Twitterのリプライがきたら知らせてくれる「IoT矢文」を作った
2013年から、YouTubeチャンネル『無駄づくり』を開始し、無駄なものを作り続ける。
生活の中に緊張感が欲しい。平和な日常を送れていれば幸せなのかもしれないけれど、やっぱりちょっとしたスリルが欲しくなってしまう。
スリルが欲しいあまり、Suicaの残高を確認せずに改札に向かってみた。なにしてんだろ、私。そんなものじゃ、私のスリル欲は満たされないよ……。
矢文が飛んでくるくらいの緊張感が欲しいのだ。
時代劇とかアニメで、矢文を受け取るシーンをよく見る。果たし状とか、機密情報が書かれた紙をくくりつけた矢が、顔をかすめて背後の壁にささる。とても緊迫したシーンだ。
矢文は、インターネットなんてあるわけがない遠い昔の通信手段。ウィキペディアで調べてみると、矢文には利点が9つもあるようだった。2つ抜粋してみよう。
「直接渡さないため、正体を明かさずに済む」
「弓矢を持っていることを示せるため威嚇できる」
なんでも、中世の日本では、矢文に相手の悪口を書いた紙をくくりつけて飛ばしていたらしい。引くくらい陰湿である。
なるほど、匿名で威嚇するために矢文を使っていたのか……。そして、相手の悪口を送る……。匿名で、威嚇、悪口を書く。いや、これ、現代でもあるぞ……。インターネットだ!
みなさんも一度は見たことがあるかもしれない。匿名で書き込まれた誰かの悪口を……。そして、TwitterやInstagramなど、SNSユーザーが増えてからというものの、本人に届く形で心ないことを言ってくる匿名ユーザーはとても多くなった……。私もたまにひどいことを言われて、ガラスのハートがコンクリートに打ち付けたスマホの画面のようにバキバキになっている。
ということは、Twitterでのリプライは、本質的には矢文と同じというわけだ。
「Twitterでリプライがきたら矢文でお知らせしてくれるマシーン」を作ることで、現代の矢文ができるかもしれない……。そして、より緊迫感のある日常を送ることができるはずだ。思いついてしまったので、作るしかない。
ひとまず設計図を書いた。Twitterの通知がきたら矢文が放たれる。そんなマシーンを作りたいのだが、実際に弓矢を放つのはとても危険だ。命は惜しいので、角度を調整できるモーターを使って、矢を背後の壁に打ち付ける仕組みを考えた。
Twitterの通知がきたら角度が変わって動く、そんなIoTデバイスにしたい。
IoTとは、Internet of Things(インターネット・オブ・シングス)の略で、インターネットと物をつなげる技術のこと。AmazonやGoogleが出している「スマートスピーカー」がその代表で、話しかけると、音楽をかけてくれたり天気を教えてくれたり、なんかもう、いっぱいいろいろなことをやってくれるやつだ。
その技術を使って、矢文を作っていきたい。なので、今回はMESH(メッシュ)というデバイスと、IFTTT(イフト)というサービスを使う。
まずMESHは、電子工作がとても簡単にできるすごいやつだ。四角いブロックに先ほどのサーボモーターをつなげて、スマホのアプリで操作するだけで好きなように動かせる。
普通、こういうモーターを動かすときは、プログラムを書いたり基板を作ったりしなくてはいけないのだが、MESHさえあればそういうのはいらない。とにかくすごい。すごいということだけでも伝えたい。
そしてIFTTTは、インターネット上のサービス同士をつなげられる。TwitterとMESH、この2つのアプリをIFTTT上でつなげれば、「TwitterにリプライがきたらMESHを動かす」なんて仕組みを作ることができる。
これも、普通にプログラムを書こうとすると専門知識が必要になるけれど、IFTTTを使うことで簡単に望み通りのものができてしまう。とにかくすごいのだ。この世はすごいものばっかりなのだ。
木の棒で矢を作り、穴をあける。
