いつか戻る、その時に
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いつか戻る、その時に


「いつか戻る、その時に」のコメント

エピローグ 記録王国エルデナの伝承

これが、この国の前にあったと言われる――記録王国エルデナのお話だよ。

今の子どもたちは信じないかもしれない。
空に声が浮かび、石が記憶を宿すなんて、まるでおとぎ話のようだって。

でもね、今でも残っているんだ。
この王国の地下には、かつての迷宮の名残があって、そこにはまだ“何か”が眠っていると。

人工伝声石も、時おり発掘される。
けれど中に記録された声や映像は、すっかり抜け落ちていて、もう何も聞こえはしない。

それでも、わかったことがある。
その石たちは、新しい情報を記録し、遠くへ送信する力を今も秘めているんだ。

研究者たちは言うよ。
「情報は消えても、器は残る」って。
まるで、心を失くしたけど体は動くように。

伝声石には、今では白い石しか残っていない。
けれど記録には、特別な五つの白い石が、迷宮のさらに深くに封印されているとある。

それをすべて集めた者だけが、真の“記録の鍵”を手に入れるんだって。

そして、こんな言い伝えもある。

「五つの白き石を集め、それぞれに心を宿すとき。
石に向かって「未来に託す」と呟けば、忘れた頃にその力は百倍以上に膨らみ帰って来るだろう、言葉は時を超えて生きる」

その“未来に託す”という言葉こそ、王国エルデナが残した最後の魔法だと。

どうしてこんな話をするのかって?
そうだね、君がもし、これから世界を旅するのなら――

もし白い石を見つけて5つ揃えたとき、それをただの宝石と思わないでおくれ。
もしかしたら、それは千年前の声が眠る、記録の器かもしれないのだから。

そして、願いが本物なら、そっとささやいてみるといい。

**「未来に託す」**と――。