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スマホだけでの確定申告、どういう人ならできるの? 税理士さんに基本から聞きました

スマホだけでの確定申告、どういう人ならできるの? 税理士さんに基本から聞きました

ゆきどっぐ
ライター: ゆきどっぐ
フリーランスの編集者・ライター。新しいもの好き。外出自粛中の楽しみはゲーム。

最近、「スマホで確定申告ができる」というニュースを見かけるようになりました。年に一回、必ずやってくる確定申告。少しでも楽にできるなら、スマホで挑戦してみようかな、と思う方がいるかもしれません。

今回は、スマホで確定申告をするのに適した条件や注意事項を、『あっという間にスマホでかんたん確定申告』(技術評論社)を監修した税理士の山本宏さんに聞きました。

税理士の山本宏さん

まず、自分のスマホで確定申告できるかをチェック!

——確定申告ってやらなきゃいけないのに、なかなか手を付けられないんですよね。「スマホで確定申告」と聞くと、少しだけ身近に感じるのですが、どのスマホからでもできるのでしょうか?

山本さん
そもそもスマホで確定申告をする際は、「e-Tax」(国税電子申告・納税システム)いうシステムを使います。これは所得税や消費税、贈与税などの申告や書類の提出、インターネットを通じて申請などの手続きができるサービスです。

山本さん
このe-taxはスマホやパソコンから使用できます。しかし、スマホで使うためには、マイナンバーカードを持っているか、マイナンバーカードを読み取れる機種か、マイナンバーを使うために必要な「マイナポータル」というアプリに対応しているかなど、いくつかの確認が必要です。

——この時点で、ややこしくなってきました……。

山本さん
そうですよね。自分が当てはまっているのかすぐにわかるように、チャート図を用意しました。まずはあなたの使っているスマホで確定申告ができるのか、確かめてみてください。

あなたはスマホで確定申告ができる?

——私もできそうです。スマホで確定申告をする際に、注意すべきポイントはありますか?

山本さん
スマホで確定申告をする人は、“簡単に”確定申告を済ませたいと考える方が多いんです。そうすると、まずマイナンバーカードを持っていることが重要ですね。本人確認がスムーズに進みますから。

ここで注意してほしいのは、「顔写真付きのマイナンバーカード」が必要だということです。マイナンバーが記載された緑色の個人番号通知書はスマホの確定申告には使えません。持っていない方で、確定申告までに時間の余裕がある方は、マイナンバーカードの申請をおすすめします。ただし、状況によっては交付までに約1カ月かかるので気を付けましょう。

左のように写真がついているマイナンバーカードならばOK。もし右のような緑の通知カードしか手元にない場合は、まずはマイナンバーカードの申請が必要になる。

——1カ月……! 今から申請して、今年の確定申告に間に合うかなぁ。

山本さん
確定申告の時期を見越して申請するといいですね。

マイナンバーカードを持っている方は、パスワードの確認をしてみましょう。

必要なのは、
  • 署名用電子証明書のパスワード(英数字6文字以上16文字以下)
  • 利用者証明用電子証明書のパスワード(数字4桁)
  • 券面事項入力補助用のパスワード(数字4桁)
の3種類です。

使う機会が少ないので忘れがちですが、パスワード入力では、連続で間違うとロックがかかります。そうなると役所へパスワードの再設定をしに行かなくてはなりませんから、事前にチェックしておきましょう。

——気をつけます! あと、スマホによっては対応していない機種もあるんですね。

山本さん
はい。確定申告に必要な情報はマイナンバーカードに入っているのですが、スマホの「NFC」という機能を使って、マイナンバーカードを読み取る仕組みなんです。

NFC機能とは、機器同士を近づけるだけで通信できる技術のこと。NFCに対応しているのは、iPhoneでは7以降、Androidは機種によります。自分のAndroidスマホが対応しているか知りたい場合は、公的個人認証サービスポータルサイトにNFC搭載の機種一覧が記載されているのでチェックしてみてください。

NFC非対応のスマホだと、マイナンバーカードを使った確定申告はできませんから気をつけてください。

NFCは「おサイフケータイ」などタッチ式決済にも使用されている

——マイナンバーカードがなかったり、NFC対応していない機種を使っていたりする場合、スマホで確定申告はできないのですか?

