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初日のサーバーダウンから震災時の対応、今後の展開まで 運営会社社長に聞く radikoの挑戦

村中貴士

ライター:村中貴士

大阪府出身。日々エッジの効いたネタを探し続けるフリーライター。得意ジャンルはサブカル、テレビ、音楽、現代アートなど。デイリーポータルZ 新人賞2017で佳作。自称・無料イベントマニア。

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今や、ラジオを聴く=スマホアプリ「radiko」と言っても珍しくなくなりました。ラジオ受信機が必要な時代から、インターネットでラジオが聴ける画期的な環境を生み出したradiko。約10年前、そのニュースを聞いたときは「本当にそんなことができるのか!」と衝撃を受けました。とはいえ、radikoの誕生には技術的な側面、権利関係の問題など、さまざまな苦労があったに違いありません。

震災時の「radiko.jp復興支援プロジェクト」やラジコプレミアム、タイムフリー……。今だから話せるradikoの誕生秘話や新たなサービス、今後の展開について、radiko代表取締役社長・青木貴博さんに聞きました。

スマホユーザーが8割以上のradiko

——いま、どれくらいの人がradikoでラジオを聴いているのでしょうか?

1カ月あたり最高で768万人の方に聴いていただいています。1日平均だと140万人くらいでしょうか。少し停滞している時期もありましたが、今年はじわじわと伸びています。

——すごい数ですね。どんな人が聴いているのでしょうか?

男女比でいうと、6対4くらいで男性のリスナーが多いですね。ただ2010年に行った調査では8対2でしたから、女性が少しずつ増えていることになります。平均年齢は44.2歳で、40~50代が中心です。「若い層が増えていない」というのは、一つの課題ですね。

▲radikoユーザーの女性比率はだんだん上がっており、現在は約4割に
(第11回ラジコユーザーアンケート調査より)


アクセス機器の観点で見ると、スマホだけで聴いている人が56%、PCとスマホを併用しているユーザーが30%。8割以上がスマホでradikoを聴いている、という結果が出ています。

▲スマホでradikoを聞くユーザーが大半
(第11回ラジコユーザーアンケート調査より)


野球やニュース、天気予報、音楽、CM……関係者に許可を得るのに苦労

——そもそもradikoは、どのような理由で生まれたのでしょうか?

一番大きな理由は、ラジオ放送の難聴取問題です。電波が届くエリアであるにも関わらず、高層ビルや鉄筋コンクリートの建物が増えたことで、聴きたくても聴けないエリアが増加していました。

また、ラジオの広告費もどんどん減少しています。ピークだった1991年の2,406億円に比べると、いまはその半分くらい。広告費の減少はラジオ業界全体の問題であり、今後に大きな危機感があったんです。

一方、インターネットが徐々に普及し始めました。そこで、ラジオ放送を電波に乗せるだけではなく、インターネット通信を利用することで難聴取問題を解決しようとしたわけです。かつてはガラケーが普及していましたが、そこからスマートフォンへ移っていくのはある程度予測できた。皆が持っている通信デバイスに対応することが、ラジオの活性化につながるのではないかと考えました。

——radikoを作るにあたって、一番苦労した点は?

まずは技術面です。radikoが始まったのは2010年ですが、当時はストリーミング配信という概念もまだ浸透していませんでしたし、それに伴う技術を準備するためには多くの問題がありました。

あとは権利関係ですね。ラジオと親和性が高いのは野球のナイター中継ですが、当然ながら中継をネット配信するとなると、各球団に了解をいただかないといけません。また出演者はもちろん、ラジオはニュースや交通情報、天気予報、競馬といったコンテンツを放送しているため、各関係者の権利問題をクリアしないといけませんでした。なので、相当な時間と体力が必要でしたね。さらにラジオCMも流れますから、広告主にも許可を得なければいけません。

——考えただけでも大変そうですね……。そうした苦労を乗り越えた先での、radiko開始当初のエピソードを教えてください

2010年3月15日がサービス開始日だったのですが、アクセスが殺到して、すぐにサーバーが落ちてしまったんですよ。その時は焦りましたね。技術面はNTTグループにサポートしてもらっていたので、緊急対応してなんとか乗り切りました。

実はサービスが開始したあと、各関係者が集まって乾杯していたんです。その最中にサーバーダウンしましたから。お酒を飲んでる場合じゃなかった、という(苦笑)。

ただ、以降は技術面も向上して、いまのサーバーはかなり強固になっています。今年の大型台風でも、一切落ちませんでした。


リスナーが通常の17倍に  自然災害時のラジオの役割

——地震や台風など、自然災害が起きるとラジオが再注目されますよね。それで思い出すのは東日本大震災直後の「radiko.jp復興支援プロジェクト」です。どのような経緯で始まったのでしょうか?

