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デジタル未経験のイラストレーターが、イラストアプリに初挑戦 スマホだけで絵を描いたらどうなる?

波多野友子

ライター:波多野友子

インタビューと対談構成が好きなフリーライター/校正者。どんなジャンルの話でも興味津々で深堀りします。最近ちょっとやってみたいお仕事はラジオパーソナリティ。

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スマホ用アプリが充実した昨今、PCやタブレットを使わなくても、スマホで本格的なイラストが描けるアプリが続々登場しています。そして実際に、スマホだけでイラストを描く人も増えているのだとか。

今回は「本当にスマホアプリだけで、本格的なイラストが描けるのか?」という疑問を解決するべく、普段は筆や色鉛筆などアナログな道具で絵を描くイラストレーターの五島夕夏さんに協力をお願いしました。

<五島夕夏さんプロフィール>

1992年7月18日生まれ。桑沢デザイン研究所卒。
学生時代に出会ったロシアの絵本に大きく影響を受け、絵本画家を志す。
現在はフリーのイラストレーター・絵本作家として活動中。
2017年に自身初の絵本”よんでみよう”、さらに2018年には"レ・ミゼラブル 前編"を岩崎書店より発売。

いつもと比較してどれくらい時間が掛かったのか? アプリの使い心地は? デジタルならではの良さは? など、実際に描いていただいたイラストを見ながら、あれこれ質問しました。

多くの人の記憶に残るような、普遍的な作品を描いていきたい

——普段描いている絵のタッチは、ロシアの絵本作家に影響を受けていると聞きました。どんなところが魅力なのですか?

ロシアって情勢があまり良くなかったり、寒かったり、ちょっと鬱屈とした空気感が漂っているじゃないですか。そういう国で描かれる絵ほど、色使いが鮮やかで、空想的な傾向があるんです。暗い季節を、温かい色彩とともに乗り越えるみたいな……。

中でも、ユーリー・ヴァスネツォフという作家の作品がとても好きです。描かれている生き物たちがちゃんと“生きている”んですよね。ただただ、作家が生き物を愛しているということがすごく伝わってくる。私にとっては衝撃的で、一時期よく模写をしていました。

——五島さんの絵の中にもノスタルジックで、温かな雰囲気が溢れています。

正直、コンプレックスもあるんですよ。私の絵は、グッズやTシャツにしやすいようなオシャレで今っぽいものじゃないので。例えば、もっとサラサラとしたゆるいタッチで、雑誌にもなじむようなイラストを描く人がいるじゃないですか。

私には、そういう絵は描けない。でも、若い人だけに向けているわけではなく、ご年配の方に「なんだか懐かしい」と言っていただけたり、「この絵に囲まれた部屋に暮らしたい」と言っていただけたり、記憶に残りやすい普遍的な点が、自分の絵の特徴なのかなと思っています。

——確かに普遍的な魅力がある気がします。続いて、普段使っている画材についてお聞きしたいのですが。

▲五島さんが普段使っている画材

メインで使っているのはトールペイント用の絵の具です。主に、木製品に絵を描く際の絵の具なので、紙に描いたらまず落ちません。丈夫なんです。また、原色だけではなく、もともと混色されているものが多いので、すぐに使えます。絵の修正をするにも、いちいち色をつくり直す必要がないので効率的なんです。

——絵の具で描くということで、筆にもこだわりがあるかと思うのですが。

実は最近、子ども用の持ち方矯正筆に落ち着いているんです。子ども用なので転がりにくいし、とにかく安い。ガシガシ洗えるし、壊れてもすぐに買い換えられる気楽さが魅力です。

スマホの小さな画面の中で、無限に描き込める怖さ

——五島さんの絵を書く際の向き合い方はわかった気がします。今回、五島さんにスマホアプリで絵を描いていただくという、ご自身のスタイルを大幅に覆す方法にチャレンジしていただきました。お話を聞く限り、デジタルでイラストを描くことはほとんどないですよね?

美術系の学校に通っていた際に、授業でちょっとだけ経験したくらいですね。最近ではデジタルで描く方や、デジタルもアナログも両方できる方も多いと思いますが、私はまったく描けないです。ペンタブすら持っておらず……。今回描いてみて「一発で色が塗れちゃうの、すごい!」とか、そういうレベル感でした。

——なるほどですね。さっそくイラストを見せてもらえますか? ちなみに今回描いていただいた絵のテーマは?

