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日本で唯一の自作キーボード専門店で、自分だけのキーボードを作ってきた

ヤスミノ

ライター:ヤスミノ

フリーライター。新潟出身。好きな色は黄色。よろしくお願いします。

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見たことないキーボード!
 

見たことないキーボード!
 

見たことないキーボード!


こんにちは、ライターのヤスミノです。

唐突にキーボードの画像をお見せしましたが、実はこれ、世界的にも珍しい「自作キーボード専門店」に展示・販売してあるものなんです。

Webライターという仕事柄、キーボードをよく触るので、自分に合った製品はないかネットで探していたところ、偶然「自作キーボード」を知りました。

自作PCは聞いたことがあるけど、キーボード……?

考えてみると、中学生のころからインターネットばかりを見てきた人生。この世の中で一番触ってきたものってキーボードなのかもしれない。

そう思うと、人生に若干の後悔の念を抱くと同時に、自作キーボードにがぜん興味が湧いてきました。

というわけで、秋葉原に今年の1月にオープンした日本初の自作キーボード専門店「遊舎工房」さんに、話を伺うことにしました。

▲取材に応じていただいた代表取締役の倉内誠さん


なぜ今「自作キーボード」なのか?

そもそもの疑問なのですが、なぜ「自作キーボード」に興味を持たれたんですか?

おととしぐらいに、キーボードを自作する動画を見て、「あ、こういうのがあるんだ」と興味を持ちました。

おととし……! 思っていたより最近ですね。

もともとキーボードそのものへの興味はあったのですが、「自作キーボード」はその時初めて知りました。

もしかして、自作キーボードという文化が一般化したのは最近のことなんですか?

国内では近年からですね。アメリカやヨーロッパ圏、アジアでいえば中国や韓国などでは、もう少し前からありました。極端に盛んだったわけではないんですが、今までは他国のウェブサイトから購入して自作する人が多かったみたいですね。

勝手なイメージなんですが、日本発祥かと思ってました。なんかこういうニッチな工作って、日本人が好きそうだな……と。

それでも、10年前は自作キーボードはなかったですよね?

作っている人自体はいました。でも、一般化したのは国内外でも近年だと思います。

新興の文化なんですね。自作PCは昔から存在していましたけど、「自作キーボート」が最近になって盛り上がりを見せているのは、何か理由があるんですか?

メカニカルキーボード【※1】で使われているキースイッチ【※2】があるんですが、それはドイツのCHERRY社のものなんです。その特許が切れたことで、中国製の互換品などが入手しやすくなったという背景がありますね。
※1 キーボードのキーごとに独立したスイッチ機構が備わっているキーボードのこと。
※2 「軸」と呼ばれる、入力を感知する部分。これによってキーを打つ際の感触や音が決まる。


なるほど! 特許が切れて互換品が手に入りやすくなったことによって、広く浸透したんですね。

それと、国内で世間に知られるようになったのは、おととしのコミケで販売された同人誌がきっかけだと思います。

同人誌……!?

▲ぺかそさん著『BUILD YOUR OWN KEYBOARDs』(左)、ゆかりさん著『ねこでも作れる!オリジナルキーボード』(右)

この2冊がSNSで拡散されまして、こういう文化が存在するということが世間に広まったきっかけになってると思います。

個人で出版した同人誌が、今こうやって実店舗ができるほどに大きい影響を与えたんですね。


お店を始めたきっかけは?

このお店は今年の1月にオープンしたということなんですが、それ以前から通信販売をやっていらしたんですよね?

そうですね。1年間ほどやっていました。

実店舗を構えるとなると、かなりの一大決心だったんじゃないですか? どこにも前例が存在しないわけですし。

決心は必要でしたけど、扱っているものがキーボードだったので、まず「触れるように」したかったんですよね。タッチの感覚は、どうしても通信販売じゃ伝わりませんので。

▲店内では、さまざまなキースイッチの押し心地が確かめられる

たしかに。キーボードを触らないで買うのって、心理的ハードルが高いですよね。高価であればあるほど。

それと、そこにあるUVプリンターをもともと自宅に置いていたんですけど……

▲UV(紫外線)硬化型インクを使い、通常のプリンターでは印刷できないさまざまな素材に印刷できる

でかっ! これ自宅にあったんですか!?

