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22年前のワープロ「書院」で原稿を書いてみたら、PCへの感謝が深まった

22年前のワープロ「書院」で原稿を書いてみたら、PCへの感謝が深まった

辰井裕紀
ライター: 辰井裕紀
ローカルネタ・ガジェット・卓球が好きなライター。過去に番組リサーチャーとして秘密のケンミンSHOWなどを担当。

20世紀のデジタル遺産、ワープロ(ワードプロセッサ)。文書作成・編集・印刷のための OA機器です。

ビジネスからプライベートまで、文書を作成する機械として大活躍しました。しかしPCの普及とともに売上が落ち、2003年9月には生産中止に。

筆者の手元には、1997年にシャープから発売されたワープロがあります。その名も、書院「セリエ MR-2」。書院はシャープが販売していたワープロ専用機のシリーズです。

▲こちらが、書院「セリエ MR-2」

今これを使って「原稿」を書いてみると、どんなことが起こるのでしょうか? そもそもちゃんと書けるのでしょうか? やってみました。

ワープロ後期の万能型

セリエ MR-2の希望小売価格は、28万円(税別)。多種多様なソフトによる文書作成機能に加え、当時としては高速な33.6Kbpsのモデムも内蔵。インターネットやパソコン通信も楽しめました。

画面サイズは、当時としては業界最大の12.1インチ。同じ画面サイズの2017年製のノートPCと比べると、そのサイズの違いは歴然。

また、プリンターやスキャナーが搭載されているためか、重いのが特徴でした。なにせ筆者が現在使っているノートPCが重さ1キロほどに対し、ワープロは8.6キロです。

▲持つと、その大きさから「家電」という感じがする

▲厚みもすごいぞ

いざ、ワープロの世界へ

電源を入れて、起動します。

画像

▲ハードディスクの「カココココ……」という動作音で、当時の趣きを感じる

搭載されているハードディスクは、当時としては大容量の1ギガを誇っていました。

液晶ディスプレイは、現在、携帯電話や携帯ゲーム機などに幅広く使用されているTFT液晶ではなく、DSTN【※1】カラー液晶を使用しています。この色合い、なつかしい。
※1 製造コストが安いというSTN方式の長所を活かしながら、表示品質を高めた液晶ディスプレイの表示方式

20秒ほどですべて立ち上がりました。当時のWindowsよりは、だいぶ早い印象です。

▲こちらが「メニュー1」側のソフトたち。メニューはPCでいうところのデスクトップ画面のこと

▲「メニュー2」側のソフトたち

ワープロを使ったことがない人は「見慣れないソフトが並んでいるな」と思ったのでは?

ワープロの時代はワープロメーカー独自のソフトを使っていました。WindowsやMacのPCにはないソフトが並んでいるのです。

▲指ではなく、タッチペンで操作する

画像

▲こんな感じで選択して、ページを開く

ちなみにちょっとスグレモノなのが「らくらく自動文書作成」。挨拶文やビジネス文書に使われる定型文を、最速1分で作れます。

こんなテンションの質問が表示され、選択肢の中から該当する項目を選んでいくと……、

このように、文章がさくっと作れます。

記事を作成しよう!

さて、ここからは実際に、ワープロを使って原稿を書いてみたいと思います。

マイネ王の原稿はいつもWordで作成しています。まずは、Wordのように文字の打ち込みや、画像の挿入ができるソフトを探しましょう。

ワープロ内に入っているソフトを一通り調べてみて、最もWordのように使えるソフトは「文書デザイナー」だと判断。

こちらで原稿を作成してみましょう。制作手順は次のとおり。

1. テキストを入力する
2. 画像を挿入する
3. 印刷する
4. 担当編集者に提出する

ちなみに、今回の記事の原稿を書きます。うまくいくかわかりませんが、やってみましょう。

PCと勝手がちがう、文字入力

ワープロはもともと、文字を打つ専用機です。打ちやすいイメージを持つ人もいるでしょう。しかしすでにPCに慣れた身としては、ちょっと不自由さを感じてしまいました。

画像

▲変換のされ方がPCと違い、戸惑う(5倍速)