家や空、クマや鳥など、普段から作品として描いているモチーフをスタンダードに、一番慣れた構図で描いてみました。

——かわいい! 初めて描いたとは思えないくらい完成度が高いですね。イラストアプリは多く出ていたかと思いますが、何のアプリを使ったのでしょうか?

いろんな種類がありますね。今回は「アイビスペイントX」というアプリに挑戦したんですが、正直、すごく難しかったです……!

アイビスペイントX

Google Playストアからのダウンロードはこちら

App Storeからのダウンロードはこちら

——実際描いてみて、率直な感想としていかがでしたか?

すごく時間がかかりましたね……。いつもなら、キャンバスの大きさによって「大体これくらいの時間で描けるだろう」と予測が立てられるのですが、今回はまったく予想がつかなくて。アナログだったら、このサイズなら30分もかからないんですが、2〜3時間くらいかかりました。

画面サイズは決まっているのに、スマホだといくらでも拡大できるじゃないですか。そのせいで、無限に細かく描き込んじゃうんですよ。この小さな箱の中で、いくらでも、どうにでもできるというところに、ちょっとした恐怖感すら覚えました。

——確かに、キャンバスのサイズは小さいのに、いくらでも細かく描き込めるのは不思議ですよね……。アプリでは主にどんな機能を使ったのですか?

1週間で一から使い方を覚えて描いたので、正直そこまで多くは使いこなせなかったんですが……。基本的には、ペンの種類と背景の色を選んだほか、塗りつぶしツールやレイヤー機能を使いました。

ペンの種類がたくさんあって迷ったんですが、普段から使っている筆に近い丸筆タイプを選んでみました。ちなみに今回、タッチペンを使わず、指一本で描いています。

——指で線を描くのは難しくなかったですか? 私も試してみたところ、子どもが描いた絵のようになってしまって。

とても難しかったです。小さい頃、砂場や砂浜で絵を描いた時の感覚を思い出しました。学校の図工の授業とかで、わざと左手を使って描かされませんでした? まさにそんなもどかしい感じ。でも逆に、不自由の中で生まれる作品の面白さに気づいた感じがします。

最大の魅力は「素材がすり減らないこと」と「瞬発力の高さ」

——色塗りに関してはいかがでした?

色を指定したら、一瞬で塗れるのがいいですよね。絵の具で描いていると、当然のように乾かす時間が必要なので、ひたすらドライヤーで乾かしながら片手で描いて……みたいなことをよくやっています。その作業が必要ないのでサクサク進められました。

ただ、効率的ではあるんですが、何回でも色を変えることができるじゃないですか。簡単だからこそ、「ここは別の色だったらどうなるんだろう?」って試してみたくなっちゃうんですよね。私にとっては「諦めのつかなさ」が自分を苦しめている感覚がありました。

アナログでも塗り直しはできますが、直す手間がかかるので、できるだけ一発で決めなくてはならないと思って進めます。デジタルを経験して、決めることの大切さもわかった気がします。

——なるほど。普段からデジタルツールを使って描き慣れている人からすれば当たり前のことでも、五島さんのような完全アナログ派にとっては、いろいろな発見があるんですね。

そうですね。当たり前なんですけど、デジタルって保存に失敗すると消えちゃうじゃないですか(笑)。作業の途中で「ちょっとトイレに行こう」と思っても、「帰ってきて消えていたらどうしよう」みたいなドキドキ感がありました。

あとは純粋に、アプリを起動している時間が長いと、スマホの電池容量がどんどん減っていくので、保存できないまま電源が落ちたらどうしようとか。もちろん、使い慣れていけば解消できる不安なんでしょうけど。

——デジタルの良さを一番感じたのはどの点でしたか?

素材がすり減らないことと、瞬発力が高いことですね。旅先で画材がなくてもさっと描けるし、個展を見に来てくれた方に、ちょっとしたイラストとサインを描いて、そのまま渡してあげることもできる。そういう使い方はいいな、と。

あとはやっぱり、技術が画材に左右されない点ですね。デジタルのイラストは「いいものを使っているから、いい作品ができるんだ」みたいな価値観があまりない世界だと思うので、本気で作品をつくっている方たちにとっては、全員が同じ土俵で勝負ができるんじゃないかと思いました。

——もしかしたら、スマホのスペックやタッチペンを使うことなどで違いが出るかもしれませんが、「アプリ内の画材の質が、絵の質も変える」といったことはないかと思います。今後、デジタルツールを作品づくりに活用していこうと思いましたか?