そうなんです。手狭になってきたというのがありまして……。

これが家にあったら、相当場所とりますね……。

幸いにも通信販売の業績が良かったので、外に置き場所を作るんだったら、実店舗を作ろうと。立地もPC関連が盛んな秋葉原に近いところにしよう……となり、今に至ります。


自作キーボードはどんな人が使っている?

どういうお客さんが多いですか?

遊舎工房で扱っているキーボードは「左右分割式」のものが多いんですけど、肩や腰などに負担がかかりにくいと、興味を持たれる方がいらっしゃいますね。

▲左右分割式のキーボード。自然な姿勢でタイピングできるため体に負担がかかりにくい。

それと、イラストレーターさんが片手で操作するためのキーボードをお求めになる方もいらっしゃいますね。

なるほど。片方の手でペンタブのペンを持って、もう片方でPCを操作するんですね。

店の看板のイラストは、漫画家の大沖先生【※3】に描いてもらいました。私が作ったHelixというキーボードを大沖先生に購入していただいたところから繋がりができまして、それでお店を出す時に看板を描いてもらったんです。

※3 まんがタイムきららキャラットにて『はるみねーしょん』を連載中の漫画家。サークル「ダイオキシン」で同人活動も行っている。

また、作業用ではなく「かわいいから作りたい」という方もいらっしゃいます。

作って部屋に飾っておくってことですか……!? でも、部品を自分で選んで好みのヴィジュアルにできるし、気持ちはわかる気がします。

▲キーキャップひとつとっても、さまざまなバリエーションがある

▲こんなタイプのキーボードも

どれもめちゃくちゃかわいい。自作PCって一部の専門的知識を持った人たちの文化というイメージがありますけど、自作キーボードは「かわいいから」という理由で作りたい人がいるくらい、参入障壁が低い感じがいいですね。


キーボードを作ってみよう

僕も実際にキーボードを作らせていただくことに。

まったくの初心者でも、手順を間違えなければ、作るのは難しくないとのこと。

中学校の授業以来、触っていない「はんだごて」を使うそうですが、本当に大丈夫でしょうか……。

今回は「meishiキット」という、4つのキーで構成されるキーボードを作ってみることに。その名の通り、名刺サイズの小さいキーボードを作るためのセット商品で、初心者はまずこれがオススメだそうです。

※取材後「meishi2キット」にリニューアルされたため、現在「meishiキット」は販売されていません(2019/10/28 時点)

キースイッチやキーキャップは別売りなので、気になったものを選んでいきます。

キースイッチのサンプルでタッチの感触を確認します。打つ時の音や、打ち心地が微妙に違くて面白い。

自分好みのキースイッチを決めました。

次にキーキャップです。こちらも自分好みのものを選んでいきます。キーキャップは特にビジュアルに関わる部品なので、どんな組み合わせにしようか悩みますね。

こんなキーキャップも展示されていました。ブラインドタッチができない人が使うとなると何がなんだか分からなくなりそうですが、それを差し引いてもかわいいですね。

自分で何から何まで好みの仕様にできる喜び……。確かにこのカスタマイズ性にハマる人が多いのもうなずけます。

部品がそろいました!

遊舎工房さんでは、キーボードの販売以外にも、工具が使用できるレンタル工作スペースを運営しています。利用料金は、2時間500円。今回は、ここをお借りして作っていきます。

店員さんが「わからないところがあったら聞いてくださいね」と気さくに話しかけてくれましたが、まずは一人でがんばります。

「meishiセット」にはQRコードの書かれた紙が入っていて、バーコードを読み取ると、ウェブガイドが表示されます。

これを見ながら進めていこう……と思ったのですが、

見ても全然分からなかったので、結局、店員さんに教えてもらいました。

基本的には、赤いプリント基盤にパーツを正しく差し込み、はんだ付けしていくだけのようです。

こちらは、一方向にだけ電流を流す「整流用」に使われるダイオードという部品。向きを間違えてはんだ付けをすると、正しく動作しないらしい。それは絶対に避けたい。

黙々と、慎重にはんだ付けをしていきます。

はんだ付けのコツが書いてありました。やさしい。

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10年以上のブランクがありましたが、意外とスムーズに作業が進みます。もしかして、はんだ付けの才能が……?

