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いつか戻る、その時に
mr.matsuさん
Gマスター「いつか戻る、その時に」のコメント
人工伝声石が文化の中心に据えられたことで、各地に散らばっていた村々や街は、情報を共有し始めた。
「遠くの声」がすぐに届くようになった今、交易や政策、学術までもが加速する。
言葉と映像による“知の網”が、大陸全土を覆い始めていた。
王都はその流れをまとめ、やがて一つの旗のもとに宣言を出す。
「記録と声の力により、王国を築く」
――〈記録王国エルデナ〉の誕生だった。
王国は“声の塔”と呼ばれる高台に巨大な記録施設を建て、人工伝声石の中枢として機能させた。
そこには各地から送られる石が集まり、王家直属の“記録官”によって管理されるようになった。
リオたちはその塔の一室を訪れた。
「……静かね」
「でも、ここに何千、何万の“声”があるんだよな」
石棚の間を歩くたび、かすかに漏れる音。
泣き声、笑い声、叫び、歌――それらはすべて誰かの“人生の断片”だった。
王は演説でこう述べた。
「記録は力であり、未来である。私たちは、決して声を忘れない国を作る」
その言葉に人々は沸き立ち、伝声石は神聖視されるようになっていった。
しかし、リオの表情はどこか曇っていた。
「……ちがう。私たちは、“力”のために伝え始めたんじゃない」
ユラもうつむく。
「声を守るために始めたのに、今はそれが……城の礎になってる」
かつて、石を抱えて森を駆けた日々。
消された声に涙した少女。
奪われた記録の哀しみ――それらは、どこに置き去りにされたのか。
王国ができた今、リオたちにできることは、何だったのだろう?
「私たちの記録も、いつか……誰かに見られる時が来るのかな」
ルカの言葉に、リオは小さくうなずいた。
「そのとき、誰かが“何か”を感じてくれれば、それでいい。伝えるって、そういうことだから」
そして、彼女たちは新たな決意を胸に、再び旅へ出ることを決めた。
「遠くの声」がすぐに届くようになった今、交易や政策、学術までもが加速する。
言葉と映像による“知の網”が、大陸全土を覆い始めていた。
王都はその流れをまとめ、やがて一つの旗のもとに宣言を出す。
「記録と声の力により、王国を築く」
――〈記録王国エルデナ〉の誕生だった。
王国は“声の塔”と呼ばれる高台に巨大な記録施設を建て、人工伝声石の中枢として機能させた。
そこには各地から送られる石が集まり、王家直属の“記録官”によって管理されるようになった。
リオたちはその塔の一室を訪れた。
「……静かね」
「でも、ここに何千、何万の“声”があるんだよな」
石棚の間を歩くたび、かすかに漏れる音。
泣き声、笑い声、叫び、歌――それらはすべて誰かの“人生の断片”だった。
王は演説でこう述べた。
「記録は力であり、未来である。私たちは、決して声を忘れない国を作る」
その言葉に人々は沸き立ち、伝声石は神聖視されるようになっていった。
しかし、リオの表情はどこか曇っていた。
「……ちがう。私たちは、“力”のために伝え始めたんじゃない」
ユラもうつむく。
「声を守るために始めたのに、今はそれが……城の礎になってる」
かつて、石を抱えて森を駆けた日々。
消された声に涙した少女。
奪われた記録の哀しみ――それらは、どこに置き去りにされたのか。
王国ができた今、リオたちにできることは、何だったのだろう?
「私たちの記録も、いつか……誰かに見られる時が来るのかな」
ルカの言葉に、リオは小さくうなずいた。
「そのとき、誰かが“何か”を感じてくれれば、それでいい。伝えるって、そういうことだから」
そして、彼女たちは新たな決意を胸に、再び旅へ出ることを決めた。