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1980~1990年代に隆盛を誇ったワードプロセッサー(ワープロ)。
その名の通り、主に「文字入力」に特化した電子機器で、原稿・レポート・チラシなどの作成や、表計算などの機能を担いました。
しかし、より多くの機能を扱えて拡張性もあるパソコンが普及すると衰退。2000年を最後に新機種は販売されなくなり、2003年で製造終了に。
そして各社のサポートも終了していき、長らく残っていたシャープも2014年に相談窓口を閉鎖。ワープロは過去の遺物になったように思えました。
しかし2022年、ワープロは今も多くの利用者を抱え、さらに需要が増えてきたとの話があります。ごく一部では「第二次ワープロブーム」到来とも語られているほど。
実はまだ日本にワープロショップは全国にいくつか点在しています。
そのうちの一つが、愛知県名古屋市に近い、あま市にある。かつて日立製作所でサポート業務にあたっていた服部進さん(75歳)が店主を務める、その名も「ハットリック」。ワープロ販売と修理を主に行っています。
なぜワープロはいまだに使われているのでしょうか? 気になるその話を聞きました。
——お店に入るやいなや、すごい! 何台あるんですか?
服部:500台の在庫がありますね。
——ワープロって今でも売れているってホントですか?
服部:売れています。ウチでは3000人のお客さんがいるからね。リピーターの方も多いよ。
——そんなに……! どんな客層が多いですか?
服部:一般のお客さんが8割で、法人が2割です。
——ワープロを使い続ける一般のお客さん、たくさんいますね。
服部:目立つのは、自治会や町内会の書類とか、挨拶状を作りたい人だね。
——日常づかいのアイテムだと。
服部:住所録に加えて、家系図を作る人もいるよ。これがワープロで書かれた、ある歴史的に有名な血筋の家系図ね。
——こんな記録もワープロで……?
服部:まだまだ、横にずーっと続いているよ。膨大な記録なので今さらパソコンに移植するのも大変だしね。
——いきなりワープロ界の深淵を見た気がします。法人さんはどうですか?
服部:弁護士、法律事務所、それから旅行社とか。
——なぜ使うのですか?
服部:情報を漏洩させないためにです。
——ええ?
服部:3台を同時に買っていた会社に聞いたら、「インターネットにつながらないからセキュリティ的にいい」んですって。
——なるほど、ハッカーには襲われないわけですね。
服部:さらに一番よく目立つのは、お寺です。
——お寺さんなんですか、なぜ?
服部:檀家の資料がすべて入っているから。
——そうか、パソコンに移植できない?
服部:最初から移植する考え方はないので。俺らならテキスト変換とか、何かできないかと考えるけど、多くのワープロユーザーにとってその考えはないんです。
——そのまま使い続けようと。
服部:ええ、今から新しくパソコンを覚えて書き直すのは大変ですから。
——ちなみに、小説家が愛用するイメージもあります。
服部:それは2~3件かな。
——じゃあレアですね。ちなみに有名な方でした……?
服部:世間で名前を知られている方もいたよ。
——お客さんの年齢層はどうですか。
服部:メインは70~90代のお客さん。「これじゃないとダメ」というお客さんがいるから。
——若い人はどうでしょう。
服部:たまにいるね、40代で会社にあるから使っているとか。個人のお客さんは少ない。
——そもそもワープロショップをはじめるきっかけは何でしたか。
服部:20年前まではパソコンの修理工場兼パソコン教室だったんだけど、「ワープロが壊れたからパソコンを教えて」っておじいさんが来て。
——じゃあ、パソコンを教えたんですか?
服部:いえ、その前にワープロを見たら、かんたんに直っちゃって。そこから新聞に三行広告を出してワープロ修理をはじめたら、たくさん人が来てね。さらに、インターネットショップもはじめたんだ。
——意外な鉱脈を見いだしたわけですね。
服部:パソコン修理より、ワープロのほうがもっと単純だしね。
——価格帯はいかがですか。
服部:3~7万円ぐらいまで。高いのは人気の機種とか新しい商品とかだね。最近は価格が上がっているよ。
——パソコンって10年経つと価格はがた落ちですけど、逆に上がっているんですね!
服部:そうそう。需要が高まっているのと、ワープロがだんだん減ってきたのもあって、3年で価格は倍くらいになりました。
——なぜそこまで急激に上がったんですか?
服部:人気があるからだよ。4~5万円くらいのものが一番売れるね。
——ちなみに、ご自身はワープロをどれくらい使っていましたか。
服部:5年ほど使いました。今は使わないけど、文字を打つだけならワープロのほうがいいと思う人も多くて。
——なぜですか?
服部:すぐ起動して、すぐに文字を打てて、すぐに印字した紙を出せるし。あと、ユーザーは操作に慣れているからね。
——パソコンだとちょっと起動で待たされますからね。かんたんにネットにつなげないからこそ、書くことに集中できそう。
——ワープロってデカくて重いイメージですが、こんな軽い機種もあるんですね。
服部:電池が内蔵されていないけど、コンセントさえあれば使えるわけ。でも電池内蔵型ワープロもあったんですよ。
——へえ!
服部:日立やリコーが出していて、電池は5時間くらい持ってくれた。ただしその代わりにプリンターは別だったよ。
——当時、Windowsを搭載しているワープロもあったそうですが……
服部:ビジネス用には多かったね。Windows3.1とか、95とかとセットになっていた。
——ビジネス用となれば、WordやExcelもつくんですか。
服部:昔は各社独自のワープロソフトや表計算ソフトが入っていたよ。
——互換性がないのでは?