山本さん
いいえ、「ID・パスワード方式」という方式を選べばできますよ。ただし、事前に税務署で本人確認をしてもらい、「ID・パスワード方式の届出完了通知」を発行してもらう必要があるんです。税務署に行かなければならない分、マイナンバーカードよりもハードルが高くなり、“簡単に”確定申告を済ますことは難しくなってしまうでしょうね。

また、ID・パスワード方式はあくまでマイナンバーカードが普及するまでの暫定的な対処。将来的には、マイナンバーカードを使った確定申告に統一しようとしていますから、ID・パスワード方式を使い続けることはあまり薦められません。

——なるほど。できればマイナンバーカードを取ったほうがいいんですね。

山本さん
はい。ちなみにマイナンバーカードとNFC対応のスマホは、パソコンで確定申告をするときにも役立ちますよ。

従来、パソコンから確定申告をするためには、マイナンバーカードの情報をパソコンに読み込ませるためのICカードリーダーが必要でした。しかし、今はスマホを使って読み取ったマイナンバーの情報をパソコンに送信できるようになったのです。

マイナンバーとスマホの両方持っていて、パソコンのほうが使い慣れている方はこの方法での申告もおすすめです。

そもそも確定申告はどういうもの?

——これまでいろいろと伺ってきましたが、基本を少し整理させてください。そもそも確定申告とは一体なんなのでしょうか?

山本さん
確定申告は、個人が1月1日から12月31日までに得たお金や使ったお金の情報を整理し、「どれくらいの金額を所得税として納税するのか」を自分で報告する手続きのことをいいます。

国やお役所は、それぞれの国民がどこで働き、一体どのくらいの金額を得ているのかを把握できていません。そのため、「確定申告」として自分の情報を報告する必要があるのです。

また、扶養している家族がいる人、医療費を多く支払った人、住宅ローンを組みはじめたばかりの人など、金銭的に負荷が高い人は、税金の負担を軽くする仕組みがあります。しかし、こういった負担があるという情報も、ちゃんと「確定申告」をしないと伝わらないのです。

——そうなんですね。でも、会社員の中には確定申告をしていない人がいますよね?

山本さん
はい。会社員として勤務している場合、会社が「年末調整」で代わりに申告をしてくれるため、原則的に確定申告は必要ありません。

しかし、医療費をたくさん払っていたり、副業でかなりの金額を稼いでいたりする社員がいたとしても、会社はその事情を知りませんよね。

そのため、会社が知らない「払う税金が増えたり減ったりする事情」がある方は、企業に勤務していても確定申告をする必要があるのです。

スマホで確定申告ができるのはどういう人?

——いろいろな理由で確定申告をする方がいるんですね。マイナンバーカードやスマホの条件がそろっていれば、どんな理由で確定申告する人もスマホだけで完結できるのでしょうか?

山本さん
いいえ。スマホだけで確定申告ができる所得と控除は、2022年時点ではまだ限られています。具体的には、次の通りです。

●対象となる所得
  • 給与所得
  • 雑所得
  • 一時所得
  • 特定口座年間取引報告書(上場株式等の譲渡所得等、配当所得等)
  • 上場株式等の譲渡損失額(前年繰越分)

●各種控除など
  • すべての所得控除
  • 政党等寄付金特別控除
  • 災害減免額
  • 外国税額控除
  • 予定納税額
  • 本年分で差し引く繰越損失額

スマホでの確定申告は、2020年1月31日からスタートしました。まだできないものもありますが、徐々に対象を広げています。

——ちょっと言葉が難しくて……。結局、スマホで確定申告ができるのは、具体的にどんな人か教えてください。

山本さん
よくあるパターンですと、以下の方はスマホでの確定申告ができますよ。

・副業をしている方
副業で年間20万円を超える収入を得ている場合は確定申告が必要です。ただし、医療費控除などを受けるために確定申告する場合は、たとえ副業収入が20万円以下でも申告が必要です。

・2カ所以上の働き先で勤務する方
2カ所以上の働き先から給与所得を得ている場合は、合算して確定申告をする必要があります。ただし、主たる勤務先以外の所得が20万円以下なら申告は不要です。

・年収2000万円以上の方
年収が2000万円を超えると、勤務先で年末調整を受けることができないため、ご自身で確定申告をする必要があります。

・医療費控除を受けたい方
1年間に10万円以上の医療費を支払った場合に受けられる控除です。治療費だけでなく薬代、通院にかかった公共交通機関・タクシー(病状から必要な場合のみ)の交通費も対象となります。

・寄附金控除(ふるさと納税など)を受けたい方
国や地方公共団体、認定NPO法人などに対し、2,000円を超える寄附をした場合に対象となる控除です。ふるさと納税は地方公共団体への寄付なので、寄付金控除の対象になります。