東日本大震災が発生した3月11日の翌日、radiko関係者が事務所に集まりました。そこで緊急会議をして、まずは東京と大阪の放送局を、全国どこでも聴けるようにシステムを変更しました。それが震災2日後。各権利者の許諾なしで変更したので、いわば事後報告ですね。

——当時は、全国のラジオ局をどこでも聞ける「ラジコプレミアム」を開始する前ですよね。関係者からの反発はなかったのでしょうか?

各放送局さんからは賛同を得ました。あのときは世の中全体にいろんな動きがあって、「radikoも何かやらなきゃ」と考えた。とにかく被災地に家族や親戚がいる人は、ものすごく心配しているだろう、と。そういう人たちにラジオを聴いてもらうためには、エリアを解除しないと意味がありません。じゃあ、日本全国で聴けるようにしてしまおう、と考えたわけです。

技術面でサポートしていた会社からは、すべて無償で提供していただきました。いろんな方々にご協力いただいて実現できたプロジェクトなので、本当にありがたいですね。

そして、1カ月後の4月28日からは、被災地区のラジオ7局(アイビーシー岩手放送、東北放送、ラジオ福島、茨城放送、エフエム岩手、エフエム仙台、エフエム福島)の放送を日本全国に配信しました。

▲radiko.jp復興支援プロジェクトのページ
(画像はradikoニュースリリースより。現在は終了)


——他にも、大規模停電が起きた2018年9月の北海道胆振東部地震の際は、radikoのリスナーが急増したそうですね。

平常時の人数と比べると、北海道内のリスナーが27倍、道外からラジコプレミアムで聴かれた方が17倍になりました。

「災害時はradikoも多く聴かれているのか?」という問い合わせは、以前から多くいただいていたんです。実際に数字を見て、「災害時における情報伝達の役割」が求められていることを、あらためて感じることができました。

エリアフリーやタイムフリー、シェアラジオ……ユーザーが求める機能を

——2014年にラジコプレミアムが正式にスタートしました。こちらはどのような経緯で始めたのでしょうか?

もともとradikoは、放送エリアに準ずる形でネット配信するサービスとしてスタートしました。IPアドレスとGPSを使って場所を確認し、その人がいるエリアの放送局をradikoでも聴けるようにする、というイメージです。

ところが、ユーザーからアンケートを取ってみると、圧倒的に多かったのは「エリアを越えて聴きたい」という要望でした。これだけ求められているのなら、新たなサービスとして提供しようと始まったのが、エリアフリー機能のついたラジコプレミアムです。現在は約64万人の方にご入会いただいています。

ラジコプレミアム会員登録ページ

——その後、2016年には「タイムフリー」も始まりました。これもリスナーからの要望だったのでしょうか?

かつてラジオには、番組や音楽をカセットテープに録音して楽しむ「エアチェック」と呼ばれる文化がありました。radikoにも「録音できる機能が欲しい」という声は寄せられていたんです。

ただ、権利者に許諾を得るのは難しい。例えば、ラジオでは音楽がたくさん流れます。発売前の曲がラジオで発表されることも多く、そうした曲を録音して聞けるようになるのは、レコード会社にとって不利益になりますよね。そこで、録音機能ではなく「1週間分の番組をさかのぼって聴ける」サービスにしました。

最近では、出演者が番組で話した内容がネットニュースになることも多く、記事がラジオリスナー以外の目に触れることもある。タイムフリーなら、記事を見た人がすぐに番組を聴くことができ、新しいリスナーを獲得することにもつながります。

——あとは「シェアラジオ」機能もありますよね。

SNSは、動画や写真を「これ面白いよ」とすぐシェアできることが強みです。それをラジオでもやってほしいな、と思って作った機能です。「この番組面白いから聴いてみて」と、URLをポンと投稿することができ、それを見た人もすぐに聴けます。

——私もこの機能を知ったとき、「番組途中でも、ピンポイントな時間から聴けるんだ」と感動しました。

その点もこだわりましたね。友達に「面白いから聴いてみて」といっても、普段ラジオを聴かない人にしてみれば、2時間の番組をまるごと聴くのは厳しい。きっと「面白かったところだけ聴かせてよ」となるだろう、と。

そのため、開始時間を選んでシェアできるようにしました。それをきっかけに、ラジオに興味を持ってもらえれば、という狙いですね。

シェアラジオの操作説明 。
「友達に教える」ボタンを押すと、シェアする開始時間を調整できる


オーディオコンテンツをみんなで盛り上げていく

——最近ではVoicyやradiotalkなど、個人によるラジオ配信サービスも話題になっています。こういった音声コンテンツの盛り上がりについて、青木さんはどう感じていますか?

