スタッフブログ
ARでもVRでもない「MR」とは? ドコモ「Magic Leap 1」を体験してきた

ARでもVRでもない「MR」とは? ドコモ「Magic Leap 1」を体験してきた

井上マサキ
ライター: 井上マサキ
ライター&路線図研究家。宮城県生まれの二児の父。好きな路線図はロンドンと横浜市営地下鉄。著書に『たのしい路線図』(グラフィック社)。

去年の今ごろと比べ、家の中で過ごす時間が大幅に増えた方も多いでしょう。平日は在宅で仕事をしたり、休日はオンラインライブを楽しんだりなど、生活のなかで「リモート」がすっかり当たり前になりました。

そんな「リモート」をさらに発展させるものとして、「バーチャル空間」が注目を浴びています。VRプラットフォームで音楽ライブを配信する、といったエンタメ分野だけでなく、製造業の現場作業にVR技術が使われたり、コンビニでVRを使った遠隔操作ロボットによる実証実験が行われたりなど、ビジネスの分野でも広がりを見せています。

バーチャル空間といえば、AR(拡張現実)やVR(仮想現実)がおなじみですが、近年では現実空間と仮想世界を融合させた「MR(複合現実)」の開発が進んでいます。

MR空間のイメージ(提供:Magic Leap)

米Magic Leap社が開発したウェアラブルデバイス「Magic Leap 1(マジック リープ ワン)」もそのひとつ。いったいMRとはどんなものなのか、実際にMagic Leap 1を体験してきました。

「現実世界と仮想空間が融合」MRの世界を体験する

訪れたのは、JR高輪ゲートウェイ駅そばで開催されていた「Takanawa Gateway Fest」の特設ブース(現在は終了)。

そもそもMagic Leap 1で体験できる「MR」とは何なのか、日本国内でMagic Leap 1を販売しているNTTドコモの、ビジネスクリエーション部XRビジネス推進担当部長の奥村浩之さんにお話を聞きました。

——基本的な質問ですが、「VR(仮想現実)」と「AR(拡張現実)」と「MR(複合現実)」は、何がどう違うのでしょうか?

奥村さん
VRはヘッドマウントディスプレイを装着して、目の前に映し出された世界を体験します。外の世界とは切り離されて、ひとりで没入するイメージです。ARはスマホで手軽に体験でき、画面で現実世界にキャラクターを登場させることができますよね。

——「Pokémon GO」で、その辺にポケモンがいるような感じになるアレですよね。

奥村さん
MRは、VRとARの双方の要素を持っていると考えてください。現実の世界にさまざまなコンテンツを持ってきて、現実世界と仮想空間が融合した形になるんです。言葉で説明するよりも、さっそく体験していただきましょうか。

左から「Lightwear」、「Lightpack」、「Control」

Magic Leap 1は、ゴーグル型の「Lightwear」、肩からさげる「Lightpack」、手元で操作する「Control」の3つからなるデバイスです(体験デモではControlを使いませんでした)。

パソコンに例えるなら、Lightwearがディスプレイで、Lightpackが本体といったところ。CPUやストレージなどはLightpackに搭載している分、頭部に装着するLightwearは約300gと軽量にできています。

VRのようにすっかり視界をふさがれるわけではなく、ゴーグルからは普通に外の景色が見えています。サングラスをかけた視界とほぼ同じだと思ってください。

ただ、ブース内に設置された円形のモニュメントを見ると、円の中に映像が映っているんです。プロジェクションマッピングで投影したみたいに円に映像がピッタリはまっていて、こちらが左右に動いても円から映像がズレません。

でも、Magic Leap 1を付けていない人には映像が見えないので、筆者が「へぇ~!」と言いながら左右に揺れているのをただ眺めるだけになります。

奥村さん
Lightwearにはカメラと9つのセンサーが搭載されています。コンピュータが現実空間にある「円形のモニュメント」を認識し、そこに映像をリアルタイムに融合させて、Lightwearに表示しているんです。

宙に浮いているボタンに手をかざしています

映像の指示に従って右手を伸ばすと、手の甲にカラフルなドットが現れました。センサーが手の動きを認識している証拠。手をかざすと、仮想空間に浮かぶボタンを押すことができました。

本人には目の前でスイッチが浮かんでいるのが見えている(イメージ)

SF映画によくある、空間に浮かんだディスプレイを操作するアレ、あれができている……!

