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生理は「恥ずかしい」ものじゃない 20年前に生まれた「ルナルナ」がこれから伝えたいこと

生理は「恥ずかしい」ものじゃない 20年前に生まれた「ルナルナ」がこれから伝えたいこと

波多野友子
ライター: 波多野友子
フリーランス編集者・ライター。興味のある分野はパートナーシップ、子育て、家族、ダイエットなど。タロット占いにハマり、絶賛勉強中。

2000年、当時ではめずらしい生理日管理ツールとして、サービスの提供を始めた「ルナルナ」。フィーチャー・フォン(ガラケー)の公式キャリアメニューとして登場した当初、多くの人の間では「女性の生理は隠すべきもの」といったネガティブイメージが強く、ルナルナ自体が社会的認知を獲得するのも容易ではありませんでした。

しかし2021年現在、ルナルナのアプリダウンロード数は約1700万人(2021年6月時点)。最近では性別を問わず、「パートナーと円滑なコミュニケーションを築くためのツール」として、サービスを活用する人が増えてきているといいます。

ローンチ20周年を迎えた2020年には、社会に向けて「女性が自分らしく生きることをエンパワメントしていく」というアプローチへ舵を切りました。これまでのルナルナのあゆみや新プロジェクトの背景について、運営会社であるエムティーアイの那須理紗さんに伺いました。

株式会社エムティーアイ ルナルナ事業部 副事業部長の那須理紗さん

サービス申請に7年、「恥ずかしいもの」と見られても当事者の役に立ちたかった

——改めて「ルナルナ」とは、どんなサービスなのでしょうか。

生理開始日を入力することで、次の生理日や排卵日、妊娠しやすい時期・妊娠しづらい時期を予測してくれるアプリです。メイン機能のカレンダーにはその日の体調やイベントなどを記録することもでき、長いスパンで女性の健康管理をサポートします。また「今日の指数」として、ダイエットに適した時期や体と心の状態など、女性が気になる情報をお知らせしたり、女性の体にまつわるコラムを随時更新しています。

ルナルナのアプリ画面。カレンダーは色分けやアイコン表示がなされ、生理周期や体調がひと目で確認できる

——ルナルナがガラケーのキャリアメニューとしてサービスを開始したのが2000年。当初はどんなコンテンツを提供していたのでしょうか。

那須さん
次回の生理日を予測してお知らせする、計算機のようなツールとしてスタートしています。「生理痛とは?」のように、症状などを検測できる医学書的な機能も備えていました。当時は、女性の多くが手帳やカレンダーを活用して生理日を記録していたようですが、ガラケーの登場により「プライバシーを守りながら生理日をデジタル管理し、疑問も検索できる」という面で、ルナルナの需要が高まっていった側面があったと聞きます。ちなみに当時は、月額有料サービスとして提供していました。

——当時、携帯電話で使える生理日管理ツールは他にはなかったんですよね。

那須さん
無かったと思います。導入にあたっては、大手携帯3社に公式のキャリアメニューとして採用していただけるよう申請を出したのですが、サービス内容が珍しいこともあり、簡単には審査に通らなかったそうです。3キャリアすべてに導入いただくまでには、7年もかかったと聞いています。当時はまだ、生理が社会的に「恥ずかしいもの」「隠すべきもの」という認識が強かったようですので、担当者もかなり苦労したようですね。

当時のサービス画面

——なかなか理解が得られない状況下でも、サービスの開発や導入を諦めなかったのはなぜですか?

那須さん
法規制やガイドラインなど、超えなくてはならない壁はいくつもありました。それでも粘り強くサービスを続けられたのは、とにかく前進し続けようという意味の「Try & Try」という社風や、「ルナルナが、必ず女性にとって役立つサービスでありたい」という担当者たちのブレない意志があったからこそだと思っています。また、アンケートに寄せられるユーザーさんたちの温かいコメントに背中を押された部分も非常に大きいですね。

——そもそも当時は、生理についてオープンに話す雰囲気がなかったですよね。

那須さん
そうですね。生理や妊娠の仕組みといった最低限の性教育は学校で行われていたはずですが、生理の不調に対して周囲がどんなコミュニケーションを取るべきか、どんな風にフォローすればいいのか、といった踏み込んだ議論が世間でなされてはいませんでした。そもそも生理について、当事者の女性でさえもあまり深く考えず、“当たり前の不調”として受け入れざるを得なかったのだと思います。

