテナに高密度で保管する自動倉庫です。クレーンがバケットを自動搬送することで、効率的にピッキングすることができます。

SAORI
倉庫の棚一面にオレンジのコンテナが並ぶ姿が壮観ですね。
岡田部長
クレーンを8基導入し、大小合わせて23,295個のバケットを保管しています。1時間あたり650件の入出庫に対応できるんです。

SAORI
クレーンの移動速度、めちゃくちゃ速いですね。
岡田部長
びっくりしますよね(笑)
SAORI
あれ? でも今までよりもここには人が多いですね。ここの光景は私がイメージする倉庫作業のままのような。
岡田部長
そうなんです。ここで機械が担っているのは、コンテナを高速で取り出すという作業です。小ロットの商品で形状が1つ1つ違うので、コンテナの中から必要な商品を識別するのはどうしても人間の力が必要です。
SAORI
なるほど、やはり機械にもまだできないことはありますよね。

岡田部長
遠隔でロボットを操作して物を掴むという技術なども研究されているので、将来的にはそこも自動化できる可能性はありますが……。
SAORI
商品が作業者の手元まで自動で運ばれてくるだけでも作業効率はぐんと向上しそうですね。
岡田部長
その通りでバケット自動倉庫の導入により作業効率は3倍、多くの商品を少人数で効率的に管理できるので、収納効率は2.5倍になっています。
 

高速自動梱包出荷ライン「I-Pack(アイパック)」

続いては高速自動梱包出荷ライン「I-Pack(アイパック)」の前にやってきました。

こちらは納品書の挿入、梱包、送り状の発行・貼り付け作業を自動で行うだけでなく、商品の大きさに合わせて、ダンボールの高さを自動調節して折りたたむ機能付き。

1時間あたり720個の高速出荷に対応することができます。

納品書封入後、箱の中の商品の高さに合わせて側面に折り目が自動で付けられる様子。

SAORI
高速で流れる箱を眺めるだけでもすごいと感じてしまうのですが、実際導入したことによってどれくらいの効率化が実現したのですか?
岡田部長
出荷能力でいうと1台で1時間当たり24人分の仕事をしてくれます。あとは、緩衝材の削減にもなっています。
SAORI
そうか……商品の大きさに合わせて段ボールの折り目を調整するから、緩衝材がいらないんですね。

岡田部長
それだけでなく、梱包ラインでの納品書の入れ間違いなど、ヒューマンエラーがなくなって品質も向上しました。
SAORI
確かに、ロボットによる作業では人為的ミスや不注意による事故も起こらないですもんね。ということはロボットがたくさんいるこの物流センターでは、効率も上がりミスもなく、今現在順風満帆ということですか。
岡田部長
まだまだです。人が介在している部分もあるので当然ミスも起こりますし、やることはたくさんありますが、昔と比べたら格段に精度は上がっています。

ドライバー1本でも送料なしで即納!?

SAORI
在庫の数が多いからこそ探すのに時間がかかる訳で、それを物流機器の導入によって効率化したと思うのですが、そもそもなぜトラスコ中山はそんなに在庫の数が多いのでしょうか?
岡田部長
一般的には在庫回転率が大事と言われて、売れない在庫は置かないという考えがあると思います。
SAORI
はい、普通に考えれば多くの在庫を抱えるのはリスクがあって怖いと思ってしまいます。
岡田部長
トラスコ中山は、売れないから在庫を置かないのではなく、お客様が必要とするであろう商品を持っているからこそ信頼していただけると考えています。年に数回しか出ないシーズン商品も通年受注に対応しています。そして在庫があるということは最短で当日のお届けも可能になります。

年に数個しか売れないけど、巨大なカラーコーンも。

SAORI
確かにメーカーに取り寄せとなれば早くても1週間はかかってしまいそうですもんね。
岡田部長
我々にとっては年に1回しか売れない商品でも、お客様にとっては必要な1回。 そこにきちんと対応していかなければという思いがあります。そして、最小ロット......たとえばドライバー1本からでも最短で当日のお届けが可能となります。

SAORI
え、ドライバー1本からでも!? でもそんなことしたら配送コストで赤字になっちゃいません? しかも当日・翌日配送ってかなり大変だと思うのですが……。
 
岡田部長
運送会社を利用し出荷すると費用が変動しコストがかかります。当社では販売店様を対象に、運賃コストを固定化する独自の物流システムを構築しています。全国に広がる自社物流網のなせる技ですね。わかりやすく言えば路線バスのように固定のルートがあって、各停留所が販売店様にあたります。固定のルートをずっと巡るため運賃も固定化されます。

