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いつか戻る、その時に
mr.matsuさん
Gマスター「いつか戻る、その時に」のコメント
王都に戻ったリオたちは、最後の三つの人工伝声石を手に、声の塔の頂へ向かった。
塔の最上階にはかつて使われていた古の伝送台が残されていた。
それは、王国成立前に各地へ記録を届けるため使われていた、原始的だが確かな装置。
「これで、もう一度送れるはず」
ユラは祈るような手つきで、石を台座に置いた。
ルカが静かに動力水晶を調整し、リオが最後の操作を行う。
「この記録が、誰かに届くことを信じて――」
送信開始の灯がともる。
途端に石が淡い光を放ち、記録が空へ解き放たれた。
映像、声、想い、歌、泣き声、笑い声。
さまざまな「生きた記録」が、王国の空を駆けてゆく。
それはただの技術ではなかった。
人の心が、過去を、未来を、結び直すための手段だった。
数日後、辺境の村で、老人が空から落ちてきた微細な石片を拾った。
それを火にかざすと、かつて若き日に聞いた声が蘇る。
「……ああ、懐かしいな……まだ、あの時の声が、生きていたとは……」
別の地では、孤児院の子どもたちが、空に映った歌に目を輝かせる。
「この歌、誰が歌ってるの?」
「昔の人だって! でも、まるで目の前で歌ってるみたい!」
記録は、再び人々の間を流れはじめた。
けれど――その数日後、塔の送信装置は静かに崩れ落ちた。
長年眠っていた装置は、最後の役目を終えて、静かに息を引き取ったのだった。
それでも、リオたちは悔いなかった。
「これでよかったんだよ。声は、また旅立った」
「きっと……どこかで誰かが、それを必要とする」
記録は、もう王の宝ではない。
人々の手の届く場所に戻ったのだ。
リオは空を見上げた。
そこに浮かぶのは、かすかに瞬く光。かつて自分たちが送った記録のかけら。
「忘れた頃に、誰かが見つけてくれる。きっと、いつか」
そして彼女は微笑んだ。
信じている――声は、消えないと。
いつかやって来ることを信じて。
塔の最上階にはかつて使われていた古の伝送台が残されていた。
それは、王国成立前に各地へ記録を届けるため使われていた、原始的だが確かな装置。
「これで、もう一度送れるはず」
ユラは祈るような手つきで、石を台座に置いた。
ルカが静かに動力水晶を調整し、リオが最後の操作を行う。
「この記録が、誰かに届くことを信じて――」
送信開始の灯がともる。
途端に石が淡い光を放ち、記録が空へ解き放たれた。
映像、声、想い、歌、泣き声、笑い声。
さまざまな「生きた記録」が、王国の空を駆けてゆく。
それはただの技術ではなかった。
人の心が、過去を、未来を、結び直すための手段だった。
数日後、辺境の村で、老人が空から落ちてきた微細な石片を拾った。
それを火にかざすと、かつて若き日に聞いた声が蘇る。
「……ああ、懐かしいな……まだ、あの時の声が、生きていたとは……」
別の地では、孤児院の子どもたちが、空に映った歌に目を輝かせる。
「この歌、誰が歌ってるの?」
「昔の人だって! でも、まるで目の前で歌ってるみたい!」
記録は、再び人々の間を流れはじめた。
けれど――その数日後、塔の送信装置は静かに崩れ落ちた。
長年眠っていた装置は、最後の役目を終えて、静かに息を引き取ったのだった。
それでも、リオたちは悔いなかった。
「これでよかったんだよ。声は、また旅立った」
「きっと……どこかで誰かが、それを必要とする」
記録は、もう王の宝ではない。
人々の手の届く場所に戻ったのだ。
リオは空を見上げた。
そこに浮かぶのは、かすかに瞬く光。かつて自分たちが送った記録のかけら。
「忘れた頃に、誰かが見つけてくれる。きっと、いつか」
そして彼女は微笑んだ。
信じている――声は、消えないと。
いつかやって来ることを信じて。