一番悩ましいのが、「ん」を出すために「N」を2回打つと、「んん」と出てしまうところ。

▲ちゃんんと

PCの文字入力ソフトとは微妙に操作方法が違う、実行キー(PCでいうエンターキー)が右下にある、おまけに小さいので押しにくいなど、PCのキーボードとは、だいぶ勝手が違います。なかなかのツラさです。

画像を挿入する

1. テキストを入力する
2. 画像を挿入する←イマココ
3. 印刷する
4. 担当編集者に提出する

カメラで撮影した写真のデータをワープロに取り込みたいのですが、できないことが判明。

外付けのフロッピーディスクドライブをPCに接続して、フロッピーディスクに画像を入れて、それをワープロで取り込む……という方法も思いついたのですが、いざ取り込む際に謎のエラーが出て、どうしてもデータを移せませんでした。

そのため、画像を紙に印刷し、スキャナーでその紙を読み込み、文書デザイナーに挿入していくことに。もはや「意地」としか言いようがない原始的な作業を続けていきます。

▲画像編集機能もあり、見やすいレイアウトでよりよく調整できた

これを文書デザイナーの編集画面に次々と貼っていきます。おかげで少しずつ記事らしくなってきました。

記事としての体裁が整ってきた!

印刷しようとしたら……

地道な作業を機械的に続けていき、思うようにいかないワープロの変換にも耐えながら、いよいよ念願のときを迎えました。

記事がようやく完成!

1. テキストを入力する(済)
2. 画像を挿入する(済)
3. 印刷する←イマココ
4. 担当編集者に提出する

次は印刷に移りたいところですが、ここで大問題が発生。

プリンターが壊れていました。

貴重な純正インクも購入して試しましたが、使用できず……。

印刷の代替案として、文書デザイナーのデータをフロッピーディスク経由でPCに移す→そのデータを編集者に提出という手を考えました。

しかし、そんなことが本当にできるのか……?

昔のようにサポートや説明書があればすぐ調べられたのですが、セリエ MR-2の説明書は現在、入手困難。しかも、シャープの相談窓口は2014年1月31日をもって閉鎖されています。

本来は3種類付属する説明書のうち、1冊のみネットショップで購入できたので、いろいろ調べてみることに。

すると、PCとワープロは思っていたより互換性がないことがわかりました。そして、どうやら文書デザイナーで作ったファイルも、外部ソフトとの互換性がなさそうです。万策尽きた……。

ワープロの画面を撮影→PCで画像を印刷することに

苦肉の策として、「画面を撮影して、その写真を印刷する」という荒業に打って出ました。強引すぎる。

まず、こんな感じでワープロの画面を撮影する。

それをプリンターで印刷していく。

こちらが印刷したもの。独特の色合いだ。

これを編集者のもとへ郵送することで、原稿として扱ってもらうのです。往年の作家やライターはみんな原稿用紙で提出していたんだから、いけるはず。

1. テキストを入力する(済)
2. 画像を挿入する(済)
3. 印刷する(済)
4. 担当編集者に提出する←イマココ


 

印刷した原稿を封筒に入れて投函しました。担当編集者のもとへ届け。

しかし数日後、僕のもとにひとつのメッセージが届いたのです。

確かに……。Webメディア用の原稿を紙で作っても、結局Web上で入稿するのだから、それは二度手間ですよね……。

結局、PCに入っているWordで原稿を打ち直すことになりました。いったい筆者は何をやっているのでしょうか。

ついでに、いろんなソフトで遊ぼう

前述のとおり、ワープロにはさまざまな独自ソフトが入っていました。ついでにいろいろさわってみましょう。

まずは、ワープロでファックスを送れる「マジカルファクス」

お次は、表計算ソフト「書院カルク」。Excelと同様、関数も使えました。

辞書は国語辞典、漢和辞典、英和辞典、和英辞典の4つがそろっていました。

写真やカラーイラスト付きのハガキ、おしゃれなチラシ、案内状を作成できる「アート倶楽部」。見ものは“おまかせ作成機能”。目にも止まらぬ早さで、自動でチラシを作ってくれました。

画像

▲恐ろしい(?)スピードでチラシができていく

▲できあがり

文書をスキャンし、活字として認識できる「日英混在文対応 活字文字認識-OCR」も搭載されていました。

▲この書類を文字として認識できる?

