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【読み物】面白い人

一人称の視点を変えたうえに、話を面白おかしくする為に相当盛っているので『フィクション』とお考えください。

不肖ポンコツ河嶋、今宵はショートコメディに挑戦です😁

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「西さ~ん!」
営業所長が突然あたしを大声で呼んだ。
「はい、何でしょう」
何かやらかした覚えはないんだけど…
「昨日、修繕が終わった※※※株式会社さんの案件なんだけど」
「はあ」
何かやらかしたかな…
「最後の仕上げ。検査機器を本社に返却してくれるかな」
あ、そういうこと…
急に呼んだりしたらビックリするじゃん。
「返却は、か~しまと二人で行ってきて」
なんで?機器返却だけならあたし独りで十分では……
「返却先は総務部物品管理担当の五十鈴さん。返却日時はこっちから連絡しておくから。あと……」
「あと、何ですか?」
「いや…それは…何でもない」
何か中途半端に言葉を濁されるというか…

お昼休み。
モヤモヤしたままのあたしは、嫌な予感とともに河嶋さんがいそうな場所を捜す。あ、やっぱり喫煙コーナーにいたか…
猛烈な勢いでスマフォを弄くり回している河嶋さんに声をかけてみる。
『うぇっ!』
スマフォを落とさんばかりの勢いで動揺する河嶋さん。
いったい彼女はスマフォで何をしていたんだろう。
『どうしたの?西さん』
「あの……昼から本社に機器の返却に行く話なんですが」
『わたしも所長からその話は聞いている。今回の件については、キミだけじゃなくわたしも同行する』
「え?なんで」
『行けばわかる』

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明らかに『不機嫌』オーラを全身に纏う河嶋さんを助手席に乗せ、無言のまま車は走り続ける。

いつもの河嶋さんなら…
マシンガンのようにダジャレか三流芸人のようなネタを呟き続けるか、歩道の女子高生に釘付けになるかのどっちかなんだけど。

嫌な予感か悪い予感しかしないわたしは、何も言わずに本社の地下駐車場へ車を放り込んだ。

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「おおっ!河嶋ちゃん、今日は若い子連れてきたんや。アンタ、また後輩苛めしてるんちゃうん?」
『また、とはなんでしょう。後輩を苛めたことなど只の一度もないんですが。総務にそんな報告でも上がっていますか??』
河嶋さんが、ニコリともせず返答する。
「冗談やんか!で、返却する機器は?アンタら、破損とかしてへんやろうな」
『南紀営業所長の立ち会いの下で動作確認はしていますが、返却時点での再確認をしたいので技術担当の方を呼んで下さい』
「なに?自分らが壊したかも知れへん機器を返却する気なん?」
『いま仰ったような下らないことで後々揉めたくないんです』
「ふんっ!じゃあ呼んでくるからちょっと待っとき。アンタ昔っから性格悪いな!」

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明らかに不機嫌な河嶋さんに話しかけてもいいんだろうか。
「あの……」
『どうしたの?』
「あの人、何なんですか??何かいけ好かない女性ですね」
『新規採用の頃からあんな奴らしい。確かわたしより二年くらい早く採用されている筈だ。わたしがここに来るといつもああやって突っかかってくる』

営業所では誰よりも喧嘩っ早い河嶋さんが黙っているなんて珍しい。

『言うだけ無駄だから余計なことは言わない。後はさっさと話を終わらせて帰るだけだ』

数分後、技術屋さんの登場。
「この子達がぁ、機器壊したかも知れへん言うてるんですぅ」
ちょっと、そんなこと言ってないって!
食ってかかろうとするあたしの脇腹を思い切り抓る。痛ったあぁぁい!
「五十鈴さん、彼女たちは『機器を壊したかも』って本当に言ったの?」
「はい、確かにそのようなことを言いました」
「ひょっとして『返却時点での再確認』って言ったんじゃないの?」
「そうかも知れません」

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「再確認は必ずこの場で行うってこの間も言ったでしょ。しっかりしてよ」
技術屋さんに怒られているあいだ中、彼女はずっとあたし達のことをもの凄い顔で睨んでいる。
そもそもアンタの責任なのに、なんでこっちを睨むんだ!て言うか説教の最中にどこを見てるんだっ!