ものすごく良いことだと思いますね。Voicyやradiotalkだけでなく、Spotifyなどの音楽配信サービスも含めて、「聴く」コンテンツをみんなで盛り上げるべきだと考えています。

オーディオコンテンツを楽しむ人が増えれば、フィールドが広がります。何を聴くか選択するのは消費者ですが、客層を広げるにはradikoだけでは限界がありますから。

——今後予定されている新たなサービス、機能はありますか?

スマートスピーカーでもradikoが聴けるのですが、まだタイムフリー機能に対応していません。まずはそこですね。

あとは自動車です。車の中は、ラジオを聴く空間として非常に親和性が高いですよね。今後5Gや自動運転へ移り変わっていく中で、車は「通信する個体」になるでしょう。そこでradikoの役割が出てくるだろうと考えています。

先日、「LINEカーナビ」が発表されました。AIアシスタントのClova(クローバ)が搭載されていて、radikoにも対応しています。車中で「ニッポン放送かけて」と言えば、運転中でもハンドルを離すことなく、ボタン操作なしですぐ聴けるんです。

とにかく音が出るところにはすべて、radikoが対応することが大事で。特に車は重要な空間だと考えています。

——radikoの今後の展開について教えてください。

非常に重要なのは、AM停波の問題です。いまAMとワイドFM、両方で放送しているラジオ局が多数あります。ただ、経営コストが大変なんですね。総務省の有識者会議では、「AM放送をやめてワイドFMに一本化することを容認する」という方針が示されました。もしかすると2023年、AM波は止まってしまうかもしれません。

そのとき、radikoの役割はいま以上に大きくなると思います。さらなる体制強化が必要になってくるでしょう。

——「ラジオの役割」については、どう考えていらっしゃいますか?

災害時におけるラジオの責任は、永遠に無くならないと思います。ただ、日頃求められているのはエンターテインメントですよね。radikoで一番人気の番組は「オードリーのオールナイトニッポン」なんですよ。

▲「オードリーのオールナイトニッポン」。
radiko内の番組ページより


——出演者側にとってもラジオは愛着あるメディアだと思います。例えば、深夜帯に放送されているお笑い芸人のラジオ番組は、テレビでは出てこない話が聴けて面白いですよね

ラジオのスタジオって、タレントさんにとっては我が家のような感覚なんでしょうね。ファンと一緒に過ごす時間、音声での「ファンクラブ通信」みたいな気持ちが強いんじゃないかな。だから、つい余計なことも言っちゃう。それがキラーコンテンツなんです。私としては、余計なことをもっといっぱい話してほしい(笑)。そこもラジオしかできない強みだと思いますね。

これから先は、いつ、どんなシチュエーションでラジオが求められるのか、もっと考えていかないといけません。たとえば「歩きスマホ」は危険ですが、「歩きradiko」であれば問題ありません。生活のなかで、オーディオコンテンツを楽しむ場面はまだまだたくさんある。

音楽やラジオドラマなど、映像がない世界はまた別の魅力がありますから。radikoと放送局が力を合わせて、ラジオの可能性をもっと広げていくチャレンジをしていかなければ、と思っています。

まとめ

筆者も中高生のころは、1日中ラジオを聴くような「ラジオオタク」でした。大人になってからは減ってしまったのですが、radikoのおかげでまたラジオを聴く機会が増えたような気がします。

青木さんがおっしゃる通り、ラジオにはテレビやYouTubeとはまた違う魅力がありますよね。radikoによって、その魅力がもっと広まっていけばうれしいなと、一人のラジオファンとしてあらためて思いました。

(編集:ノオト

取材協力:株式会社radiko

村中貴士

ライター:村中貴士

大阪府出身。日々エッジの効いたネタを探し続けるフリーライター。得意ジャンルはサブカル、テレビ、音楽、現代アートなど。デイリーポータルZ 新人賞2017で佳作。自称・無料イベントマニア。