Magic Leap 1を装着した際に見える映像のイメージ(提供:Magic Leap)

デモでは、高輪ゲートウェイ駅を出発点に、フランスとタイを案内する映像が流れます。フランスでは、エッフェル塔が地面からニョキニョキと登場し、小さな凱旋門が目の前でクルクル回ります。シャンゼリゼ通りの気候や交通情報が宙に表示される場面も。

タイでは、奥から走ってくるトゥクトゥクに手を挙げて止め、レストランで目の前にタイ料理のお皿が登場し、最後のアユタヤ遺跡では円の中から巨大な像が登場して思わずのけぞりました。

「象だ!」(イメージ)

繰り返しますが、VRのように目の前いっぱいに映像だけが表示されているわけではなく、ブース内の景色にこれらの映像が「重なって」表示されています。本当に地面の位置からエッフェル塔が生えたりするわけです。体験してはじめて「複合現実」の意味が分かりました。

浮かぶ心臓!自分の部屋に上司! Magic Leap 1の幅広すぎる用途

——「現実空間と仮想空間の融合」と仰っていた意味がわかりました。これは面白いですね!

奥村さん
それはよかったです。体験していただかないと、なかなか分からないですよね(笑) 。

——Magic Leap 1は既に発売されていると聞きました。

奥村さん
AR、VR、MRなどをトータルに含めた「XR対応製品」として、日本では6月に発売を開始しました。法人のお客様やクリエイターの方を中心に購入いただいています。

——実際にどんな使われ方をされているのでしょうか。

奥村さん
ゲームのコンテンツや興行型イベントでの活用など、エンタメ分野が一番分かりやすいですね。アメリカでは医療分野の事例もあります。心臓の外科手術をする前に、Magic Leap 1をかけたお医者さんたちが集まって、心臓のモデルを一緒に見ながら「ここから切ろう」と情報を共有する……という使われ方もされているんです。

医療現場での活用イメージ(提供:Magic Leap)

——同じモデルを一緒に見たり、手を加えたりすることもできるんですね。

奥村さん
そうですね。例えば教育分野でも、テーブルの上に仮想の教材を出現させて、全員で同じものを見ながら学習する、という使い方もあると思います。

あとは会議での活用ですね、コロナ禍ということもあり、Magic Leap 1で遠隔会議を行うニーズもあります。私たちも実際にMagic Leap 1で会議を行ってるんですよ。上司や同僚のアバターが自分の部屋に登場して、立ったり歩いたりして(笑)

——アバターとはいえ、上司が自分の家に来るのは何となく抵抗がありますが……。

奥村さん
今日のデモでは使いませんでしたが、コントローラーを使うと細かなジェスチャーも伝えることができるんです。一般的なリモート会議でも映像と声は伝わりますが、動きも交えることができるのはMRならではの新しい体験ですね。MRのコンテンツは5Gの特徴である「高速・大容量・低遅延・多接続」とも非常に親和性が高く、観光産業やショッピングなどさまざまな分野での活用が期待されています。

Magic Leap 1は「次のスマホ」になりうる存在

——先ほど「遠隔勤務のニーズがある」と伺いましたが、やはりコロナ禍の影響で仮想空間に注目されているのでしょうか。

奥村さん
遠隔でもリアルに近い体験をできるサービスとして、MRに着目いただいている面はありますね。かつては数十人、数百人が実際に集まっていたものを、Magic Leap 1のようなもので代替できないかと。

——数百人がMagic Leap 1を使って……となると、これから個人向けにどんどん普及させていきたいところですよね。

奥村さん
Magic Leap 1は、まさに「ポストスマホ」になりうる存在だと考えています。デモではブース内で映像を融合させましたが、屋外で「遠くから仮想空間にいる人が歩いてくる」といった見せ方もできるんです。普通のサングラスのように軽量化できれば、屋内/屋外を問わずさまざまなコンテンツが展開できるでしょう。生活の一環として、MRを始めとしたXRが普及する未来に向けて取り組みを進めています。

——5Gが当たり前の世界になったら、もっとリッチなコンテンツが楽しめそうです。

奥村さん
そうですね。5Gの「ネットワーク」、Magic Leap 1やスマホといった「デバイス」、そして「サービス」の3つを進化させながら、国内のXR市場をけん引できればと考えています。

そのために、体験の場はもっと増やしたいですね。コロナ禍で大々的に展開するのは難しいのですが、「ドコモが言うMR、XRとはなんだろう」という疑問に「まずは体験してみてください」と答えられる場を用意していければと思います。

街中でポケットから取り出したサングラスをかけると、看板が動き出したり、浮かび上がったメッセージに返信したり、目の前に友人のアバターが現れたり……。なんだか楽しい未来になりそうです。Magic Leap1が体験できるスポットはドコモの公式サイトから確認できます。機会があれば、現実と仮想が混じり合った不思議な空間をぜひ体験してみてはいかがでしょうか。