妊活のムーブメントを機に、ルナルナへの理解が男性にも拡がった

——そんな時代に、女性が自分の不調と向き合えるツールがルナルナだった、と。2010年代からはガラケーに代わってスマートフォンが台頭し、ルナルナも無料アプリとして配信されましたが、何か変化はありましたか。

那須さん
月額有料サービスから無料アプリとして生まれ変わったことは、当社のビジネスにとって大きな転換期となりました。売り上げ面で難しさはあったものの、重要な資産となるユーザープラットフォームを確立できたのがこの時期です。ダウンロード数が一気に増えたことで、生理に関する膨大な量のデータを蓄積できたことは、ルナルナにとって大きな収穫でした。

当時のアプリ画面

——2000年代には、サービスに対して社会的な理解がなかなか得られなかったとおっしゃいましたが、その点ではいかがでしたか。

私は2013年入社なのですが、2010年代を迎えてすぐの時点では、正直社会の目線が大きく変化したという感じはなかったようですね。多くの女性がルナルナというアプリを使い始めたけれど、まだ公に言及すべきではない、と言いますか……。ただ、この時代に「妊活」というワードが登場したことは、ルナルナの機能拡充に大きく影響を及ぼしたと思います。

——なるほど、「妊活」はこの頃から話題になり始めたんですね。

那須さん
そうですね。ルナルナでは2014年、蓄積してきたデータをもとに独自の「排卵日予測・仲良し日予測機能」の搭載を始めました。ユーザーはライフステージに合わせて生理日管理の設定が選べるのですが、「妊娠希望ステージ」という設定の中で、積極的に妊活をサポートするように機能を拡充したんです。これを機に、パートナー同士が一緒にルナルナを活用するケースが少しずつ増え始めて。男性にも、妊活という目的を持ってルナルナをダウンロードされる方が出てきたんですね。

——男性がルナルナをダウンロードするのは、センセーショナルだったのではないでしょうか。

那須さん
そうですね。ルナルナには、ガラケーの頃から「パートナー共有機能」が搭載されていたんです。当時から活用してくださる男性も一定数いたのですが、やはり世間的にも「男性がパートナーの生理日を知りたいなんて気持ちが悪い」という声や、女性側からも「自分の生理日をパートナーに共有するなんてありえない」といった厳しい声をいただく機会もあり、ほとんど普及しなかったという経緯があります。

——それが、妊活というムーブをきっかけに少しずつ普及するようになっていった、と。

那須さん
はい。そこから徐々に、「パートナーのホルモンバランスの乱れを知っておくことで、何かサポートできることがあるのではないか」という意識を持つ男性が出てきたと感じます。「今日生理なの? 機嫌悪いね」などと直接的に聞いてしまうと、場合によってはパートナーの感情を害してしまう可能性もありますから、ルナルナで不調を予測して対処していく、といった使い方をされているようですね。当社内にも、良好なパートナーシップを築くためのツールとしてルナルナを活用している男性社員がいます。

蓄積した15年分のデータを味方に、一歩踏み込んだ情報発信へ

——そう考えると、2010年代は男女ともに「相互理解を深めるためには、女性の体について情報共有が必要」という感覚が芽生え始めた年代とも言えそうですね。ルナルナ20周年にあたり、2020年に大きくブランドアップデートをされましたが、そういった潮目を意識されてのことだったのでしょうか。

那須さん
20周年を機に、これまでの「女性に寄り添う」という姿勢から一歩踏み込んで、「社会へ向けて女性が自分らしく生きることをエンパワメントしていく」ためのアプローチを目指すようになりました。2019年頃から「フェムテック(※)」というワードが日本でも知られるようになり、その社会的な潮流は確かにルナルナのブランドアップデートにも影響しています。日本におけるフェムテックパイオニアとしての自覚をもとに、例えばブランドロゴやブランドカラーを中性的な印象に一新しました。社会の変革期であることを意識するとともに、これまでの20年間を振り返り、改めてこれからのルナルナが目指す方向性を見据えた結果のアップデートですね。

※ Female(女性)とTechnology(テクノロジー)を掛け合わせた造語。女性の健康課題などをテクノロジーによってサポートする製品やサービスを指す。

——守りから攻めに転じていく、ということでしょうか。

那須さん
そういった意味もありますね。一方で、私たちが「変えなかったこと」も非常に大切だと思っています。この20年間、ルナルナのミッションの主軸は「女性の幸せの実現に貢献する」ことにありました。その温かさを重視したポリシーは、この先も変わることはありません。

