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【検証】日本初のスマホ「W-ZERO3」でネット閲覧は可能なのか?【2005年製】

【検証】日本初のスマホ「W-ZERO3」でネット閲覧は可能なのか?【2005年製】

辰井裕紀
ライター: 辰井裕紀
ローカルネタ・ガジェット・卓球が好きなライター。過去に番組リサーチャーとして秘密のケンミンSHOWなどを担当。

iPhone 3Gが日本に上陸したのは2008年7月11日。そこからスマートフォン時代が到来しました。

さらにその3年前、2005年12月14日。ウィルコム(現Y!mobile)から発売されたPHSが、日本初のスマホ【※1】であるW-ZERO3(端末名:WS003SH)でした。
※1 意見は分かれるものの、W-ZERO3が日本初と定義する声が多い

まだガラケーといわれる従来型の携帯電話が主流のなかで、W-ZERO3は半年足らずで15万台ものヒットを記録。日経MJの2006年上期ヒット商品番付にも入りました。

この成功で大手メーカーが次々とスマホ市場に足を踏み出したのです。


日本初のスマホを購入しよう

当時PHSを使っていた筆者は、W-ZERO3に興味を持っていたものの諸事情で買えませんでした。

10年以上の時を経てようやく手にできる期待に胸をふくらませつつ、状態の良い中古品をメルカリで購入(送料込みで、2,998円)。

さっそく開けてみましょう!

▲ウィルコムロゴがなつかしい

▲昔のハードといえば、セットアップ用CD-ROMがつきものだった

▲こちらが本体

▲右の「Galaxy S9+」と比べると、だいぶ分厚い

いまのスマホと明らかに違うのが、その分厚さ。26mmもあります。筆者の手元にあるGalaxy S9+が8.5mmなので、その差は歴然。

重さは220g。こちらもGalaxy S9+の187gを上回っています。

OSには今では珍しいWindowsのモバイル版、Microsoft® Windows Mobile™ 5.0 software for Pocket PC 日本語版が搭載されていました。

文字の入力はパソコンで使い慣れたQWERTY配列のキーボードをスライドさせて出し、両手でのタイピングで行います。当時の携帯電話の片手打ちより早く打てる方式でした。

▲早打ちが出来た、独特の両手タイピング

画像

▲2WAYスタイルで使えて、画面の向きも入れ替えられる

画面サイズは、当時としては異例の3.7インチ。まだ2インチ前半ほどのサイズが多かった携帯電話のディスプレイとは、一線を画す大きさでした。

▲最近のスマホ(6.2インチ)には負けるが、当時としては規格外の画面サイズ

▲「プログラム」を開くと、こんな感じ


ネットにつなげず、悪戦苦闘

操作方法はだいたいわかったので、次はインターネットにつないでみましょう。

Y!mobileは、PHSケータイの新規契約を終了しているため、PHS回線は使えません。そこで、標準搭載されている無線LANで接続を試みます。

しかし、スマホからのテザリングでネットにつなごうとしたものの、なぜかそのWi-Fi電波がW-ZERO3に認識されません。


▲どうしてもつながらない

試行錯誤した結果、テザリングをするスマホ側で設定していた「WPA2-PSK」という暗号化の規格にW-ZERO3が対応していないことに気づきました。

そこで、「WPA2-PSK」を外して、オープン状態で接続【※2】してみたら、ようやくつながりました。5時間も悩んで、ようやくです。
※2 セキュリティー上、問題があるのでマネしないでください。