と思ったら、表と裏をすべて逆に付けていたので、最初からやり直すことに。まったく才能がありませんでした。

はんだ付けした部分を、再度熱して吸着すれば部品を外せるそう。助かった。

そして、なんとかはんだ付けが完了!

若干いびつですが、自分で作ったとなると、むしろ愛らしい。


ざっくりとですが、各パーツの役割はこんな感じ。

●タクトスイッチ……電子回路を接続したり開放したりする、ON/OFFのスイッチ

●キースイッチ……キーを入力できるようにする

●Pro Micro……Micro USBケーブルをつなげられるようになり、パソコンと接続可能に


なんとなく仕組みがわかりました。

そして、これにキーキャップを付ければ……

完成!

……ですが、このままだと動きません。


動作確認をしよう

ファームウェアと呼ばれる、電子回路に仕事をさせるための制御用のプログラムを入れて、キーボードにキー配列を割り当てて、ちゃんと動くか確認します。

ファームウェアの作業については店員さんにすべて託しましたが、ビルドガイド を見ながら進めていけば、素人でもひとりで作業できると思います。

マイクロUSBで、PCと接続。配線に問題はないようです。よかった!

ファームウェアを入れてもらい、キーボードとして動作することも確認できました。

ということで、完成!

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「GLAY」の4文字が打てるキーボードにしました。かっこいいので。

ちなみに、デフォルトでは左から「Ctrl+Z」「Ctrl+X」「Ctrl+C」「Ctrl+V」の動作が割り当てられています。デフォルトのままでもコピペがはかどりそうですが、今回はこれを改造しました。

制作時間は1時間30分ほど。途中で全部やり直したので、それがなければ1時間くらいでしょうか。 はんだ付けをやったことがない素人でも、一度やり方を覚えればあとは単純作業の繰り返しなので、比較的簡単に作れるかと思います!


「自分専用のキーボード」の醍醐味

一般的になったのが近年ということもあり、今後もさらなる発展を遂げていきそうな自作キーボードの世界。

キーボードと聞くと、なにか無機質で没個性なイメージがありますが、自作なら個性的なデザインにしたり、自分にとって使いやすいキー配置にしたりすることも可能です。なかなか他では得難い「自分専用の醍醐味」があると感じました。

みなさんもぜひ、世界的にも珍しい自作キーボード専門店「遊舎工房」さんに足を運んでみてください!

取材協力:遊舎工房

(編集:ノオト


ヤスミノ

ライター:ヤスミノ

フリーライター。新潟出身。好きな色は黄色。よろしくお願いします。

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コメント 27

見た事ないキーボードが多そうですね。

来月、mineoパーティー参加前に秋葉原行くので、遊舎工房寄ってみます(^^)

🇨🇳中国人的発想のマネゴト。
スティーブジョブズなら「キーボードカスタムしたい客なんて要らね〜」「どんだけくだらない人生を送ってるんだ」って言うだろう(毒)

お疲れ様です。

>見たことないキーボード!
にTRONプロジェクトの様なキーボードありますね。
https://ja.wikipedia.org/wiki/TRONプロジェクト

>黙々と、慎重にはんだ付けをしていきます。
はんだ付けの煙は、吸わない方が良いです。

色んなニーズに応えられそうな感じですね。
キーボードを自作するという発想は全くなかった。
カラフルで機能性に富んだものを作る人もいるんだろうな~。
自分ははんだ付けもやったことがないので、若干敷居は高め。
やはり作るには都会に行くしかないのだろうか?
自作にも色々あるんですね。

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自作キーボード、最近話題になっているとは感じていましたが、どんなものか
は詳しく知らなかったので参考になります。

キーボードをカスタマイズする発想は、私にはありませんでしたが面白そう
ですね。(^^

安いキーボードで一般的なラバーカップを使用したメンブレン方式は押し込み
が重くて疲れるものが多いのが何店ですが、自作キーボードで使われている
メカニカルスイッチは軽いので良いと思いました。

ちなみに私は先月に静電容量無接点方式のRealforceに買い替え、FILCOの
木製パームレストを導入しました。

入力環境を改善すると、作業効率の向上だけでなく文字入力が楽しくなるの
でこちらもオススメです。(^^

スイッチを「軸」と呼ぶのはライターさんの勘違いなのか既に慣習化してるのか気になります・・・
レアな配列のキーボードを大事に使ってる身として、自作の道もあるというのは心強い情報でした。