——新しく「FEMCATION(フェムケーション)」という取り組みも始められたそうですが、詳しくお聞かせいただけますか。

那須さん
FEMCATIONは「FEMALE(女性)」と「EDUCATION(教育)」を組み合わせたルナルナ独自の言葉で、アプリ上でのコンテンツ提供だけに留まらない新しいプロジェクトです。女性の体と心について正しく学ぶ機会を創出することで、社会全体が寄り添いあえるような環境づくりを目指しています。

女性の体について学ぶ機会が少ないというのは、日本社会における大きな課題ですよね。そこで、医師や専門家の方の協力を仰ぎながら、企業向けの研修や一般の方を対象としたオンラインイベントなどを実施して、ルナルナとは直接接点がなかった方たちにも届くようなコンテンツを提供し始めました。

FEMCATIONの活動(公式サイトより)

——手応えはいかがですか?

那須さん
正直、「一筋縄ではいかないな」と感じることも少なくありません。もちろん女性活躍やSDGsの推進により、研修の必要性を感じてくださる企業は増えていますし、主に女性管理職の方の理解はスムーズに得られることが多いように感じます。一方で、FEMCATIONの取り組みに対して「女性だけが特別視されているのではないか」といった声を、意思決定をする立場の男性からいただくこともあります。依然として壁は厚いですね。

女性の体を理解することで、コミュニケーションはもっと円滑になる

——女性の体の仕組みや生きづらさについて伝えようとすると、どうしても「女性ばかりずるい」といった声が上がりますよね。SNSでもそういった論争や炎上をよく目にします。

那須さん
当事者ではない人が、相手の痛みや困りごとを本質的に理解するのは難しいことかもしれません。ただ、私たちが生きていく上では、性別を問わず協力しなければならないシーンは多いはずです。私生活でも職場でもそうですよね。相手とうまくコミュニケーションが取れないと悩んだとき、その原因はもしかすると体の違いから来ているかもしれない、と考えてみてほしいんです。

——女性によっては、生理が原因となる避けられない不調によって、心身に余裕がなくなるケースも多々ありますよね。

那須さん
そうなんです。相手とうまく関係構築ができないと感じたとき、それは人間関係の問題ではなく、ホルモンバランスによる不調が原因だった、といったケースが少なからずあるはずです。誤解による分断を生んでしまわないためにも、ぜひ女性の体の問題に少しでも関心を寄せていただければ、と願っています。

——最後に、これからルナルナが目指す展望について教えてください。

那須さん
社会に対し積極的に啓発活動を行なうと同時に、女性が自分自身の不調を自覚し改善できるよう、より一層理解を促していきたいと考えています。最近では、生理痛やPMSといった月経困難症の多くは、治療により改善することもできます。医学的知識と体のメカニズムをセットで理解することで、必要に応じて通院できるようになること。それこそが、女性の生きやすさや働きやすさを実現するための第一歩になるはずです。ルナルナとしては、コンテンツの提供やFEMCATIONの活動を通して、その後押しを今後も続けていきたいですね。

ルナルナ
iOS版ダウンロードページ
Android版ダウンロードページ

(編集:ノオト



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160 件のコメント
1 - 10 / 160
ワイも感染症対策として基礎体温の記録にルナルナを使ってますが若い女性に見られるとトラブルに巻き込まれる危険があるのでダークモードの様なジェンダーニュートラルモードを追加してください🙏
ピンクの画面がまずいのです∈(゚◎゚)∋💦
私は55歳男の鍼灸マッサージ師です。
有益な情報ありがとうございます。
予備知識として頂きました。
患者さんとの会話にも利用させて頂きます。
ルナルナ、妊活中でない人には使いづらかったので、すぐに利用をやめたような……。

最近は男性の利用者さんもいるんですね。
毎月のものですので、パートナーの理解に繋がることはとても良いことだと思います。
良いアプリですね。
アプリの情報をいつもありがとうございます。
以前部下の女性で生理休暇を取得していたのを思い出しました。ただその女性以降生理休暇を取得したいという女性には出会っていません。残念です。
今は妊活中の女性がいて応援しています。
以前利用していたこのようなアプリで、体調の気になることなども書き込みをしていたのですが、突然全データが消えたことがあり…本当にショックでした。

時代とともに変わり利用しやすいアプリは良いですね。
公にするものでもないと思いますが、隠すものでもないよ、とこうやって発信してもらえるのはありがたいです。
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