(編集:ノオト





178 件のコメント
1 - 28 / 178
体験してみたいっ!
このへんの話は、特に医療分野の外科手術やバイパス手術で活かしてほしい分野ですね。

その実現には、5Gまたは次世代通信が病院(できれば全部の大学病院や総合病院)に張り巡らせることが重要だと思います。
面白いです(*´ω`*)今に一般的にもなるのでしょうね。
様々なことに役立つと良いですね~☺
眼の悪い人がリアルに眼の前の景色が見えるような技術開発が進むといいと思います。
技術が進歩してアバターの精度が上がって現実の人と区別がつかない💦なんて日が来るのでしょうか❓ゾッとします🤣
興味深いお話有り難うございました。実際に体験してみたいです。実生活にどのように活かされていくのか今後が 楽しみですね。
ここまで開発が進んでいるんですね!医療分野にも使用されているとは驚かされました。遊びだけでなく、もっと活用されていくといいですね~
今一番注目されている分野は医療分野で、特に外科手術ですね。私の友人の若手医師たちも、必死で研究開発チームを立ち上げて、企業さんと産学一体で、開発に取り組んでいます。
高度な手術経験が必要なときも、地域の病院で手術ができれば、多くの命が救えるので、期待したいです。
近い未来には裸眼で見るだけでは勿体ない!より付加価値のある景色を!なんてトレンドも流行るんでしょうかねえ〜??
面白かったです。いつか体験してみたいです😃

医療分野にも役に立つ技術ということが何よりも嬉しいです!早く普及すると良いですね😄
MRって何かな?と思いましたが、なるほど!です😀
この世自体が仮想現実ではないかと疑っている
面白い技術ですね。

その昔は、万博のような所でお披露目、そしてゲームセンターで民生用と
いうか手軽に経験出来るような流れが主流だったように思います。

家庭では経験出来ない大型筐体を置くゲームセンターがコロナと不況の
ダブルパンチでバタバタと倒れていくのが残念です・・・
まあゲームセンターでは新しい技術が開発されにくくなってから久しいです
が・・・

5Gに無理につなげようとしてる感も否めませんねぇ。
現状の光回線でwi-fi経由でも接続相手サーバーの距離にもよりますが
スマホでping/レイテンシが10ms前後でこれでも遅延というのかどうか・・・

環境や混雑・相手サーバーの距離にも影響しますが現状の4G/LTEでも
ping/レイテンシが数十msでも足りない用途というのが愚かな私にはちょ
っと想像がつかない世界です・・

音楽領域で演奏家たちをつなぐネットは遅延を極力減らすためにP2P
通信している音楽ソフトウェアもあります。

自動運転は数msが命取りになりそうですが、そもそも自動運転専用レーン
じゃなくヒトが運転する車と混在させても絶対的に安全なのかどうかよく分か
りません・・・

まあ新しい技術をどう転用して身近なものにしていくのか興味津々です!
上司や同僚のアバターが自分の部屋に登場… って
ホラー!

日本でも医療機関で普及して難しいオペに貢献してほしいです✨
是非、体験するなっし~!
すごい技術ですねぇ😆
更に発展し便利な世の中になれば良いですねぇ😄
素晴らしいです🤗
もっともっと身近になってHAPPYな活用に😄
お疲れ様でさ。
ゲームを全くしないので、エンタメ分野での利用、応用は、門外漢。

さて、、、他の分野での利用は、、、医療での遠隔診療や手術?
建設分野では遠隔操作、、うーん自動運転と合わせ技。
オンラインショップで、、うーん元気な明るい販売員さんに薦められたい!
災害対応、、うーん大いに役立つ!?

様々な分野での活用が実現するのはハッピー。凄い凄い。
バンドのライブ配信がこれなら目の前で演奏してくれている様になるのかな!!!!?とワクワクしました。
スマホ画面もうかびあがってくる時代になりそうですね!!!
AR、VR、MR……難しいですが
技術が進歩してるんですね😊
XRが普及して便利になる未来を
楽しみにしています♪😌
素晴らしい!
最近ニュースで暗い記事を見ました。
女性の自殺者が増えているとの事です。
是非視覚から脳内へ勇気と希望を何度もすりこめるようにお願いしたいです。
絶望感を救える方法になり得ますね
興味深い技術ですね。
多方面に色々活躍しそうですね。中でも ~、地域医療に貢献して欲しいですね。
色々研修 ~模索段階の物も有ります。が、使用する側の👀目の負担〜〜、、
色々色々ーーークリアして〜、分野ごとに明るい兆しなぅ〜❗️
だから、ココ❣️ブログにて近未来予想図を、拝読出来る今日なのですね。
技術者のクルーの皆様〜宜しくお願い致しますね。応援致しております。
自分にはそんなに必要ない技術かなと思ったけど、ライブがより臨場感あるように観れるとかは興味あるかも!
あとは、この技術で誰かの助けになるならそれはとても興味深いです。
コメントするには、ログインまたはメンバー登録(無料)が必要です。