服部:テキストに変換すればいいんだけど、面倒だからそこまでやる人はいなかったな。
——とすると……みんな同じ機種でそろえるとか?
服部:そうそう、それなら互換性の問題はクリアできるから。
——後期は先進的な機能を備えたワープロがいろいろ出てきました。
服部:インターネットもあるし、テレビのついたやつもあります。
——アンテナにつないで見られる?
服部:そう。だけど、いま多くの人は文字入力とかの基本機能ばかりを使うね。
——ふつうにPCを使っている方など、少しワープロに興味出てきた方にとってのオススメの一機はありますか。
服部:ハードディスクのついた東芝の一番新しいやつ、RUPO JW-9820だね。
——ちなみに、ゲームソフトもあったそうですね?
服部:いろいろあったよ。テトリスとか倉庫番とか、AI将棋とか、麻雀ゲームとか……。これはゲームのフロッピーディスクだよ。
——ちなみに、当時タッチタイピングできる人はどれだけいたんですか?
服部:今でもタッチタイピングしている人はあんまりいないと思うよ。
——意外です。
服部:ローマ字入力やる人は1割いなくて、ほとんど、かな入力。あいうえお順のキーボードもあったから。ただ、親指シフトを使っている人は速いよ。
——今でも使っている人がいると聞きますね。
服部:ただ、いわゆる“親指シフター”は全体の5%もいないね。でも機種が希少化していて、熱狂的に搭載機種を探し求めているよ。
——ワープロはみんな古い中古機種ですから、修理が欠かせませんよね。故障で多いケースベスト3はなんですか。
服部:液晶の故障が一番多くて、あとはフロッピーディスクドライブとプリンターがよく壊れるね。
——どれもよく使う機能で、困っちゃいますね。
服部:液晶の故障で一番ひどいのはこれです。「ビネガーシンドローム」って言って、これは修理が難しいんだ。
服部:この色が変わった画面も、なかなか直らなくて。透過率の高いパネルが不足しているとかの問題でね。ワープロの部品は今、なかなか入手が難しいのよ。
——部品、入手困難でしょうね……
服部:なかなか新品がないから、ジャンク品から外して使うしかないんです。中国でまだ製造しているパーツもあるが、それすらも減っていて。
——中国ではまだ生産している?
服部:フロッピーディスクやインクリボンもインクタンクも、みんなメイド・イン・チャイナです。
——修理、大変ですね……!
服部:でも、いいこともあるよ。修理ができれば、ネットオークションでジャンク品を買って、直せば販売できるから。
——昔のものですから、壊れたワープロは多そうですね。利益率は高そう。
服部:ただ、それも故障したところがわかるからできる。わからない人は絶対わからんからね。
——ウン十年前の中古品を6ヶ月保証するのもすごいですよね。
服部:だからこそ、多くのお客さんがリピーターになってくれて。「俺が死ぬまではこれを使い続けたいから、頼むよ」とかも言われるよ。
——もはや頼みの綱ですね。
服部:お客さんにとってワープロは、命の次に大事だもん。
——そんなに?
服部:この前、黒のベンツがダーッと店に来て、何かと思ったら、点滴を引きずりながらやってきて。「これをずっと使い続けたい」と修理に預けてくれてね。
——「一生使い続けたい」という思いが伝わりますね。
服部:病院は暇だから、そんなときこそ文字を打ちたいんだろうな。
——なんか小説とかも書きたくなりそう。
服部:小説や自伝を書いたり、会社の社歴を書く人が多いよ。
——もしかしたら本を出版される方も……?
服部:うん、何冊か本を送ってくれた人もいるね。
——人生の総決算を記す道具と考えれば、重みが出てきましたね。
——ワープロの仕事で大変だったこと、うれしかったことはなんですか。
服部:その両方とも感じられるのが修理かな。骨が折れるけど、お客様の動かんやつを直したときは、喜んでくれるしね。2万円の修理でも、「5万円の領収書を切ってください」って言ってもらって。
——それだけの価値を感じていらっしゃるんですね……そんな日本のワープロは、どんな役割を狙ってきたと思いますか。
服部:まず、文字を書くのに漢字辞書がいらなくなりました。
——そうか、変換してくれるし。
服部:あとは、活字だと読みやすい。レポートとかも作りやすくなりますね。何十枚も印刷して配れるし。
——手書き時代からすれば、書く、印刷する行為を、3段跳びくらいに進化させたのがワープロだったんですね。
——服部さん、ホントにお元気ですよね。今のモチベーションは何ですか。
服部:おかげさまで、「おたくだけが頼りだ」っていう人がよくいるわけ。75歳だけど。周りには「大阪万博のある2025年で閉店する」とは言っているけどね。
——でもこの盛況ぶりじゃ、あと3年じゃすまなそうですね。
服部:実は東京オリンピックのあった2020年で終わる予定が、もうすでに延びているからね。
——今回も引退撤回の予感がします(笑)。
服部:わからんけどね、元気なうちはやるけどさ!
編集:ノオト
印刷できるのがすごい
懐かしいですね😊
PCになってました。
今、パソコンからワープロに戻るのは、勇気がいるねえ。
フロッピーに保存してたっけ
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#マイネ王9周年おめでとう!
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. #mineo10周年おめでとう!