いつか戻る、その時に
公開終了

いつか戻る、その時に


「いつか戻る、その時に」のコメント

人工伝声石が広がり始めた頃から、リオたちは“何か”の気配を感じ始めていた。
旅の途中、石を回収された痕跡。村で突然姿を消した伝声石の記録。
誰もが口を閉ざすが、恐れの色は隠せなかった。

「この記録……誰かが意図的に石を壊してる。しかも、回収した痕跡まである」

ルカが一つの破損した石を見ながら言った。
音の記憶は消えており、内部の螺旋構造が鋭く削り取られていた。

「ただの盗難じゃない。明らかに“音”を恐れてる」

ユラの表情が曇る。

「……もしかして、“封じ人”かもしれない」

リオはその名に反応し、静かに問い返した。

「それは……?」

「かつて、伝声石を封じた者たちよ。私たちが記録の限界に挑んでいた頃、彼らは“言葉が世界を壊す”と考えたの」

言葉は争いを呼ぶ。声は嘘を広める。
そう信じ、伝声石を“封じ”た者たちがいたのだという。

「でも私たちは信じてた。言葉は、希望にもなれるって」

「だけど……彼らがまだ生きていたなら?」

リオの声が震えた。ユラは静かに首を振った。

「彼らはもう、この世にはいないはず。でも――」

「“思想”は残る。誰かがそれを受け継いでる」

ルカが言い切った。
その夜、谷の外れで一人の男が捕らえられた。
黒い外套をまとい、石を手にしていた。
石は破壊されていたが、その中にはかすかに音が残っていた。

リオは修復した石に耳を当てる。微かに、ささやくような声が響いた。

「沈黙こそが、真の平和をもたらす」

封じ人の言葉だった。

「……本当に、そう思ってるのか」

リオは夜空を見上げた。
声が広がる世界を望まない者も、確かに存在していた。
だが、それでも彼女は――

「伝えることを、私はやめない」