ただし、ふるさと納税の納税先である自治体が5団体以内、なおかつ「ワンストップ特例の申請」をした場合は、確定申告の必要がありません。

・住宅ローン控除を受けたい方
住宅を取得したときに受けられる控除です。住宅ローンの借入期間が10年以上で、控除を受ける年は合計所得金額が3,000万円以下、住宅の床面積が原則50平方メートル以上の場合等に受けられます。控除対象の住宅ローンは、金融機関からの借入金等で、控除額は、住宅ローンの年末時点の残高の1%。ただし、住宅ローン開始の1年目に確定申告をしたら、2年目以降は会社を通して年末調整だけでOKです。

・雑損控除を受けたい方
災害や盗難、横領を理由に資産が損害を受けた場合などの所得控除です。近年は洪水などによる被害が増えていますから、対象となる方がいるかもしれません。次の計算式のうち、いずれか多い方の金額で、控除額を超えた場合に申告します。
  • (損害金額+災害等関連支出の金額-保険金等の額)-(総所得金額等)×10%
  • (災害関連支出の金額-保険金等の額)-5万円

——会社員で確定申告をしないといけない人の場合は、かなりカバーされているんですね。逆に、スマホでの確定申告ができないのはどういう方ですか?

山本さん
先ほどお話した以外の理由で、確定申告をする人はまだスマホではできません。

●確定申告ができない主な所得
  • 事業所得
  • 不動産所得
  • 譲渡所得(土地・建物)など

もっとも多いのが「事業所得」がある人です。つまり、フリーランスや個人事業主の方など、事業所得になるほどの収入を個人で得ている人は、まだスマホでの確定申告はできないので注意が必要です。

副業の収支は家計簿アプリなどで管理を

——スマホで確定申告をした場合、どれくらいの時間がかかるのでしょうか。

山本さん
状況によってさまざまですが、医療費控除やふるさと納税の寄附金控除だけを申告する場合、事前に払った医療費や寄付金の金額をまとめておけば、申告自体は10〜15分程度で終わると思います。

副業をしている方は事前に収支の計算をしておくといいですね。仕入れなどが発生する場合は計算が少し複雑になります。副業の場合は簡易な帳簿付けが認められていますから、白色申告のためのアプリや家計簿アプリ、エクセルなどを使うのもおすすめです。

左から「白色申告の確定申告アプリ Kaikei Lite」「シンプル家計簿」「Google スプレッドシート」

●白色申告の確定申告アプリ Kaikei Lite
iOS版ダウンロードページ

●シンプル家計簿
iOS版ダウンロードページ
Android版ダウンロードページ

確定申告は慣れたツールで

——どんな方がスマホで確定申告をするのに向いているのでしょうか。

山本さん
日頃からスマホに親しんでいる若年層、またはパソコンを使う機会の少ない方などにおすすめです。

スマホで確定申告をするためには、税金だけでなくスマホの知識も必要です。スマホを感覚で使え、イレギュラーな事が起こっても対処できるレベルでないと難しいでしょう。「簡単そうだから」という理由でスマホに慣れていない人が取り組むのは、あまりおすすめできません。

——なるほど。一方で、スマホではなく、パソコンから確定申告をした方がいい人はいますか?

山本さん
普段からパソコンに慣れている人ですね。それに、副業の所得が複数ある方にもおすすめです。税金について考えることは、多くの方にとっては普段やらない、慣れていない作業です。なので、ご自身が使い慣れたツールで取り組んでみてください。

わからないことは税務署に聞いてみよう

——スマホを使った確定申告で、わからないことがあったらどうすればいいですか?

山本さん
税務署へ連絡して聞いてみましょう。税務署の「確定申告電話相談センター」では、確定申告に関する相談を受け付けています。お住まいの地域を担当する税務署に電話をかけ、音声案内に従って「0」を選択するとつながります。オペレーターや税理士、税務署職員が質問に答えてくれるはずです。

スマホの確定申告については担当者が少ないため、繋がるまでに時間がかかるかもしれません。でも、必ず対応してくれますから、安心してください。

——確定申告って、やり始めるとわからないことがでてくるんですよね。税務署に電話してもいいと言われると安心します。

山本さん
「スマホで確定申告」の制度は国が後押しをしています。皆さんはその方針を汲んで電子申告をしようとしているのですから、聞くことをためらわなくてもいいと思いますよ。