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コメント 17

ラジコによって聴き逃した番組を、さかのぼって聴けるので便利です。

私の職場ではラジコをかけながら仕事しています。
いつもお世話になっています。

地方のラジオが聞きたいって言うのが実現したときは嬉しかったなぁ…。
あと、AM放送が音質良く聴けるのが嬉しかった。

ただ、災害時を考えると電池の保ちが良い普通のラジオも用意しておいた方が良いと思います。

radiko、毎日お世話になってます♡
家はラジオ電波が入りにくいので、とっても助かります♪

朝は時計代わりに、通勤中はBGMに、週末は聴き逃した番組をタイムフリーで聞いたりして♬

地下鉄通勤中、いつも切れるポイントがあるので、そこがクリアになればもっと嬉しいです!!(*´ω`*)アーハン

この記事を読んでアプリをダウンロードしました。
これからラジオのある生活をしてみます。
化粧の時や支度をする時、洗濯物の時や料理中など、今まで音楽を流していたのですが、明日からラジオを流してみます!

うちにはテレビを置いていないのでラジオを毎日聞いています。
お風呂場ではradikoで、部屋ではラジオで、非常用&移動時はウォークマンのラジオ昨日でFMを。
ウォークマンは電池の持ちがいいので。
ラジオのない生活考えられません!

radikoはPCでもスマホでも素晴らしいと思います。

ちょっと気になったのが車での利用ですが、現状カーオーディオにあるAM/FM
チューナー機能の方が大規模収容には向いていると思います。
地デジやラジオの電波は一方通行で垂れ流す事が出来るために受信者は事実上、無制限です。
しかし、サーバー経由となると現状のほとんどのストリーミングはPCや端末1台
づつと相互通信しているので基幹ネットワークやサーバー能力に依存する事に
なります。

あと期待されている5Gですが3.9G帯や39G帯だと障害物に弱く飛距離が出ない
特性があります。PHSより密の基地局が必要とか・・・
スタジアムのような見通しが良い場所や閉塞された会議室で大人数が接続する
のには向いていますが、屋外でのハンドオーバーやビル陰等の問題が山積です。

まあそこの問題点は大手キャリアが解決すべき問題ですが・・・

地下鉄の中でも聞こえるし重宝しています

radiko、遠くの放送局までクリアに聴こえて最高!

radikoは、ラジオという放送媒体を技術や権利面の問題をクリアし、インター
ネットという通信網に落とし込む事を実現したことが凄いと思いました。

スマホの場合はGPSでの測位情報で地域が特定できますが、パソコン等の
固定回線でもほぼ正確に地域を絞り込み、その地域のラジオ放送を無料で
聴取出来るという事に開始当初驚きました。

AM放送に関しては、災害時の聴取のときに便利なものなのでなるべく
ラジオ各局に対して存続して頂きたいとは思う所はあるものの、ワイドFMに
一本化されるとradikoの重要性が記事の通り高まると思います。

今後も、安定して聴取出来る状況が維持される事に期待したい
ですね。(^^

radikoプレミアム加入者です。
大阪や名古屋のプログラムを関東に居ても楽しめています。各地域のバンドとの出会いが多いので楽しいです。

深夜ラジオのオールナイトニッポンやヤングタウンで育った世代だから、情報源としてラジオも含まれるけど、いまの若手世代ではどうなんでしょう?
災害緊急時にラジオなんて聞くでしょうか。。。ネット動画放送やLIVEが主で、ネットでラジオなんて聞くんでしょうか?!
甚だ、必要性の疑問は感じる。

仕事中はずっとRadiko聴いてますがな!

radikoプレミアムユーザーです。
この記事に載っているアプリ画面が2019年3月以前のデザインなのは、何か意図が有るのでしょうか?

2019年3月末のデザイン改変で、無駄な機能が増えて、一覧性が下がり、以前より使いにくくなってしまったんですよね。
私はAndroidユーザーなので、自分でpakファイルを探してダウングレードして、以前のデザインのまま利用しています。

FMが届かない地域でAM放送を聴いていますが
AMもやばい時ラジコに切り替えます。

ワイドFMに一本化するなら
カーオーディオをワイドFM対応させるか
SIM入れてラジコ搭載にして欲しいです。

radiko、地下でもビル内でも雑音も無く安定して放送を聞け、重宝してます。これからも長く続けられ更なる発展を希望します。

とりあえず、非常用にアプリを入れています。
普段は聴取しませんが(笑)

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