▲どうにかつながった

昔の携帯を今のWi-Fi技術でつなごうとすると、素人にはなじみない「暗号化の規格」まで疑わなければならず、心が折れそうになることがわかりました。


エラー連発、瀕死のネットサーフィン

ようやくインターネットにつなげました。それでは2005年に生まれた日本初のスマホで、2019年のネット世界をブラウジングしていきましょう。

▲W-ZEROシリーズのサイトはまだある

W-ZERO3の公式サイトはしっかり表示されています。しかし、こんなキレイに表示されるページは、なかなかありませんでした。

▲この表示が出てきて、多くのサイトが閲覧不可

▲何度も出てくる、この表示

▲サイトを開けても、今度はこの表示が何度も登場

なんらかの理由でサイトを開くことができず、たとえ開けたとしても文字化けなどの不具合が発生します。

回線のスピード以前にレンダリング【※3】がとても遅いようで、ひとつページを開くにも、数分単位で時間がかかります。これでは90年代前半にメインの接続方式だった「ダイヤルアップ接続」と同じレベルの低速です。
※3 Webブラウザが表示用のデータ(HTMLファイルなど)をもとに、内容を整形してWebページを表示すること

また、スマホでは欠かせない地図ページや、乗り換え案内などいろいろトライしましたが、試した範囲では一つも使えませんでした。


▲乗り換え案内。「該当する駅がありません」と出る

さらにTwitter、Facebook、InstagramなどのSNSはサイトを開くことすらできません。

▲検索サイトもNG。その中で開けた数少ない存在がlivedoorだが、サイト検索はできなかった

▲食べログも「非推奨環境」との表示


なかなか快適なネットサーフィンはできませんが、当時一世を風靡したSNS「mixi」や往年の名テキストサイト「侍魂」など、古い文字コード方式の「シフトJIS」や「EUC-JP」を使っているサイトは見られることが多いようです。

▲「シフトJIS」を使うサイトの一部は表示できる

▲10数年前に一世を風靡したmixiも、どうにか表示できた(ログインはできず)


Amazonで買い物はできる?

ここまで苦心のブラウジングをしてきましたが、はたしてAmazonは開けるのでしょうか。

TOPページから大いに文字化けしました。

検索窓は生きているようなので、「サッポロ一番みそラーメン」と入力してみましょう。

そして、検索ボタンを押すと、

大いに文字化け。

最終的に、謎の商品が1件ヒットする有様。

どうやら日本語での検索は無理なようです。そこで、文字化けしない英字で検索することに。筆者愛用のマウス「BSMBU19」で検索したところ……、

お目当ての商品が出た! カートに入れてレジに進んでみましょう。

またもや文字化け。

何が書いてあるかわからないのがちょっと怖いですが、おそらくこれは注文確認画面でしょう。それらしきボタンを押して先へ進みます。

最終的に出てきた表示がこれ。

PCから購入履歴を見てみましょう。はたして買えたのか……?

買えてた!

道なき道を歩くような攻防の末に、マウスを購入できました。

それにしても、14年もの月日はおそろしいものです。あのとき最新端末だったW-ZERO3さえ、こんなに古くなってしまいました。


133万画素カメラで2019年の風景を撮ろう

搭載されたカメラは133万画素。他社の携帯電話は当時200~300万画素時代に達していたものの、ウィルコムのPHS端末としては最高画素数でした。ちなみに先ほど登場した現代のスマホGalaxy S9+は、1200万画素です。

写真の明るさは7段階で調整でき、撮影サイズは320×240、640×480、1280×1024ピクセルの3段階から選択可能。連写やセルフタイマーモードも選べます。

では、このカメラでいろいろ撮影していきましょう。

▲家系ラーメンを激写。発色のせいであまりおいしくなさそう?