確定申告は使われている言葉が難しいので、戸惑って当たり前です。きっと税務署も本音では「何の指導もなく、全員が確定申告をすることは難しい」とわかっているのではないでしょうか。だからこそ、税理士という専門職や「確定申告電話相談センター」という専門部隊がいるんです。

確定申告の時期、税務署の電話はつながりにくくなるかもしれませんが、要点を絞って準備をして、根気強く電話してみましょう。

電子申告は5年前と比べると格段に使いやすくなっています。これからに期待してください。

確定申告をみんなで乗り切ろう

「やらなきゃ、やらなきゃ」と思っては腰が重くて後回しにしがちな確定申告。それでも、税理士の山本先生は「まずは手を付けてみて」と優しく語りかけてくれました。

確定申告に頭を悩ませている仲間は周りにたくさんいるはずです。少しでも楽ができるようにアプリを活用しつつ、今年も一緒に乗り切りましょう。

(編集:ノオト


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170 件のコメント
1 - 20 / 170
スマホで出来ればそうしたい…けどなんかややこしそうで…笑
英語圏では tax return という呼び方があるそうで

この言い方の方がなんとなく嬉しいですよねぇ
便利な世の中になった。
表題につられて読んでしまいましたが、事業所得対象外で私には意味なしでした。電子帳簿だって指定のソフト買わなきゃいけなかったりします。以前にもWebで申告書作れるというふれこみに、国税庁のホームページを覗いて見たことがありましたが、Linuxのブラウザで即時はじかれたりしました。その時、国税庁に苦情を書いた覚えがあります。

確定申告なんて広い範囲の方がやるので国税庁は說明文書をもっと分かりやすくしてほしいです。e-Taxなんて定義もなしに平気で使っています。
会社の持株会を利用した際、配当控除を受けられるから申請した方がいいいよ、と言われてやったのが初めてで、ついでにふるさと納税もしてみた感じで確定申告を覚えました。パソコンで電子申請だったので確かに30分かからないですね。源泉徴収票のおかげ。スマホからの申請は手段として覚えておくぐらいかな。
必要書類、例えば領収書や源泉徴収票などの添付の仕方もついでに描いてほしかった。
毎年 パソコン スマホでe-tax使って申告してます初期の頃のe-taxは使いづらかった思い出があります パソコンでe-taxで申告しようとしても上手くできず 画面とにらめっこしてたときもありましたね
でも毎年改良されてるんでしょうね だんだんe-taxも使いやすくなってきました
確定申告も最初の頃はわからず 確定申告の雑誌を買って勉強してたときもあります
楽な時代になりましたね スマホから申告できるようになって
仕事場の昼休みでも スマホあればできますからね
自分もやらなければならないので、大変参考になります。
ありがとうございます。
今日、税務署で書類をもらってきたところです。
情報大変参考になります。
ありがとうございます。
マイナンバーカードを持っていてもスマホがNFC対応じゃないと、結局手間がかかるんですね。。。💧
興味深く、読ませて頂きました。
一般の会社員は確定申告は不要な場合が多いと思われます。
ましてはリタイアされた方が今から勉強することは難しいのでは?
ただ、今後のことを考えると必要になってくると思います。
義務教育時に金融教育を行われるので、そのカリキュラムに入っていることに期待。
私のスマホ(Redmi note 10Pro)にもNFC機能がついてるけど、おサイフケータイ対応型のNFCじゃないとダメなのかな。
文中にある「公的個人認証サービスポータルサイト」にも載ってないし、載ってるのはおサイフケータイ対応型のNFCのスマホだけだし…。
機会があったら活用してみたい。
アプリをインストールして挑戦しましたが、難しくて途中で断念して、パソコンで作成して印刷しました。
今年はスマホで確定申告作成してみました。
思ったより簡単で良かった。
会計ソフトでe-tax連携で申告しました(*^^*)
今年からは証憑の電子保管など携帯の利用する機会が増えそうです。
スマホで出来るとは便利ですね♪
まずは医療費の領収書の整理からしないと😅
去年からスマホで確定申告しています。 今年から源泉徴収票がカメラで読み取れ、数字を入力する必要がなくなりましたので少し楽ですね。ただ、またわかりにくいのは確かですね。
退会済みメンバー
退会済みメンバーさん
ビギナー
最近のスマホはマイナンバーカードに対応している(NFCのタイプB)

尚、おサイフケータイはタイプF(別物)、ちょっと古いSIMフリースマホ(海外仕様)だとタイプAで非対応が多い

e -Tax利用だと添付書類を省略できるから便利、マイナンバーカードがない人もプリントアウトして郵送できる
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