そして、その穴に金属の棒を通す。この棒を先ほどのサーボモーターに取り付けると、矢を動かせるようになる。
マシーンを背負えるように、板にリュックサックの紐みたいなものをつけてみた。
「Twitterでリプライがきたら矢文でお知らせしてくれるマシーン」が完成した。これで現代に矢文を返り咲かせることができるはずだ。
写真を見ても、なにがなんだか分からないだろう。リュックのようになっていて、背負うことで初めて機能する。
黒いヒモに腕を通して、
反対側も通して、
グンっと押し込むように背負う。
装着完了。
背負うのがめちゃくちゃ大変だった。姿勢がピンとして、クールな顔をしているが、ヒモが肩に食い込んでいてつらい。しかし、これを背負って生活することで、緊張感が生まれるというわけだ。
それでは、使ってみることにしよう。Twitterで私宛のリプライがくるとマシーンが動く仕組みなので、ただじっと待つ。
じっと、待つ。
カタン
動いた。
自分で作ったのに、まあまあな恐怖がある。やっぱり“矢”ってめちゃくちゃ怖いな。
そして、矢にくくりつけられた紙には「スマホを見ろ」のメッセージが。完全な二度手間ではあるが、これが現代によみがえったIoT矢文なのだ。そういうことにしておいてください。
メッセージに従って、恐る恐るスマホを見る。一体、匿名ユーザーからどんな罵詈雑言を浴びせられているのだろう……。
ね、猫ちゃんだ……! きゃわいい……。
辛さのあまり猫ちゃんの画像を欲している私の身を案じた方が、画像をリプライしてくれたのだ。やさし。
矢文が打ち付けられるというちょっとした恐怖を味わってからの猫。なんだこれは。普通に猫の画像を見るよりも、1億倍かわいく思えちゃうじゃないか。きゃわきゃわじゃないか。
気を取り直して仕事をする。
いつもはダラダラ仕事をしてしまうけれど、矢文があることで緊迫感を持って集中できるかもしれないなーと思いながら、YouTubeでお料理動画を見ている。
カタン
矢文が届いた。
きっと、次こそは匿名ユーザーから怖いリプライが届いているはずだ……。ああ、怖いな。ひどいこと書かれていたらどうしよ……。
きゃわ〜〜。猫たんがいっぱいで、めちゃくちゃきゃわわ〜だ。きゃわわすぎる。きゃわ丸水産24時間営業だ。
かわいさを表すボキャブラリーがなくなるほどに、かわいい画像が届いた。Twitterは現代の矢文だと思っていたけれど、実は、猫ちゃんの画像送受信マシーンではないか。
仕事の休憩として、外でのほほんとしている最中にも矢文は届く。
一気に緊迫感が走るぜ……。
一体、次はどんな猫ちゃん画像が届いたっていうんだよ……。
はあ、きゃわいいなあ……。舌をしまい忘れている猫がこの世で一番かわいいんだよ。そのモフモフの毛に顔を埋めて深呼吸したい。
次々に猫の画像が送られてきて、その度に矢文が顔をかすめる。
一人ぐらい罵詈雑言を送ってきてもおかしくないはずなのに、みんな優しい。Twitterユーザー、優しい。
それにしても、矢文の緊迫感と猫ちゃんの画像。これは、マリアージュかもしれない。まだ誰も発見してこなかった、最高の組み合わせだ。今度から人に猫の画像を送るときは、矢文で送ることにしようと思う。
たくさんの猫の画像を見ることができて、とても満足だった。……あれ、私は一体何のために何を作ったんだっけ。スリルがどうとか冒頭に書いていたけれど、私はこのマシーンを作って思った。日常にスリルはいらない。必要なのは猫だ。猫こそが最高なのだ。
(編集:ノオト )
https://www.arrow-arrow.com/
便利な物があるんですね。
DIYで使えそうですね。
MESH、IFTTTでググると、色々と面白いネタがありますね。
https://deviceplus.jp/hobby/mesh-03/
参考にしたいと思います。
きゃわ丸水産w
可愛い猫画像ありがとうございます!
頭カチコチの私に爪の垢をめぐんでいただきたい。
IFTTTは便利なんで結構使ってます。