▲靴屋さんを撮る。豪快な手ブレが発生

最新スマホの感覚で、シャターボタンを押してすぐカメラを動かしてしまうと、壮絶な手ブレが写真に反映されてしまいます。しかし手をガッシリ固定すればどうにか見られる画像も撮影できました。

▲夜の渋谷ヒカリエは撮影できた。手を動かさなければいける

しかし一眼レフにも迫る現代のスマホと比べれば、その差は歴然。逆に、いまの技術をありがたく思えました。

ちなみに、W-ZERO3は動画の撮影も可能。320×240ピクセルのみですが、こちらも撮ってみましょう。

画像

▲なかなかのコマ送り感

なめらかな動画は録画できず、妙にドギマギした動きのコマ送り動画になりました。ただし当時の感覚だと、「動画が撮れただけでうれしかった」のかもしれません。


忘れ去られたアイテム「miniSDカード」

携帯端末とPCの間でデータのやりとりができる「Microsoft ActiveSync」で画像や動画のデータを取り出そうとしたところ、筆者が使用しているWindows 10では使えませんでした。

そこでminiSDカードを使います。microSDカードではありません、絶滅寸前の「miniSD」です。

▲秋葉原にて、投げ売り価格(240円)で購入

▲左のアダプターをつけるとSDカードとしても使える。容量はなんと、128MB……!

▲このようにさし込む


どんなソフトが入ってるの?

動画再生ソフト「Windows Media Player」が入っていました。再生できる規格はWMV、WMA、MP3の3つだけ。動画の再生にマシンがついていけずコマ送りになった挙げ句、エラーで止まってしまいました。

画像

ほかには、電子書籍を読める「ブンコビューア」なるソフトも。250万部を超えた当時の大ベストセラー『頭がいい人、悪い人の話し方』の立ち読み用がプリセットされていました。

▲試しに少し読んでみる。多少ページに「タイムラグ」はあるが、当時のガラケーより閲覧性はいい

▲ゲーム「Bubble Breaker」で遊ぶ。いまで言うと「ツムツム」っぽいゲーム

▲ExcelやWord、PowerPointもある。エクセルは関数もひととおり使える

画像

▲手書き文字入力も可能

▲近くのアンテナを探す機能「パワーサーチ」。電波をつかむのに苦労したPHS時代を思い出す

画像

▲昔の端末によくあった「タッチスクリーンの補正」

またW-ZERO3は外部から新たにソフトをインストールすることも可能でした。現在のアプリのようにひとつのショップに集まっているわけではなく、初心者には少々敷居が高かったですが、いわゆるガラケーよりもずっと拡張性があったのです。

▲ブラウザの「Opera Mini」をインストール。現在でも新たにアプリ(プログラム)をインストールできるようだ

▲今でも使えるモバイル用ブラウザの「オペラミニ」なら、Twitterも(なんとか)見られる!


遅れていた日本のスマホシーンの救世主

日経エレクトロニクス2006年11月6日号によるとW-ZERO3は、当時人気だったシャープのPDA「Zaurus(ザウルス)」【※4】に、ウィルコムのPHS通信カードを内蔵する試みから始まったとか。
※4 PDAはPersonal Digital Assistantの略。スケジュールや住所録、ToDoなどの情報を携帯して扱うための小型機器。ザウルスは日本製PDAの代表的製品だった

ザウルスのSL-C1000を原型とし、そこに音声通話やカメラ、無線LANなど多数の機能を追加。そして完成したW-ZERO3は、従来の製品の枠を超えた新しい製品でした。

▲ザウルス SL-C1000

ヒットしたW-ZERO3シリーズは、その後も新製品を出し続けました。しかしiPhoneなどに押され、2010年1月に発売された「HYBRID W-ZERO3(端末名:WS027SH)」を最後に、その歴史を終えます。

▲「HYBRID W-ZERO3」。通話はPHSで、通信は3Gで行う意欲作だった

ひっそりとその役目を終えたW-ZERO3。しかし、あまりにも遅れていた日本のスマホシーンに、大きなマイルストーンを打ち込んだ一作でした。

PHSサービスの終了は2020年7月末。時代の流れに逆らえず倒れたW-ZERO3は、僕らの思い出の中でひそかに呼吸を続けます。

参考文献:日経エレクトロニクス2006年11月6日号

(編集:ノオト




69 件のコメント
1 - 19 / 69
懐かしい!!
物置の奥に眠ってるかも?
これ持ってました笑
懐かしい
リアルタイムで、この端末は触ったことも見たこともありません...(>_<)
しかしながら、14年の進化は凄い!と改めて感じました。