そうですね。SNS投稿には積極的に使っていこうと思いました。写真を取り込んで、イラストや文字を重ねるだけで新しい世界観が簡単に作れるので、タイムラインも素敵に演出できるんじゃないかな。

ただ正直、私の作品づくりには向かないかもしれません……。なんだか、絵を描くこととスマホの画面を見つめることって、使う脳が全然違う気がして。

——どういうことでしょうか?

タブレットだったらまた違うのかもしれませんが、この限られた画面の大きさであるスマホという窓とずっと向き合っていると、ちょっと疲れてきちゃうんですよね。凝り固まってしまうというか。

むしろ私は絵を描いている間の息抜きに、スマホを見たいタイプなので。そこは使い分けたいですね。今回は「締め切りに間に合わせなきゃ!」と思って移動中にも描いていたんですけど、極端なことをいうと、走りながらでも描けてしまうのがとても面白かったです(笑)。いい体験になりました。


イラストレーターによっては、日常的に液タブやペンタブを使いこなしていることも多いでしょう。そんな人にとって、スマホでイラストを描く作業は、そこまで難易度の高いものではないのかもしれません。

ほぼデジタルに触れたことがない五島さんにとっては、戸惑いとともに新しい発見が多々あったようです。今後彼女の作品にデジタルの要素がどんな風に影響されていくのか、楽しみに見守っていきたいと思います。

(編集:ノオト



波多野友子

ライター:波多野友子

インタビューと対談構成が好きなフリーライター/校正者。どんなジャンルの話でも興味津々で深堀りします。最近ちょっとやってみたいお仕事はラジオパーソナリティ。

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コメント 25

ネットでも、デジタルでイラストを描いて上げている人と、アナログで描いたものをスキャンして上げている人の両タイプを見かけます。
私は全く絵の才能もセンスもないのですが、この記事は興味深く読みました。

私は絵心ない人間なので、イラストのアナログとデジタルで一長一短……今まで考えた事すら無かったです。
気分転換になりました。

絵の上手い人が、デジタルとアナログ両方の視点からメリットとデメリットを語っているのは興味深かったです。絵の書けない人からすれば全く分かりませんからね。どっちが優れているとかは無いのでしょうね。

仕事でチョークで絵を描いていてそろそろアプリでも絵を描きたいなと思っていました。
何回でも消せるから細かいところまで気にしてしまう、やり直すから時間がかかる、なるほどなぁ~。同じようになるかも。
便利だけど普段使いの携帯で描くと公私の区別がつきにくくなりそうですね。
仕事で描くとしたら延々描いてLINEや着信きたらイラっとして笑
タブレットなど別の端末が良さそうですね。
参考になりました。ありがとうございました。

「諦めのつかなさ」、何となく分かる気がします。
 パソコンで文書作ってみると、図表なども簡単にいじれるので、いろいろ試してみて、どれがいいのか迷ってしまうことも。

ワシはスマホで絵を描くことは無いだろうけど、今回の記事は「合格」だ!
いつも辛い目のコメントなんだが、可愛いさ❤️でゆる〜くなった(^◇^;)

やはりプロの方の作品は違いますね。完成度高いです。素敵です。画面サイズが決まっているのに、いくらでも描き込めるという表現が面白いです。絵を描くのに電池がなくなっていく~というのもwでした。一番最初に出てくる、雪が降っている月夜の絵が、かなり引き込まれる^^ずーっと見ていたくなる絵ですね。

イラストレーターでおきれいな人で…けしからんですね笑
五島さんの回答はとてもていねいな人だという印象を受けますが
質問者さんの受け答えが何となく雑なように感じました。

私も画才が無いので手描きでは子供に見せても笑われるレベルですが
PCでイラスト用ソフトを使えば
丸や四角などの基本図形の組み合わせで何とか形にすることができます。
画才が無くても何とかなるというところもデジタルのメリットかもしれません。

スマホでやると結局手で描くことになるから
やっぱり画才のない人間には無理ですねー^^;