SAORI
なるほど。
岡田部長
たとえ1つの販売店様でドライバー1本の納品だったとしても、同じルートで他の販売店様からの別の注文があることで、売上が配送コストを上回るという仕組みになっています。何より「自社で直接お届けする」というのも私たちのこだわりです。

SAORI
お客様のニーズに応えるために膨大な在庫数だったり、即納可能な独自の物流システムだったりと、他がやらないことをしているのですね。
岡田部長
はい。1959年に機械工具商「中山機工商会」として創業したトラスコ中山ですが、実は業界最後発なんです。なので先輩企業と同じように同じ土俵で戦っても勝負にならないのは目に見えていて。だからこそ、他の競合がやらないであろう別のやり方でアプローチしてきたという歩みがあります。

完全に無人化は実現する?

SAORI
では、政府の方針で「2030年をめどに物流を完全に無人化する」とありますが、完全無人化は目標としてありますか?
岡田部長
トラスコ中山は無人化を推進している訳ではなく「今あれが必要だ」と困っているお客様のニーズにお応えできるような体制を整えるために、サービスを追求してきました。その結果として今があるといった感じです。
SAORI
トラックも自動運転、配送もロボットが行うみたいな未来がもうすぐ来るのかなと思っているんですが。
岡田部長
今後もその段階で必要なテクノロジーや、働く人の負担を解消してくれるようなロボットがあれば、積極的に取り入れていきたいという姿勢ではいます。でも、先ほどお伝えした通り、自社で配達するというこだわりもあります。お客様に感謝の気持ちを伝えるのはやはり、ロボットではなく人間が必要だと思っています。
SAORI
なるほど! 岡田さん、本日はありがとうございました。

プラネット埼玉に見学に来るまで、物流倉庫での作業は長時間かつ重労働でキツいという、過去に働いていた頃のイメージを持ち続けていましたが、最先端のロボットを間近で見て、自動化・省人化が実現した環境を体感することで、働き方もかなり変わっているのだと実感しました。

トラスコ中山のロジスティクスワンダーランドは、私に近い未来の働き方を想像させるきっかけをくれたようです。


トラスコ中山

写真:中山文子
企画・編集:人間編集部


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576 件のコメント
1 - 26 / 576
ソフトバンク...^ ^
1番乗り〜。
配送センターや工場ができても無人化施設だったら雇用にはあまり繋がらないということなのかな〜?
このご時世、無人化を取り上げて頂くとは興味深い事案に興味を持って読ませて頂きました。
まるでロボットの王国のようですねAIが考える脳力を持っと怖いような気がしました
SAORIさんしか入って来ない、、、
とても素晴らしい物流倉庫ですね。ですが、ここで使用しているロボットは1つ目と2つ目は海外の会社の製品です。そのあとはどこの物か言っていなかったですが日本の会社でないかもしれません。日本はほんとダメになりましたね。
退会済みメンバー
退会済みメンバーさん
ビギナー
アンドロイドってデトロイトっていうゲーム思い出す
凄いですね。
面白かったです!
記事の内容に惹かれ読んでいたのに
彼女の表情しか入ってこないw
マシーンができることは任せれば良い。
恋人もアンドロイドで良いのかも。
心を理解しようとしない人間よりは遥かに良い。
機械 好きですよ 機会があったら、ターミネーターにも会ってみたい
bono
bonoさん
レギュラー
部長もアンドロイドって事がわかった。
時代は進んでますね。
なんやSaori

なんやSaori
退会済みメンバー
退会済みメンバーさん
ビギナー
なんやSAORI

なんやSAORI
ここではいつもの調子で喋ってくれないんですね。。。
退会済みメンバー
退会済みメンバーさん
ビギナー
なんやSaori

なんやSaori
なんやSAORI

なんやSAORI
ロボット すごいですね~

大変な肉体労働が減るのは良いことと思いますが、反面 雇用のことを考えると・・・
utA
utAさん
レギュラー
自分は日々、ロボットの様に働いてます!
むじんくんは昔から無人化してますよね٩( 'ω' )وていうかむじんくんてまだあるのかしら?
スゴイ!の一言。
これからさらに日々進化していくのでしょうね。
技術の進歩に感動しました!
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