『では、用事は終わりましたのでこれにて失礼します』

「ちょっと待ちぃや河嶋さん。話あるねん」
まさか殴り合いになるんじゃないだろうな…

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「河嶋ちゃん、比内鶏って食べたことある?」

ええええっ!突然ナニ言うんだこの姉さん?
『わたしは食べたことないですね』
河嶋さんが小刻みに震えている。まさか、ついにキレた??
「私、昨日の晩比内鶏食べてん。アンタ、相変わらず貧乏臭い食生活してるなぁ…偶にはいいもん食べや!」
『では、これにて』

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地下の駐車場まで戻ってきたとき、河嶋さんが急にお腹を抱えて笑い出した。
どどどどうしたんですかっ!
『さっきの話を憶えてる?』
「比内鶏ですか?」
『そう、それそれ…彼女が昨日食べたのは、たぶん比内地鶏だ。比内地鶏ならわたしも食べたことがある。比内地鶏はアメリカ原産のニワトリと比内鶏を交配させたモノ。天然記念物の比内鶏が食べられるんだったらわたしも食べてみたい。あの人、いつお会いしてもトンチンカンなことしか言わないから面白すぎて途中で吹きそうだった。あんなに面白い人、他にいないぞ…て言うか怒られた直後に比内鶏の話をするってことは全然ヒトの話を聞いていないか、そもそも屁とも思っていないかのどちらか、ということだ』
(後で調べたら、比内鶏とアメリカ原産のロードアイランドレッドという品種を交配させることで生産性を向上したモノを比内地鶏というらしい)
河嶋さんにとって、あの恐ろしい五十鈴女史でさえ笑いの対象でしかないようだ……
あたしは悶絶する河嶋さんを半ば無理矢理に車に押し込むと帰路についた。

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『おおぉっ!あの学生服めちゃんこ可愛い!そそう言えば最近、ベネトンの学生服とかもあるらしいぞっ!最近の学生さんが羨ましいなぁ…わたしは中学、高校とずっと田舎臭いセーラー服だったから……』
さっきまでの不機嫌はどこへ行ったんだろう。

河嶋さんがラジオの曲に合わせて歌い始める。あ、この曲は辛うじて知っている。確か、沢田研二の曲だ。

🎵寝たふりしてる間に 出て行ってくれ🎵

『「いや~、今日はホンマにエエ天気ですなぁ」「天気いうたらアレでっか。壁にペタペタペタ~って」「そらお前、ペンキやがな!」』

それはネタ振りじゃなくて、単なるボケとツッコミだと思う。
一人でケラケラ笑う河嶋さんを見て思った。


五十鈴さんも相当変わってて面白い人だったけど、河嶋さんも違う意味で変わったというか尖ったというか…相当面白い人だ。
日常のふざけた彼女と、ゲンバで作業する彼女が同じ人だとは思えない。

あたしの知らない間に、どこかで入れ替わってるのかな……

まさか、ね。
ビリー・ミリガンじゃないんだから。
(了)


※筆者注:ビリー・ミリガン
https://ja.wikipedia.org/wiki/ビリー・ミリガン
彼には24の人格があったそうだ。
興味があるならダニエル・キイスの著書をお楽しみあれ。


60 件のコメント
1 - 10 / 60
最後のダニエル・キイスの名前を見て、五番目のサリーを読んだことを思い出しました。
詳細な内容はすっかり忘れました。

>> EMPTY! さん

相当面倒臭いお話ですが、じっくり読み込むと面白いですね😶
確かおうちの書庫のどこかに……

捜してみます!

>> ポンコツ河嶋桃@ほんなら、さいなら🤗 さん

私も本棚探したらまだ持ってました。😅

暇を見つけてもう一度読んでみようかな。

>> EMPTY! さん

だだっ広い公園か隠れ家的温泉宿とかで読んで下さい😮
街中の喧噪の中では読める内容じゃないです、アレ😅
比内地鶏?うちの鳥小屋で寝てたわ。
比内鶏は天然記念物ですよと是非お伝えください。
後輩ちゃんの目線で書いてみたのね。
楽しく(面白く)、読ませてもらいました。
で、何故、後輩ちゃん一人で返却に行かせなかったのかしら?
五十鈴女史の毒牙から守るため、耐性のある桃さんをガードにつけた?
ジュリーの歌も懐かしいです。
あああ~~あああ~~~ああああ~♪(のけぞって)

比内地鶏食べたい~~~w 
(関係ないですが、今日は、普通に照り焼きチキンを食べました。)

あと、ビリーミリガンのドキュメンタリー的映像番組がネットフリックスで観られるのです。随分前に観ました。キョーレツ!

>> 杏鹿@………………………… さん

比内地鶏がおうちにいるって……
食べに行きたいです
図書館で頭上演習して、捌ける気になってます🤤

>> りんごのひとりごと@ぐ〜たら居士 さん

所長曰く、河嶋がドンパチやるところを見せて耐性を付けたかったみたいです😅
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