▲精度は微妙。不具合で、ハンディースキャンしかできなかったからか?

パソコン通信機能も搭載しており、現在でもデモ操作は可能。今は無きニフティサーブのターミナル画面が表示され、そこから各フォーラムへアクセスできます(書き込みはできませんが)。

▲ちょっとポップなターミナル画面だった

▲「アクセスポイント一覧」などが、当時をしのばせる

さらにインターネットにもトライ。文字化けが多くなかなかまともにページが表示できませんでしたが、Googleや、昔からある「侍魂」などのテキストサイトは表示できました。

▲Google画像検索は表示できる

PCにバトンをつないだ名ランナー

今回の検証を通して、PCとの親和性が予想以上に悪いことがわかりました。当時ワープロからPCに乗り換えたユーザーも、データが移動できなくて困ったようです。

我々日本人が20世紀に置き忘れてきた「ワープロ」。今触るとちょっと不便ですが、和文タイプライターの時代から比べれば、文書作成をグッと楽にしてくれた歴史上の一機です。

次のPCへとバトンを渡した、名ランナーとしての片鱗も感じることができました。

編集:ノオト





60 件のコメント
1 - 10 / 60
https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1801/27/news005.html
ここの記事ににている気がするのは、自分だけ?
21年前と22年・・・。
大学時代に、ワープロでレポートを作っていたのを思い出しました。

インクリボンで印刷するか、感熱紙で印刷するかの2通りで、フォントも明朝体orゴシック体しかありませんでしたね。...で、レポートはフロッピーディスクに保存していましたね。

今はWi-Fiでプリンターに飛ばして印刷できるので、テクノロジーの進化には改めて驚きますね♪
pin2
pin2さん
レギュラー
書院、ばあちゃんが持ってたなぁ、いつの間にかワープロはやめてWindowsパソコン使うようになってました。
退会済みメンバー
退会済みメンバーさん
ビギナー
出尽くしたネタっぽいっす。
歴代Windows1から10までの検証ネタなら大変面白い。
退会済みメンバー
退会済みメンバーさん
ビギナー
35年ほどの昔。日本語入力は(机ぐらいの大きさの)ボードに並んでいる字をタッチペンのようなもので選ぶ。そのボードにないものは専用辞書(?)でコードを探して入力。それでもないもの(®マークなど)を自社で作成。

保存版の手順書をB5で作成すると入力印刷できる範囲が決まっているので、収まりにくいということで、A5サイズで作成しB5サイズにコピーし直す。
いろいろ、手間がかかっていたな〜
25年程昔、NECのワープロで自作小説を打ち込み、インクリボン節約の為と感熱紙へ印刷し、それを日なたに置いていたら、紙が真っ黒になって泣いた。
楽しい小学生時代の思い出です。(笑)

今の子は、ワープ郎とPC郎って知らないだろうなぁ。
ワープロなつかしいですね、持ってはなかったけど
荒い画面と印刷も懐かしい
写真もこんなかんじでしたよね(^ν^)
私が学生の頃はワープロどころか和文タイプライターすらなかなか置いてある研究室が無く、レポートも卒論も全て手書きでしたね。

ちなみに、中学の頃はコピーも無くてガリ版スリでした(笑)
ワープロ専用機懐かしいですね。(^^

うちには昔、富士通 OASYS 30LX401があったので小学生くらいの頃には
結構触っていました。(^^ゞ

・OASYS 30LX401 LX405 カタログ
http://www.ykanda.jp/catalog/30lx/30lx401.htm

>Airepx-in-峰尾さん
似てるというか著者が同じ方ですね。(^^;
Kanon好きさん

おお!! 同じとは気が付かなかった。

書いている人が、毎年、同じネタと言うか内容でお金設けしているのね・・・。
いいなぁ、ライターってなるなぁ・・・。
この方法なら、毎年22・23・24年って記事を書いて、どこかが採用すれば、ご飯が食べられる(^_^;)

マイネ王さんって、原稿チェックの時に、他のサイトで同じネタとか「記事の使いまわし」のチェックをしていないのかね。
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