さっそくアプリをダウンロードして、チャレンジしてみます。

こういう記事、ドンドン挙げてください。
楽しいです。

何度でもやり直せて消し後なども残らないデジタルに慣れているからか、アナログで描くと失敗ばかりですぐに挫折してしまいます😣 この記事を読んで手軽なデジタルも良いけど、アナログも練習するべきだなぁと気づきました。

記事に載ってる画材写真のように作業机が絵の具などで汚れるのもアナログの良いところの一つだと思います☺

絵本なんか良いと思う。昔話みたいな描写なんで ほのぼのした感じが良いと思う。

絵本作家だとデジタルである必要は
無いかもしれないですが、
漫画やアニメではデジタルが当たり前に
なってきていると思います。
アートの世界も様変わりしてますね。

スマホで「出来る」
PCで「出来る」
は意味が大きく違うと思います。
PCは不要なんて言う若い人が居たりしますがそういう人はPCでの良さを知らな
かったり、PCが必要な複雑な作業をしていないだけかもしれません。
アナログ画をPCで取り込むのは良いと思いますが、一からスマホで絵を起こすのは
苦行を強いてるようにも思いますがどうなんでしょう・・・

机と絵の具パレットの写真が五島さんの努力と掛けた時間を物語っていますね。
アナログイラストは生原画をぜひとも拝見したいところです。
私は学生の時スクリートーンを重ね貼りするのが好きな白黒ベースのイラストハガキ職人でした。
デジタル(PC+板ペンタブレット)に移行してから絵が上手くなった逆パターンです。

画材も値上がりや廃盤、果てはメーカーなどが廃業する+デジタル入稿が主流になりつつある現在です。
作品に温度を感じるアナログイラストです!今後のご活動を応援してます✨

上手だと思うが、正直に書くと。

もし、この人の絵買いますかと言われたら買わない。

アプリで描いた絵も可愛いですね♡
はじめてとは思えない♪さすがはプロです!!

そのアプリ、前に一度使おう思いましたが、根気がなくて諦めました・・(笑)

五島夕夏さんのインスタを拝見しました。色遣いもフォルムも、ほっこりする作品が多いですね(*´ω`*)アーハン

https://instagram.com/goto_yuuka?igshid=s9nh0y8gnkky

絵を描くこととスマホの画面を見つめることって、使う脳が全然違う気がして。っていうところ共感しました。
メリットデメリット。使いやすさ。使いこなせるか否か。だけでは はかれない部分あるよなぁ。って。 でもそこを 慣れ だって表現する人もいるけど。 今回の記事面白かった!それに可愛かった♪ キュートな方ですね。それに受け答えが真摯。イラストもみてみようって思います。

イラストアプリ、いつも気になっていてダウンロード出来ずにいたので参考になりました!!! ありがとうございます😊

スマホで絵を描けるんですね。
驚きです。😮

この方の場合、最初のアナログ画がいい。うさぎたちの跳ねる感じなどもっと絵本で観てみたい。
だから、若いからデジタル、古い人はアナログって分け方じゃなく道具と個性のマッチングなんだってことでこの記事は大きな意味があったと思います。道具が簡単になると作品が溢れてしまって困ることも多いけど、この方はずっと残したい作品ができるのでは。応援したいですね。綺麗だし。

イラストもかわいいけど、ご本人さんのビジュアルがめちゃかわいいですね♪女優さんみたい。

関係ないけど、うちの小学生の娘はいつもスマホのibisPaintで絵を描いて遊んでいます。

この前、仕事の資料作りで、まっすぐなロープの写真をグニャリと曲げる必要があったのですが、PCのイラストソフトが難し過ぎて、わけわからなくなっていました。
すると娘が、ibisPaintでサササと加工してくれたんですよね。

さすがスマホネイティブの今どき小学生です。(親ばか)

100均のディスクタッチペンでも結構描けますよね。ペン先壊れても気軽に買い替えられますし。

独特の世界観の中に温かみがあって素敵なイラストですね。イラストレーターさんご本人も可愛らしい方ですね。

今回のようなスマホの可能性を広げてくれる記事を今後もお待ちしています。

ちゃんと絵を描ける人は、デジタルでもすごいんですね。自分も練習してみてくなりました。アプリを探してみます。

パソコンを使えば何となく形に成るんじゃが、スマホはセンスがいりますがな!

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