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いつか戻る、その時に
mr.matsuさん
Gマスター「いつか戻る、その時に」のコメント
王国が形成され、人工伝声石の技術は頂点を迎えた。
だが、あまりに強大な“記録の力”は、やがて不安を呼んだ。
「このままでは、声が監視の道具になってしまう」
そう語ったのは、初代記録官の一人。
情報が“共有”ではなく“統制”に向かい始めたことに、敏感な者たちは気づいていた。
リオたちもまた、王都に戻り、声の塔で“ある計画”の存在を知る。
――人工伝声石の封印計画。
「王家の命により、最も強力な伝声石群は、王の宝箱へ移される。以後、地下迷宮にて封印とする」
その文書には、淡々とした筆致で、まるで日用品をしまうかのように記されていた。
「宝箱に……?」
ルカが眉をひそめる。
「“声”を、しまいこむってことか」
「使い方を間違えれば、人を縛る鎖になる。だからって……封じるだけでいいの?」
リオの問いに、誰も答えられなかった。
封印当日、王家の大広間には、選ばれた十数個の人工伝声石が並べられた。
それぞれが、かつて人々を救い、感動を呼び、涙を誘った記録を宿している。
ユラがそっとひとつの石を撫でた。
「……この石、南の村の子どもたちの歌が入ってる」
「それも、もう聴けなくなるんだな」
儀式は淡々と進み、石たちは黒い絹布に包まれ、銀細工の宝箱に納められた。
それを運ぶ護衛兵の足音が、広間にこだました。
宝箱は王都地下の古迷宮へと運ばれ、鉄の扉の奥、誰も入れない封印室に格納された。
「これでよかったの?」
リオの胸に重く響く疑問。
けれど、王はただ一言、静かに答えた。
「記録は力だ。だからこそ、いつでも取り出せる場所に置いておくべきではないのだ」
リオはその背中を見つめ、黙ってうなずいた。
“いつか”のために残す。
“忘れた頃”に、また必要になる日が来る。
それが、本当の記録の意味だと、彼女は少しだけ理解し始めていた。
だが、あまりに強大な“記録の力”は、やがて不安を呼んだ。
「このままでは、声が監視の道具になってしまう」
そう語ったのは、初代記録官の一人。
情報が“共有”ではなく“統制”に向かい始めたことに、敏感な者たちは気づいていた。
リオたちもまた、王都に戻り、声の塔で“ある計画”の存在を知る。
――人工伝声石の封印計画。
「王家の命により、最も強力な伝声石群は、王の宝箱へ移される。以後、地下迷宮にて封印とする」
その文書には、淡々とした筆致で、まるで日用品をしまうかのように記されていた。
「宝箱に……?」
ルカが眉をひそめる。
「“声”を、しまいこむってことか」
「使い方を間違えれば、人を縛る鎖になる。だからって……封じるだけでいいの?」
リオの問いに、誰も答えられなかった。
封印当日、王家の大広間には、選ばれた十数個の人工伝声石が並べられた。
それぞれが、かつて人々を救い、感動を呼び、涙を誘った記録を宿している。
ユラがそっとひとつの石を撫でた。
「……この石、南の村の子どもたちの歌が入ってる」
「それも、もう聴けなくなるんだな」
儀式は淡々と進み、石たちは黒い絹布に包まれ、銀細工の宝箱に納められた。
それを運ぶ護衛兵の足音が、広間にこだました。
宝箱は王都地下の古迷宮へと運ばれ、鉄の扉の奥、誰も入れない封印室に格納された。
「これでよかったの?」
リオの胸に重く響く疑問。
けれど、王はただ一言、静かに答えた。
「記録は力だ。だからこそ、いつでも取り出せる場所に置いておくべきではないのだ」
リオはその背中を見つめ、黙ってうなずいた。
“いつか”のために残す。
“忘れた頃”に、また必要になる日が来る。
それが、本当の記録の意味だと、彼女は少しだけ理解し始めていた。