はんだ付け、学生時代にやりましたけど、黙々と集中した作業で楽しかった思い出が^_^
右に板タブ置いて、左手で打ちやすいキーボードは作ってみたいし、欲しいです。
キーキャップ選ぶのも楽しそうですね。自分で作ると愛着もわきますし。

今をさかのぼること・・・
MMOのために自作してましたが、プログラマブルな所に惹かれて
http://www.nagateku.co.jp/product/programmable_keybord.html を使っています。
もっと早く世に出てくれていれば苦労しなかったのになぁ。

自分に合った使いやすいキーボードがあれは、仕事がスムーズに進みます。

通販を始めた時から気になっていましたけど、まだ訪問したことはないので、キーキャップだけでも買いに行ってみようかな。

>ぽちっとさん
ドイツのCHERRY MXスイッチの軸の色によって仕様が異なり打鍵感が変わる
のでそうした呼び方をする事は多いですね。

ちなみに、CHERRY MXスイッチの場合はクリック感のある茶軸が定番ですが、
最近はクリック感が無く軽い赤軸が人気になってきています。

・【げみんぐ】メカニカルキーボードの軸の種類の違いについて解説
http://fps.game2ji.com/gamingkeyboard-jiku/

あと、MX SILENT(通称ピンク軸)という、メカニカルを使いたいけど音が
静かなのが欲しい方に向いたものも出ていますね。(^^

楽しい記事をありがとうございます!
私は親指シフターなので、スペースと無変換キーの位置が超重要。キーボードをカスタマイズできたらなぁとずっと思っていましたが、そんな事情があったとは。自作キーボードは興味ありますが、フルキーボードは厳しそう…。

ぴったりくる位置のキーボードも少ないのに、キー荷重だとかも関係してくるので、ぴったりくるキーボードは永遠のテーマになりそうです。
こういうの抜きにしても、もっと流行っていい!

GLAY専用キーボード、かわいいですね(≧∇≦)

レゴみたいで可愛いし、機能的だし、自由研究にも良さそう。

Dvorakキーボードを思い出しました。(若い子はググれ)

オリジナルキーボード 憧れますねー(*‘∀‘)

部品選びからして楽しいし
作る楽しさ、使って満足なら言う事なしですよねー

自作PCもまだやった事無いのに→いつかやりたい!
自作キーボードはハードル高そう。
でも楽しそうですね😊

自作キーボードですか。
凄いですね。😊

お!自作キーボードですか!
前から、欲しかったキーボード?が有るんですよ!
それは、[電卓]キー!(一個だけの専用キー!)
昔、X68000のオプション1+オプション2の電卓を、こよなく愛してたんですよ!!
作りたいような、要らないような…。
(ホントは、テンキーに[=]と[,]を追加する方が、便利な予感がします)
てな感じです〜。

みんなそれぞれですが・・・
キーボードで大切なのは「ストロークの深さ」「タッチの重さ」「キーボードのサイズ」の
3つのファクターかなぁと
自作だとかえって迷ってしまうのでレディメードタイプのを用意していただけたら嬉しいなぁと

自作楽しそうですね。
物作りって好きです。
あと1文字分増やして"MINEO"にはしなかったんですね(笑)

☆かさとさん☆自作PC楽しいですよ。
パンダ付けの作業ないので初心者でも簡単ですよ。パーツは付くところにしか付かないので…
昔の話しですが、PC工房のスタッフさんに見積もってもらい初の自作やりました。

させぼさん
自作PCはYouTubeでなんとなく感じ
つかめてますので、暇とお金があれば
やります😊
自作キーボードもYouTubeで紹介する
動画がたくさん出てくればハードル
下がると思います。

横長ではなくて、上下に分けたら全部左手とか右手で打てそう!

中開いてるのいいですね。肩凝らなさそう。
秋葉が近ければ是非見に行ってみたいです。
でもあの4つで1時間半はハードル上げたのでは。
ちょっと寄っても電卓も作れなさそう。
もっと普及してワークショップでできるといいなと思いました。

楽しそうですね。 
東京に行ったらお店覗いてきます。

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自作でスゲーと思ったのが「左右分離&エルゴノミクス」キーボードですね。

作ってみたいですがな!

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