わが家の推しはウォンバットです。日本に5頭しかいません。いずれもオーストラリアで保護されました。ウォンバットを可愛がるしかないのは、飼育下にあるものは、親が交通事故や殺されて孤児になって保護されたものであること、草食であること、足が短いこと、顔がデカいこと、ドンくさいこと、唯一の武器はお尻の背部の軟骨板しかなく、穴に逃げ込んだら、敵が後から追ってきて顔を突っ込んだ瞬間、敵の頭部を穴の上壁と軟骨板で挟んでやっつけるという、極めて地味な手段しか持ち合わせないことです。単独行動好きなくせに弱く、声帯がないため意思疎通や悲鳴もできません。威嚇はシャーーと息を吐くだけで迫力ゼロ。野生の寿命は6歳前後はうなずけます。雪上で唯一活動する有袋類なのは、やせた土地に追いやられるからでしょう。寝ることが多いのは、そんな環境で、なるべくカロリー消費しないためとか。自然、繁殖力も弱いため、なかなか増えません。有袋類ですが、カンガルーやコアラのように、袋の中で子どもは頭を上に向けるのではなく、袋の入口がお尻に向いているので、顔が短い足の股の間からのぞきます。親が逃げるとき、敵が迫るのを見せつけられるのは、さぞコワイでしょう。救いは、視力が弱いことくらい。不憫なんです。憐れです。だから天は、この上ない可愛さを与えたのでしょう。よくぞ、絶滅せずに生き延びてくれました。見る人に、守ってあげたいと思わせるあの愛くるしさは、人に勇気と優しいこころを湧き上がらせてくれます。
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