直接は関係しませんが、
◇【新端末】AQUOS zero SH-M10◇
https://king.mineo.jp/my/swift707/reports/49604
のスレで、名称がAQUOS zeroだから、このW-ZERO3を思い出した方もいらっしゃいますね。
クローゼットの奥に2台転がってます。
当時は寝転がってネットサーフィンするのに重宝しました。
今使うとストレスがハンパないと思いますが引っ張り出して
使いたくなりました
懐かしいです。
記事の後継機種のes,アドエスと使っていました。
その後ガラケーに戻り、スマホが一般的になってからスマホユーザーに戻りました
あの頃のOSはWindowsmobileが主流でしたが、いつの間にかiOSとAndroidの天下に···

W-ZERO3が発売されてからの14年の間の変化は、本当に大きいです。
あと14年後にはどうなっているのか、想像もつきません
持ってるけど今の言い方で文鎮です。後で写真あげるわ
じゅーーー

IMG_2763.JPG

そこは「マイネ王」を開いてほしかった…w

というわけで「アドエス」でマイネ王を開いた時の写真を置いておきますw
es使いでした。スライドキーボードの結線が弱点でしたね。
qwerty好きですが、このことがあって、以降も、スライド物は回避しています。
結局今は、Blackberry KEYOneです。
なんか昔のゲーム機みたいですねー?
バッテリーはどのくらい持つんですか?
初代が発売された時はその電気店に行列が出来たことがニュースとして放送されたのを覚えています。私は2代目からアドエスまで全て購入しました。

個人的には一番使いやすかったのはWILLCOM03だったかな?コンパクトで非常に使いやすかったです。

W-SIMというシステムも画期的で対応端末を買い漁ったな〜

因みに今もその頃の電話番号をメインに使っています。
遅れていたかな~?
むしろガラケー共々進みすぎていた気がします。今とは違った方向に。
懐かしいですね。
○W-ZERO3後継(WS004SH)
○advanced w-zero3[es](WS011SH)
×WILLCOM03(WS020SH)
○Hybrid W-ZERO3(WS027SH)
それぞれ持ってました。
文字打ちやすいのがメリットやったなー。
○はまだ動きます。
モバイル敬老会の会場はこちらですか?
もち、持ってましたよ!
あー懐かしい♪ これ一時期持ってました。

私のモバイルの始まりは、ドコモのPDC携帯(ムーバ)と
カシオのカシオペアを通信ケーブルで繋いでメールチェックしてました。
http://arch.casio.jp/ppc/e503/

CFタイプの無線LANカードでWifi通信したり
あの頃のワクワクを思い出します。
発売が発表されてすぐに予約して買いました。
同僚に自慢して見せたら馬鹿にされました(^-^;
電話として使うには大きすぎましたね…
面白く読ませていただきました。自分もこの製品を利用していたことがあるので、今利用するとこんなになるんだ!と思いながら読みました。
PowerBookやLibretoでも同様なんでしょうね。

ありがとうございました!
これ買ったときの070の番号で
今mineoさんでお世話になってます。
こいつからアドエス、ハイブリと使いました。
この子は壊れるまで使っちゃったので、もう電源も入りませんが。

この当時はこんなにスマートフォンが普及するなんて誰も予想しなかったかもしれませんね。
懐かしいですね。
当時買えなかったのですが、W-ZEROやVAIO type Uとかすごい欲しくてビックカメラで触ったりしてました。近未来を感じていました。
退会済みメンバー
退会済みメンバーさん
ビギナー
懐かしいなあ。W-ZERO3開発で出荷直前まで深夜まで何日も仕事したことを思い出します。 OSはWindows Mobile。
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